ご自宅で育てているキウイの剪定で切りすぎたかもしれないと不安になっていませんか。キウイ剪定は、美味しい実をたくさん収穫するために欠かせない作業ですが、やり方を間違えるとキウイ剪定の失敗例としてよく聞くように、実がならなくなってしまうことがあります。特に、キウイを剪定しないとどうなるのか、逆に剪定しすぎるとどうなるのか、その加減が難しいところです。また、キウイの実がならないのはなぜかと悩んでいる方の中には、剪定方法そのものに原因があるかもしれません。例えば、剪定を春に行うと剪定した切り口から樹液が止まらなくなるトラブルも起こりがちです。この記事では、キウイの剪定はどこを切るべきか、キウイの夏の剪定はどうすれば良いのか、さらには老木の剪定で注意すべき点まで、キウイの剪定に関するあらゆる疑問にお答えします。正しい知識を身につけて、切りすぎの失敗を防ぎ、毎年たくさんの美味しいキウイを収穫しましょう。
- キウイの剪定で切りすぎてしまう原因と対策
- 剪定の失敗を防ぐための正しい時期と手順
- 夏や冬など季節ごとの剪定方法の違い
- 樹液が止まらないなどトラブルへの対処法
キウイの剪定で切りすぎを防ぐ基本
- キウイを剪定しないとどうなる?
- キウイの実がならないのはなぜ?
- よくあるキウイ剪定の失敗例
- 正しいキウイ剪定の基本とは
- キウイの剪定はどこを切るべきか
キウイを剪定しないとどうなる?
キウイの剪定を怠ると、さまざまな問題が発生し、美味しい果実の収穫が遠のいてしまいます。キウイはつる性の植物で、非常に生育旺盛なのが特徴です。そのため、剪定をせずに放置していると、枝葉が四方八方に伸びて密集し、ジャングルのような状態になってしまいます。
まず、枝葉が混み合うことで日当たりと風通しが悪化します。日光は果実が甘く成長するために不可欠ですが、葉が影を作ってしまうと果実に十分な光が届きません。結果として、実が小さくなったり、甘みが乗らなかったりと、品質の低下に直結します。また、風通しが悪いと湿気がこもりやすくなり、うどんこ病や灰色かび病といった病気や、アブラムシ、ハダニなどの害虫が発生しやすい環境を作り出してしまいます。
さらに、伸び放題の不要な枝に栄養が分散してしまい、本来、実をつけるべき枝に十分な栄養が行き渡らなくなります。これが、「実がつきにくくなる」「収穫量が減る」といった直接的な原因となるのです。最悪の場合、木全体の元気がなくなり、弱って枯れてしまうことさえあります。

このように、剪定をしないことのリスクは非常に大きいです。美味しいキウイを収穫するためには、適切な時期に正しい方法で剪定を行い、木の健康を維持することが何よりも重要と言えるでしょう。
キウイの実がならないのはなぜ?
「一生懸命育てているのに、キウイの実がならない」という悩みは、家庭菜園でよく聞かれます。その原因は一つではなく、複数の要因が考えられます。剪定の失敗も大きな原因の一つですが、それ以外にもチェックすべきポイントがあります。
1. 剪定の問題
最も多い原因が剪定の失敗です。キウイは、その年に新しく伸びた枝に花を咲かせ、実をつけます。前年に実をつけた古い枝には、翌年実がなりません。この性質を理解せずに、実がなるはずの新しい枝を切り落としてしまうと、当然収穫は望めません。また、雌の木の枝を過度に切りすぎてしまう「切りすぎ」も、花芽そのものをなくしてしまうため、実がならない直接的な原因となります。
2. 受粉ができていない
キウイは、ほとんどの品種が「雌雄異株(しゆういしゅ)」であり、雌木(めぎ)と雄木(おぎ)の2本がなければ実がなりません。雌木には実になる雌花が咲き、雄木には花粉を提供する雄花が咲きます。近くに両方の木があり、虫や風によって花粉が運ばれて受粉が成立して初めて、雌木に実がつくのです。
受粉の注意点
- 雌木と雄木の両方を植えていますか?
- 両方の木の開花時期は合っていますか?(品種によって開花時期がずれることがあります)
- 近くにミツバチなどの訪花昆虫はいますか?
確実に実をつけたい場合は、雄花を摘み取って雌花に直接花粉をつける「人工授粉」を行うのが最も確実な方法です。
3. 肥料の与えすぎ(つるぼけ)
良かれと思って肥料をたくさん与えすぎると、「つるぼけ」という現象が起こることがあります。これは、窒素成分の多い肥料が過剰になることで、葉や枝ばかりが元気に茂ってしまい、花芽がつきにくくなる状態のことです。特に、毛が密生したような勢いの良い枝がたくさん出ている場合は、肥料過多のサインかもしれません。キウイの生育状態を見ながら、肥料の量や種類を調整することが大切です。
4. 木がまだ若い
植え付けてから2〜3年の若い木は、まだ木自体が成長段階にあるため、実をつけにくいことがあります。まずは根を張り、幹を太くすることにエネルギーを使っているためです。一般的に、安定して収穫できるようになるまでには数年かかることが多いので、焦らずに木の成長を見守りましょう。



よくあるキウイ剪定の失敗例
キウイの剪定は、美味しい実を収穫するための鍵ですが、方法を間違えると逆効果になってしまいます。ここでは、初心者が陥りがちな剪定の失敗例をいくつか紹介します。ご自身の作業と照らし合わせて、失敗を未然に防ぎましょう。
失敗例1:剪定時期の間違い
最もよくある失敗が、剪定する時期を間違えることです。特に、春先の剪定は絶対に避けなければなりません。春になると、キウイは休眠から目覚め、根から大量の水を吸い上げて活動を始めます。この時期に枝を切ると、切り口から樹液が水のように溢れ出し、止まらなくなってしまいます。これを「樹液漏れ」と呼び、木の体力を著しく消耗させ、枝が枯れたり、最悪の場合は木全体が枯死に至ることもある非常に危険な状態です。
剪定時期の鉄則
キウイの剪定は、木が活動を停止している休眠期(12月〜2月上旬)に行うのが基本です。春の芽吹きが始まる前に必ず終わらせましょう。
失敗例2:実がなる枝を切ってしまう
キウイの性質を理解していないと、実がなるはずの大切な枝を切り落としてしまうことがあります。キウイは「その年に新しく伸びた枝」に実をつけます。前年に実がついた枝(結果枝)を剪定する際に、その先にある新しい芽(結果母枝)ごとバッサリ切ってしまうと、その年の収穫はゼロになってしまいます。どこに実がなるのかを正しく理解し、必要な枝を残すことが重要です。
失敗例3:雌の枝の切りすぎ
「枝が混み合っているからスッキリさせたい」という思いから、全体的に枝を切り詰めてしまう「切りすぎ」もよくある失敗です。特に、実がなる雌の木の枝を無計画に短く切り詰めてしまうと、花芽そのものを全て取り除いてしまうことになりかねません。剪定はあくまで不要な枝を取り除くのが目的であり、やみくもに短くすれば良いというものではありません。木全体のバランスを見ながら、慎重に作業を進める必要があります。
失敗例4:強剪定の繰り返し
毎年、太い枝をバッサリと切るような強い剪定(強剪定)を繰り返していると、木は生命の危機を感じて、かえって勢いの強い枝(徒長枝)をたくさん出すようになります。徒長枝は養分を多く消費するだけで実がなりにくいため、結果として樹形が乱れ、収穫量が減るという悪循環に陥ります。



正しいキウイ剪定の基本とは
キウイの剪定で失敗しないためには、まず「なぜ剪定するのか」「いつ、どの枝を切るのか」という基本をしっかり理解することが大切です。ここでは、美味しいキウイを毎年収穫するための、正しい剪定の基本原則を解説します。
剪定の目的
キウイの剪定の主な目的は以下の3つです。
- 樹形を整え、日当たりと風通しを良くする:枝の密集を防ぎ、すべての葉や実に日光が当たるようにします。これにより、果実の品質が向上し、病害虫の発生を抑制します。
- 栄養を効率よく実に届ける:実をつけない不要な枝を取り除くことで、養分を果実の成長に集中させ、大きくて甘い実を育てます。
- 翌年以降も安定して収穫できるようにする:新しい結果母枝(実がなる枝の元)を確保し、毎年コンスタントに収穫できるような木のサイクルを作ります。
剪定の時期:年2回が基本
キウイの剪定は、目的の異なる2つの時期に行うのが基本です。
キウイの剪定カレンダー
- 冬剪定(12月~2月上旬):木の骨格を作るための基本剪定。木が休眠しているため、比較的太い枝も切ることができ、樹形を大きく整えます。
- 夏剪定(6月~7月):果実の品質を高めるための軽剪定。茂りすぎた枝葉を間引き、実に栄養と日光を集中させることが目的です。
特に重要なのが冬剪定です。春に樹液が流れ出す前に必ず終わらせるように計画を立てましょう。
剪定の基本手順
剪定は、まず木全体をよく観察し、「不要な枝」を見極めることから始まります。切るべき不要な枝は、主に以下のものです。
- 枯れ枝や病気の枝:他の部分に影響が及ぶ前に取り除きます。
- 徒長枝(とちょうし):上に向かって勢いよくまっすぐ伸びている枝。養分を無駄遣いし、日当たりを妨げます。
- 混み合っている枝・交差している枝:日当たりや風通しを悪くする原因です。
- 下向きに伸びる枝:良い実がなりにくく、作業の邪魔になります。
- 前年に実をつけた古い枝:キウイは同じ場所には実をつけないため、適切に切り戻して新しい枝の発生を促します。
これらの不要な枝を、枝の付け根から切り取る「間引き剪定」と、枝の途中で切って短くする「切り戻し剪定」を使い分けて整理していきます。



キウイの剪定はどこを切るべきか
「キウイの剪定の基本はわかったけど、具体的にどの枝をどこで切ればいいの?」という疑問は、誰もが抱くものです。ここでは、切るべき枝の種類と、それぞれの切り方を具体的に解説します。
1. 徒長枝(とちょうし)
【見分け方】
幹や太い枝から、空に向かってまっすぐ、勢いよく伸びている太くて長い枝です。他の枝に比べて明らかに成長が早く、節と節の間隔が広いのが特徴です。
【切り方】
徒長枝は、基本的に付け根から切り落とします。これらの枝は多くの養分を消費する割に、良い花芽をつけにくい性質があります。また、樹形を乱し、他の枝への日当たりを遮る大きな原因となるため、見つけ次第、優先的に剪定対象とします。
2. 昨年実がついた枝(結果枝)
【見分け方】
収穫時に果実がついていた軸(果柄)が、枯れて枝に残っているのが目印になります。収穫時に目印として少し軸を残しておくと、冬の剪定時に非常に分かりやすくなります。
【切り方】
キウイは一度実をつけた場所には、翌年実をつけません。そのため、この古い結果枝は更新する必要があります。切り方には2つのポイントがあります。
- 昨年実がついた部分よりも先に、新しい芽が3〜5個残るようにして、その先で切り戻します。
- または、枝の根元から数えて8〜10芽先で切る方法もあります。
これにより、残した芽から翌年新しい枝が伸び、そこに実がつきます。
結果母枝を育てる
この剪定によって残される、新しい実がなる元となる枝を「結果母枝(けっかぼし)」と呼びます。この結果母枝を毎年確保していくことが、安定した収穫の鍵となります。
3. 混み合っている枝・交差している枝
【見分け方】
棚の内側で複数の枝が重なり合っていたり、絡み合っていたりする部分です。
【切り方】
どちらかの枝を残し、もう一方を付け根から間引きます。どちらを残すか迷った場合は、より新しくて元気の良い枝、または棚全体にバランス良く配置できる方向へ伸びている枝を選ぶと良いでしょう。これにより、風通しと日当たりが劇的に改善されます。
4. 上に伸びる枝・下向きの枝
【見分け方】
棚の主枝(骨格となる太い枝)から真上に伸びている枝や、真下に垂れ下がっている枝です。
【切り方】
これらの枝も付け根から切り落とします。上に伸びる枝は徒長枝と同様に日当たりを妨げ、実がついても収穫しにくくなります。下向きの枝は生育が悪く、良い実が期待できません。



時期が重要!キウイの剪定切りすぎ対策
- キウイの夏の剪定はどうする?
- なぜ春の剪定は避けるべきなのか
- 剪定で樹液が止まらない原因と対策
- 老木の剪定で注意すべきポイント
- キウイの剪定で切りすぎないまとめ
キウイの夏の剪定はどうする?
キウイの夏の剪定は、冬の剪定とは目的が異なります。冬が「木の骨格を作る」ための剪定なら、夏は「美味しい実を育てる」ための仕上げの剪定です。作業時期は、6月〜7月頃が適期です。
夏の剪定の目的
春から夏にかけて、キウイは旺盛に新しい枝葉を伸ばします。この時期の剪定の主な目的は2つです。
- 果実への栄養集中:実をつけていない不要な枝や、伸びすぎた枝の先端をカットすることで、養分が果実の肥大に効率よく使われるようにします。
- 日当たりと風通しの改善:茂りすぎた枝葉を間引くことで、果実に日光が当たり、糖度の上昇と着色を促進します。また、風通しを良くして病害虫の発生を防ぎます。
夏の剪定で切る枝
夏の剪定は、冬のように樹形を大きく変えるものではなく、あくまで軽剪定にとどめます。主に以下の枝が対象です。
- 勢いよく伸びている徒長枝:特に実がついていない徒長枝は、付け根から切り落とします。これにより、養分の浪費を防ぎ、日当たりを改善します。
- 絡まっている枝や混み合っている枝:風通しを良くするために、不要な方を間引きます。
- 実がついていない新梢(新しい枝):長く伸びすぎている場合は、数枚の葉を残して先端を切り詰める「摘心(てきしん)」を行います。
夏の剪定での注意点:切りすぎは禁物!
夏の剪定で枝葉を切りすぎると、強い日差しが直接果実に当たって「日焼け」を起こし、品質が低下することがあります。また、光合成を行う葉が減りすぎることで、かえって木の勢いが弱まることも。あくまで「茂りすぎた部分をスッキリさせる」程度にとどめ、木漏れ日が差すくらいの状態を目指しましょう。
摘果(てきか)も忘れずに
夏の剪定と合わせて行いたいのが「摘果」です。キウイはたくさんの実をつけますが、そのまま全てを育てようとすると栄養が分散し、一つ一つの実が小さくなってしまいます。6月〜7月頃に、形の悪い実、小さい実、傷のある実などを摘み取り、実の数を調整しましょう。目安として、長い枝には3個、短い枝には1個、または葉5枚あたり1果くらいにすると、残した実が大きく甘く育ちます。



なぜ春の剪定は避けるべきなのか
キウイの剪定について、繰り返し「春の剪定は避けるべき」とお伝えしていますが、その理由はキウイの生態に深く関わっています。この理由を理解することは、剪定の失敗を防ぐ上で非常に重要です。
冬の間、落葉して休んでいたキウイの木は、春が近づき暖かくなると、新しい芽を出し、葉を広げ、花を咲かせるために、根から猛烈な勢いで水分と養分を吸い上げ始めます。このとき、木の内部では、幹や枝の道管(どうかん)を通って大量の「樹液」が循環しています。いわば、木全体の血流が最も活発になる時期なのです。
この活発な時期に枝を剪定すると、どうなるでしょうか。
人間の体で例えるなら、血流が盛んな時に太い血管を切ってしまうようなものです。切り口からは、圧力のかかった水道から水が噴き出すように、樹液がポタポタと、時にはダラダラと流れ出してしまいます。
樹液漏れが引き起こす深刻なダメージ
- 体力の著しい消耗:樹液には、木が成長するために蓄えた貴重な糖分やアミノ酸などの栄養分が含まれています。これが大量に失われることで、木は極度の栄養失調状態に陥ります。
- 枝枯れ・生育不良:体力を失った木は、新しい枝を伸ばしたり、花を咲かせたりする元気がなくなります。剪定した枝だけでなく、他の部分まで枯れ込んでしまうことがあります。
- 最悪の場合は木全体が枯死:樹液漏れがひどく、長期間続くと、木は回復できずにそのまま枯れてしまう危険性も十分にあります。
このように、春の剪定はキウイの木にとって「百害あって一利なし」です。剪定作業は、木全体の活動が停止し、樹液の流れが穏やかになる冬の休眠期(12月〜2月上旬)に必ず行うようにしてください。



もし、どうしても冬に作業ができず、時期が遅れてしまった場合でも、芽が動き出す前の2月のできるだけ早い時期までに終わらせることが重要です。少しでも芽が膨らみ始めたら、その年の剪定は諦めて、夏剪定と次の冬まで待つのが賢明な判断と言えます。
剪定で樹液が止まらない原因と対策
キウイの剪定後に切り口から樹液がポタポタと滴り落ち、止まらなくなってしまった場合、その主な原因は前述の通り「剪定時期の誤り」です。木が休眠から覚め、活動を始める春先(3月以降)に剪定を行ったことがほとんどのケースで該当します。
樹液が溢れ出る様子を見ると、「このまま枯れてしまうのではないか」と非常に心配になるかと思います。しかし、一度流れ出してしまった樹液を完全にピタッと止める特効薬的な方法は、残念ながらありません。ここでは、樹液が止まらない場合の考え方と、推奨される対処法について解説します。
基本的な対処法:自然に止まるのを待つ
結論から言うと、基本的には何もしないで、自然に止まるのを待つのが最善の策です。流れ出た樹液は、空気に触れることで徐々に成分が固まり、かさぶたのように切り口を塞いでいきます。気温が上がり、空気が乾燥する日が続くと、凝固は早まります。通常、樹液が完全に止まるまでには数週間から、長い場合は1〜2ヶ月かかることもあります。
無理に塞ぐのは逆効果?
ビニールやテープで無理に切り口を塞ごうとすると、内部に湿気がこもり、かえって雑菌が繁殖して切り口が腐敗する原因になることもあります。また、強い圧力で流れ出る樹液を物理的に止めるのは困難です。下手に触らず、自然治癒力に任せるのが一番です。
樹液が溢れたことによる影響
樹液が大量に流れ出ることで、木が蓄えていた栄養分が失われ、樹勢(木の元気さ)が一時的に弱まることは避けられません。その年の実つきが悪くなったり、新しい枝の伸びが鈍くなったりする可能性があります。しかし、多くの場合、木が完全に枯れてしまうほどの致命傷になることは稀で、夏に向けて徐々に回復していきます。
予防策:傷口保護剤の使用
これは対策というより予防策になりますが、適切な時期(冬の休眠期)に剪定を行った場合でも、太い枝を切った後には「トップジンMペースト」などの癒合剤(傷口保護剤)を塗っておくことをお勧めします。癒合剤が切り口をコーティングすることで、乾燥や雨水の侵入を防ぎ、病原菌の感染を予防します。また、春先のわずかな樹液の滲み出しを防ぐ効果も期待できます。



老木の剪定で注意すべきポイント
長年育ててきたキウイの老木や、庭に植えられてから何年もほったらかしにされていたキウイの木を剪定する際には、若い木とは異なる注意が必要です。老木は体力が落ちており、環境の変化への適応力も低いため、剪定が大きなストレスになることがあります。無理な剪定は木を弱らせ、枯らしてしまう危険性もあるため、慎重に進めましょう。
1. 一度に強く切りすぎない
最も重要なポイントは、一度に大規模な剪定を行わないことです。長年伸び放題だった枝を一度にスッキリさせたい気持ちは分かりますが、太い枝を何本も切り落とすような「強剪定」は、老木にとって大きな負担となります。光合成を行う葉を大量に失い、急激な環境変化に対応できず、一気に弱ってしまう可能性があります。
樹形の若返り(更新)は、2〜3年、あるいはそれ以上かけるつもりで、計画的に行いましょう。
段階的な剪定計画
- 1年目:まずは枯れ枝、病気の枝、明らかに不要な太い枝を1〜2本に絞って取り除く程度にとどめます。全体の風通しを少し良くするイメージです。
- 2年目:木の様子を見ながら、さらに不要な枝を数本整理します。幹の根元近くから新しい元気な枝(更新枝)が出てきたら、それを大切に育てます。
- 3年目以降:育ててきた更新枝を新しい主枝(骨格の枝)とし、古くなった主枝を切り詰めていくことで、徐々に木全体を若返らせていきます。
2. 幹の根元から出る新しい枝(ひこばえ)を活かす
老木になると、幹の根元や地面に近い部分から、勢いの良い新しい枝(ひこばえや胴吹き枝)が出やすくなります。通常、これらの枝は不要な枝として切り取られますが、老木の若返りにおいては、これが絶好のチャンスとなります。
その中から最も元気で素直に伸びている枝を数本選び、新しい主枝候補として育てていきます。これがうまく育てば、数年後には古い幹を切り倒し、新しい木として再生させることも可能です。
3. 剪定時期を厳守する
若い木以上に、剪定時期の厳守が重要です。老木は体力がないため、春先に樹液が流れ出すと回復が難しくなります。必ず、木が完全に休眠している冬(12月〜2月上旬)に作業を行いましょう。
4. 切り口のケアを徹底する
老木は病気への抵抗力も弱っています。太い枝を切った場合は特に、切り口が病原菌の侵入口にならないよう、必ず癒合剤(傷口保護剤)を丁寧に塗布してください。切り口はなめらかに、きれいに切ることも大切です。



キウイの剪定で切りすぎないまとめ
この記事では、キウイの剪定で切りすぎを防ぎ、毎年美味しい実を収穫するためのポイントを解説してきました。最後に、重要な点をリスト形式でまとめます。
- キウイの剪定をしないと枝葉が密集し、日当たりや風通しが悪化する
- 結果として実が小さくなったり、病害虫が発生しやすくなる
- 実がならない原因は、剪定ミス、受粉不良、肥料過多などが考えられる
- 剪定の最大の失敗は、活動期である春に剪定してしまうこと
- 春に剪定すると切り口から樹液が止まらなくなり、木が著しく弱る
- 実がなる新しい枝(結果母枝)を切ってしまうのもよくある失敗
- 剪定の基本は年に2回、冬の「基本剪定」と夏の「軽剪定」
- 冬剪定(12月~2月上旬)は、休眠期に樹形を整えるのが目的
- 夏剪定(6月~7月)は、実に栄養を集中させ、日当たりを良くするのが目的
- 切るべき不要枝は、徒長枝、古い結果枝、混み合った枝、上下に伸びる枝
- 夏の剪定では、切りすぎによる果実の日焼けに注意する
- 樹液が止まらない場合は、基本的には自然に固まるのを待つのが最善策
- 老木の剪定は一度に強く切りすぎず、数年かけて計画的に若返らせる
- 太い枝の切り口には、病気予防のために癒合剤を塗布すると良い
- 剪定の目的を理解し、正しい時期に適切な枝を切ることが成功の鍵