「銀杏を庭に植えるな」と言われる理由は?後悔しないための対策と失敗しない選び方

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秋の訪れとともに美しく色づくイチョウ(銀杏)は、日本の風景に欠かせない魅力的な樹木です。しかし、いざ自分の家の庭に植えようとすると、周囲から「銀杏だけは植えるな」と強い忠告を受けることが少なくありません。

なぜ、これほどまでに銀杏の植栽は警戒されるのでしょうか。

この記事では、銀杏が庭木として敬遠される科学的な理由から、驚異的な成長スピードがもたらす建物へのリスク、そして近隣トラブルに発展しやすい落葉や臭いの問題まで、園芸の専門的な視点で詳しく解説します。

また、現在の最新の知見に基づき、どうしても銀杏を楽しみたい方のために、オス株の確実な選び方や矮性品種の活用、適切なメンテナンス方法についても具体的に提案します。この記事を読むことで、銀杏を植える際のリスクを正しく理解し、将来的な後悔を防ぐための確かな知識を身につけることができます。

この記事のポイント

  • 銀杏の実(外種皮)が放つ強烈な悪臭成分(酪酸・ヘプタン酸)と皮膚への健康被害
  • 年間1メートル近く伸びる成長速度が招く、一般住宅での管理不能な巨大化リスク
  • 湿気を探知して配管内に侵入し、基礎を破壊する強靭で破壊的な根の性質
  • オス株の接ぎ木苗やDNA鑑定済み苗、矮性品種「マリケン」などの最新の回避策

目次

銀杏を植えるなと言われる理由とデメリット

  • 強烈な悪臭を放つ銀杏の実の問題
  • 想像を絶する成長速度と巨大化のリスク
  • 建物や配管を破壊する強靭な根の力
  • 大量の落葉による掃除の負担と近隣トラブル

強烈な悪臭を放つ銀杏の実の問題

銀杏を庭に植えることを避けるべき最大の理由は、秋に熟す実が放つ独特の強烈な悪臭にあります。この臭いの正体は、実の最も外側を包んでいる「外種皮(がいしゅひ)」に含まれる酪酸(らくさん)ヘプタン酸です。酪酸は蒸れた靴下や腐敗したバターのような不快な臭いを発し、ヘプタン酸はさらに刺激的な腐敗臭を強調させます。この臭いは非常に強力で、一度衣服や靴の裏に付着すると、通常の水洗い程度ではなかなか落ちません。

生物学的な視点で見ると、銀杏は「雌雄異株(しゆういしゅ)」という性質を持っており、実をつけるのはメスの木だけです。しかし、苗木の段階でオスとメスを外見だけで判別することは非常に困難であり、専門家であっても数年から十数年経って実がつくまで確信が持てないことが多々あります。もし意図せずメス株を植えてしまった場合、植栽から10年ほど経過して樹木が成熟し始めると、毎年秋になるたびに大量の実が地面に落下し、庭全体が耐え難い臭いに包まれることになります。

さらに注意が必要なのは、この外種皮には「ギンコール酸」という物質が含まれている点です。これはウルシ科の植物に含まれる成分に似た強い感作性を持っており、素手で触れると激しい皮膚炎を引き起こす可能性があります。

実の取り扱いに関する注意点

  • 小さなお子様やペットが落ちている実を口にしたり、触れたりしないよう厳重な管理が必要です。
  • 落ちた実を放置すると、ハエやウジなどの害虫を大量に発生させる原因となり、衛生面でも深刻な問題を引き起こします。
EL
銀杏の実は美味しいですが、庭でその「副産物」である悪臭と向き合うのは想像以上に過酷な修行になりますよ。

想像を絶する成長速度と巨大化のリスク

銀杏が「生きた化石」と呼ばれる所以は、その驚異的な生命力と環境適応能力にあります。しかし、この強すぎる生命力は、日本の限られた庭スペースにおいては致命的なデメリットとなります。銀杏の成長速度は非常に速く、若木のうちや条件が良い場所では1年間に1メートル近く枝を伸ばすことも珍しくありません。最終的な樹高は20メートルから30メートル、幹の太さは数メートルに達する潜在能力を持っています。

街路樹として植えられている銀杏が美しく整って見えるのは、自治体によって毎年多額の税金を投入し、専門の職人が計画的に「強剪定」を行っているからです。一般家庭でこれを維持しようとすると、数年も放置すればあっという間に2階の屋根を超え、3階の高さまで到達してしまいます。

これほど巨大化すると、もはや家庭用の脚立では手が届かず、素人が自分で剪定を行うことは物理的に不可能になります。

また、樹冠(葉が茂っている部分)が広がると、庭全体が深い影に覆われてしまいます。銀杏の下には日光が届かなくなり、他の下草や大切に育てている花々が日照不足で枯れてしまう原因になります。さらに、巨大化した樹木は強風時の風圧をまともに受けるため、台風などの際には枝折れや最悪の場合の倒木のリスクが高まります。周囲に建物が密集している日本の住宅事情において、巨大化した銀杏が倒れた場合の損害賠償リスクは計り知れません。 将来的なサイズを予測せずに安易に植えてしまうと、数十年後には個人の手には負えない「負の遺産」となってしまう危険性があるのです。

建物や配管を破壊する強靭な根の力

銀杏の驚異的な生命力は、地上部だけでなく地下の「根」にも及んでいます。銀杏の根は非常に太く、かつ水平方向にも垂直方向にも強力に伸長する性質を持っています。この「根の力」を侮ることは、住宅の寿命を縮めることにつながりかねません。

まず懸念されるのが、建物の基礎(ファンデーション)への影響です。家の近くに銀杏を植えると、太くなった根が基礎のコンクリートを圧迫し、微細なクラック(ひび割れ)から侵入して、内側から構造を破壊することがあります。

銀杏の根は酸素や水分を求めてコンクリートのわずかな隙間さえも利用して成長するため、建物自体の耐震性や耐久性に悪影響を及ぼすのです。

さらに深刻なのが、地下に埋設された配管類への被害です。銀杏の根は「親水性」が強く、わずかな湿気を感知して伸びていくため、下水道管や雨水管の継ぎ目から内部に侵入することがあります。

一度管の中に入り込んだ根は、管内の豊かな栄養分と水分を吸収して爆発的に増殖し、配管を完全に詰まらせたり、内側から破裂させたりします。

インフラ破壊のリスクとコスト

  • 配管の修理には重機を用いた大規模な掘り返し工事が必要となり、費用は数十万円から、場合によっては数百万円単位に及ぶこともあります。
  • 庭の舗装や駐車場のコンクリートを持ち上げてしまう「根上がり」現象は、つまづきによる怪我や車両の損傷といったトラブルを招きます。

銀杏を植える際は、建物や配管から少なくとも5メートルから10メートル以上の距離を確保することが推奨されますが、一般的な都市部の住宅地でこの距離を確保することは現実的ではありません。

大量の落葉による掃除の負担と近隣トラブル

銀杏の紅葉は非常に美しいものですが、その後に待ち受けているのは「大量の落葉」という過酷な現実です。銀杏の葉は厚みがあり、水分や油分を多く含んでいるため、他の広葉樹に比べて分解が非常に遅いという特徴があります。そのため、地面に落ちた葉はいつまでも残り続け、放置すると層のように積み重なっていきます。これが雨に濡れると非常に滑りやすくなり、通行人が転倒する恐れがあるため、毎日の清掃が欠かせません。

この落葉問題は、自分たちの庭の中だけで完結しないのが最も厄介な点です。風に乗った大量の黄色い葉は、隣家の庭やベランダ、雨どいへと容赦なく飛んでいきます。特に雨どいに銀杏の葉が詰まると、雨水が溢れ出して建物の壁を汚したり、最悪の場合は雨漏りの原因になったりします。

隣家から「掃除が大変だ」「雨どいが詰まった」という苦情が寄せられると、深刻な近隣トラブルに発展し、その地域での住み心地が悪くなってしまうこともあります。

以下の表は、銀杏の落葉時期における管理負担をまとめたものです。

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管理項目 負担の程度 具体的な影響
日常の清掃 非常に高い 11月〜12月は毎日1時間以上の掃き掃除が必要。腰痛の原因にも。
廃棄物の処理 高い 回収袋が数十袋に及ぶこともあり、自治体指定のゴミ出しが大変。
雨どい点検 中〜高 詰まりを防ぐため、高所での危険な清掃作業が毎年必要。
近隣への配慮 非常に高い 飛散した葉の回収や、トラブル防止のための謝罪・説明が必須。

このように、銀杏を植えるということは、単に木を育てるだけでなく、秋の数ヶ月間を「終わりのない掃除」と「周囲への気遣い」に費やす覚悟を持つということでもあるのです。

庭に銀杏を植えるなという警告を回避する方法

  • オス株を選んで実の被害を完全に防ぐ
  • 矮性品種を選んでサイズをコントロールする
  • 適切な剪定時期とプロに依頼する維持費
  • 鉢植えで管理して根の広がりを制限する

オス株を選んで実の被害を完全に防ぐ

「どうしても地植えで銀杏を育てたい」という場合、最も確実なリスク回避策は、実をつけない「オス株」を100%の確実性をもって選ぶことです。前述の通り、一般的な実生苗(種から育てた苗)では若木のうちの判別は不可能ですが、2026年現在では「接ぎ木苗」「DNA鑑定済み苗」が市場に流通しており、性別を確定させて購入することが可能です。接ぎ木苗は、既に性別が判明している親木から枝を取り、別の台木に接いで増やした個体であるため、親の性質を確実に引き継ぎます。

オス株として有名な園芸品種には「ファスティギアータ(塔状イチョウ)」などがあります。これらは垂直方向に伸びる性質が強く、横に広がりにくいため、比較的スペースの限られた庭でも管理しやすいというメリットを併せ持っています。

オス株選定のメリットと注意点

  • メリット: 秋の悪臭問題とギンコール酸による皮膚炎のリスクを完全に排除できます。
  • 注意点: 植物学的な「花粉」の問題は残ります。銀杏は風媒花であり、春先には花粉を飛散させます。重度の花粉症がある場合は、近隣への影響も考慮すべきです。

実の被害は防げても、巨大化や落葉の問題はオス株であっても変わりません。性別選びは解決策の第一歩に過ぎず、その後のメンテナンス計画とセットで考えることが重要です。

矮性品種を選んでサイズをコントロールする

銀杏の巨大化を防ぐための非常に有効な選択肢として、「矮性(わいせい)品種」の採用が強く推奨されます。矮性品種とは、遺伝的に成長が非常にゆっくりであるか、あるいは一定の大きさ以上にならないように改良された品種のことです。現代の住宅事情において特に注目されているのが「マリケン(Mariken)」という品種です。

マリケンは、一般的な銀杏のような真っ直ぐ伸びる樹形ではなく、こんもりとしたドーム状の低木に育ちます。10年経っても樹高が1メートルから1.5メートル程度に収まることも多く、年間の成長量もわずか数センチ単位です。

葉の形は銀杏そのもので、秋には見事な黄金色の紅葉を楽しむことができますが、巨大化して屋根を超えるような心配はまずありません。他にも、葉が密集して美しく、コンパクトにまとまる「ジェイド・バタフライ」などの品種も、2026年現在はオンラインショップや大型園芸店で入手しやすくなっています。

これらの矮性品種を選ぶ最大のメリットは、将来的な伐採やプロによる高所剪定のコストを劇的に抑えられる点にあります。自分で手が届く範囲のサイズであれば、楽しみながら形を整えることができ、落葉の総量も圧倒的に少なくて済みます。 また、これらの品種は基本的にオス株由来のものが多いため、臭いのリスクも同時に回避できるケースがほとんどです。「銀杏は植えたいが、森のような巨木にはしたくない」という方にとって、矮性品種は最も合理的な回答と言えるでしょう。

適切な剪定時期とプロに依頼する維持費

銀杏を地植えにする以上、定期的な剪定は避けて通れない義務となります。銀杏の剪定において最も重要なのは時期の選択です。最適な時期は、樹木が活動を休止する12月から2月の「冬季剪定」です。この時期であれば葉が落ちているため枝ぶりが確認しやすく、また休眠中なので強い剪定を行っても木への負担を最小限に抑えられます。

自分で剪定を行う場合の注意点として、銀杏は「頂芽優勢(ちょうがゆうせい)」という性質が強く、上へ上へと伸びる力が非常に強いため、芯を止める(主幹の先端を切る)作業が必要になります。

しかし、これを不用意に繰り返すと、切り口から「徒長枝」と呼ばれる細い枝が大量に噴き出し、樹形が乱れて見栄えが悪くなるだけでなく、翌年の剪定がさらに困難になります。

樹高が3メートルを超えてくると、安全面や仕上がりの美しさから、プロの植木屋に依頼することをお勧めします。以下は、2026年現在の一般的なメンテナンス費用の目安です。

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樹高・作業内容 費用目安(1回あたり) 頻度
3m未満(軽作業) 8,000円 〜 20,000円 年1回
3m〜5m(中木) 25,000円 〜 50,000円 年1回
7m以上(高所作業) 60,000円 〜 150,000円 1〜2年に1回
伐採・抜根 150,000円 〜 数十万円 最終手段

このように、銀杏を美しく安全に保つためには、長期的な「維持費」というランニングコストが発生することを理解しておく必要があります。植えっぱなしにすることは、自分だけでなく周囲への物理的・経済的リスクを放置することと同義なのです。

鉢植えで管理して根の広がりを制限する

銀杏を安全に、かつその魅力を最大限に楽しむための最も賢明な方法の一つが、「鉢植え」での栽培です。鉢という物理的な枠の中に根を閉じ込めることで、銀杏の爆発的な成長を人工的にコントロールすることが可能になります。

鉢植えであれば、根が住宅の基礎を壊したり、配管を詰まらせたりする心配は一切ありません。また、季節に合わせて置き場所を変えたり、引越しの際に持ち出せたりするのも大きな利点です。

鉢植えで育てる際のポイントは、適切な用土選びと定期的な植え替えです。銀杏は水はけの良い土を好むため、赤玉土(中粒)7:腐葉土3程度の配合、あるいは市販の園芸用土に軽石を少し混ぜたものが適しています。

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鉢植えなら「盆栽」のように、自分好みの樹形を長く楽しむことができます。地植えでモンスター化させるより、よっぽど風流ですよ。

成長を抑制するための核心となるのが、2〜3年に一度行う「植え替え」と「根の整理」です。鉢から抜いた銀杏の根は、周囲にびっしりと回っています。この太い根を3分の1程度切り詰め、新しい土で同じサイズ(あるいは一回り大きな)鉢に植え戻します。この作業により、木が巨大化するのを防ぎつつ、新しい細根の発生を促して健康な状態を維持できます。 テラスやベランダで鉢植えの銀杏を育てれば、落葉の掃除も最小限の範囲で済み、銀杏の黄金色の輝きを「良いとこ取り」しながら楽しむことができます。

総括:銀杏の特性を深く理解し、適切な管理方法を選ぶことが後悔しない唯一の道である

  • 銀杏のメス株がつける実は酪酸による強烈な悪臭を放ち、周囲に深刻な不快感を与える
  • 実の外皮に含まれるギンコール酸は、素手で触れると激しい皮膚炎を引き起こす恐れがある
  • 非常に成長が速く、年間1m近く伸びることもあるため、放置すると個人では管理不能な巨木になる
  • 強靭な根は酸素と水分を求めて伸長し、建物の基礎や下水道管を破壊する物理的リスクを持つ
  • 秋の大量の落葉は、雨どいの詰まりや滑りやすさによる転倒事故、近隣トラブルの火種になりやすい
  • 性別が確定している「オス株」の接ぎ木苗やDNA鑑定済み苗を選ぶことで、実と臭いの被害を防げる
  • 「マリケン」などの矮性品種を選べば、成長が非常に緩やかでコンパクトなサイズを維持できる
  • 街路樹のような美しさを保つには、冬の休眠期に行う毎年の専門的な剪定が不可欠である
  • プロに剪定を依頼する場合、樹高に応じた数万円から十数万円単位の年間維持費がかかる
  • 建物から十分な距離(最低5〜10m以上)を取れない狭小地では、地植えは絶対に避けるべきである
  • 鉢植え栽培は、根の広がりと全体の成長を最も確実にコントロールできる最も推奨される方法である
  • 2〜3年に一度の植え替えと根の整理が、鉢植えでの健康管理とサイズ抑制の要となる
  • 植栽前に、数十年後の樹高や根の広がり、自分や家族が維持管理し続けられるかを冷静にシミュレーションすべきである

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この記事を書いた人

植物を愛するガーデニングブロガー。
植物と暮らす楽しさを、みんなにわかりやすくお届けします。

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