
秋の庭を彩るホトトギスですが、冬になると地上部が茶色く枯れ、初心者の方は「枯れてしまったのでは?」と不安になるかもしれません。しかし、ホトトギスは本来非常に丈夫な多年草であり、正しい知識さえあれば、日本の厳しい冬を越して来年もまた美しい花を咲かせてくれます。
現在、園芸ファンの間では「自然なサイクルを大切にする宿根草ガーデン」が再評価されています。この記事では、ホトトギスの冬越しの基本から、枯れた後の剪定方法、地域別の対策、そして春に向けた準備までを詳しく解説します。
この記事を読むことで、冬の休眠期にどのようなケアが必要なのかが明確になり、自信を持って春を迎えることができるようになるでしょう。
この記事のポイント
- ホトトギスは冬に地上部が枯れて休眠する多年草である
- 基本的に屋外で冬越し可能だが水切れには注意が必要
- 枯れた茎を適切な時期に剪定することで病害虫を予防できる
- 寒冷地ではマルチングなど根を保護する対策が効果的である
ホトトギスの冬越しを成功させる基礎知識
- ホトトギスの休眠期と冬の姿を理解する
- 耐寒性の強さと地域ごとの冬越しの違い
- 冬の置き場所と日当たりで注意すべき点
- 水やりの頻度と乾燥から守るためのコツ
ホトトギスの休眠期と冬の姿を理解する
ホトトギスを育て始めて最初の冬を迎える方が最も驚くのは、その劇的な変化かもしれません。秋に独特の斑点模様がある美しい花を咲かせていたホトトギスは、11月下旬から12月の気温低下とともに葉が黄色くなり、やがて茶色くカサカサに乾いた状態になります。これは植物が枯死したのではなく、冬の寒さを乗り切るために地上部を枯らし、地下にある根茎にエネルギーを蓄えて休眠状態に入った証拠です。
多年草であるホトトギスにとって、この休眠は来年のために不可欠な生理現象です。春から秋にかけて光合成で蓄えた栄養を根に凝縮させ、じっと春の芽吹きを待ちます。一見すると死んでしまったかのような姿になりますが、土の中ではしっかりと生命が維持されています。
この時期に「枯れたから」とあきらめて株を掘り起こしたり、水やりを完全にやめてしまったりしないことが、冬越しの第一歩となります。
また、種類によって落葉のタイミングには差があります。日本に自生するホトトギス(トリキルティス・ヒルタ)などは比較的早く枯れ始めますが、台湾原産系の品種(タイワンホトトギス)との交配種は、比較的遅くまで緑の葉を保つことがあります。いずれにせよ、氷点下の寒さに当たれば地上部は枯れるのが自然な流れですので、無理に青いまま保とうとする必要はありません。この自然なサイクルを理解し、見守ることが大切です。

EL耐寒性の強さと地域ごとの冬越しの違い
ホトトギスはもともと日本の山野に広く自生している植物ですので、日本の気候には非常によく適応しており、耐寒性はかなり強い部類に入ります。一般的に、関東以西の暖地や平野部であれば、地植えの場合でも特段の手厚い防寒対策をせずとも、屋外で十分に冬を越すことができます。
マイナス10℃程度までの冷え込みであれば、土が完全に凍結して根までダメージを受けない限りは耐えることが可能です。
しかし、北海道や東北地方、あるいは標高の高い寒冷地では注意が必要です。特に寒風が強く当たる場所や、土壌が深く凍結する地域では、地下の根茎が凍害を受けて腐ってしまうことがあります。
こうした地域では、後述するマルチングによる保温が不可欠です。また、タイワンホトトギスを親に持つ園芸品種は、日本在来のホトトギスに比べると、わずかに耐寒性が劣る傾向があるため、お住まいの地域の最低気温を確認しておきましょう。
雪国にお住まいの方からは「雪の下になっても大丈夫か」という相談をよく受けますが、実は積雪はホトトギスにとって良い断熱材になります。雪の下の温度は0℃付近で一定に保たれるため、外気よりも暖かく、かつ乾燥からも守られるからです。一方で、雪解け時期の過湿(蒸れ)には弱いため、もともと水はけの良い場所に植えておくことが、寒冷地での冬越しを成功させる隠れたポイントになります。
冬の置き場所と日当たりで注意すべき点
冬のホトトギスにとって、置き場所の選択は春の芽吹きの良し悪しを左右します。地上部が枯れている間は光合成を行わないため、直射日光は必ずしも必要ありません。むしろ、冬の強い西日が当たる場所や、常に乾燥した寒風が吹き抜ける場所は、土中の水分を奪い根を乾燥させるため避けるべきです。
鉢植えの場合は、北風が直接当たらない軒下や、建物の東側などが理想的な退避場所となります。
地植えの場合、夏の間は半日陰を好むホトトギスですが、冬の間もその場所で問題ありません。ただし、落葉樹の下などに植えている場合は、冬に樹木の葉が落ちて日光が当たるようになっても特に遮光する必要はありません。
注意したいのは、コンクリートの壁際やベランダの床に直置きしている場合です。日中にコンクリートが太陽熱を吸収し、夜間に急激に冷え込むといった「温度差」が激しい場所は、植物の根に大きなストレスを与えます。
なるべく温度変化が緩やかな、地面に近い場所で管理してあげてください。
室内に入れる必要があるかどうかについては、基本的には「不要」です。ホトトギスは冬の寒さを経験することで休眠から覚め、春の準備を始める性質(休眠打破)を持っています。暖房の効いた室内に入れっぱなしにすると、季節感が狂い、春になっても正常に芽が出ない、あるいは弱々しい芽になってしまうことがあります。どうしても凍結が心配な場合でも、無加温の玄関先程度に留め、自然な寒さを経験させることが翌年の花付きを良くするコツです。
冬の置き場所での注意点
- 暖房の効いた室内へは入れない(休眠打破に寒さが必要)
- 常に乾燥した強風が当たる場所は避ける
- ベランダでは床からの熱や冷え込みを避けるため、棚やレンガの上に置く


水やりの頻度と乾燥から守るためのコツ
冬越しの失敗で最も多い原因の一つが「水切れ」です。地上部が枯れて見えなくなると、つい水やりを忘れてしまいがちですが、土の中の根は生きており、常に適度な湿度を求めています。特にホトトギスは山野の湿り気のある場所を好むため、乾燥を嫌う植物です。完全にカラカラに乾かしてしまうと、根茎が干からびて死んでしまいます。冬の間も、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えるのが基本です。
水やりのタイミングにも工夫が必要です。冬は気温が上がる午前中(10時から11時頃)に水を与えてください。夕方に水を与えると、夜間の冷え込みで土中の水分が凍結し、根を膨張させて傷める原因になります。
また、鉢植えの場合は、鉢皿に水を溜めないようにしましょう。冬の停滞水は根腐れを引き起こしやすいため、水を与えた後はしっかりと鉢底から水を切り、清潔な状態を保つことが大切です。
地植えの場合は、基本的には雨水に任せて問題ありませんが、2026年現在の気候変動の影響で冬に乾燥した晴天が続くケースが増えています。土がひどく乾燥している場合には、暖かい日に補助的に水を与えてください。
冬の乾燥した風は、予想以上に土から水分を奪います。特に鉢植えは地植えよりもはるかに乾燥しやすいため、数日に一度は土の状態を指で触って確認する習慣をつけると安心です。
「冬は寝ているから水はいらない」という誤解を解き、根の健康を保つための最小限のケアを続けていきましょう。


ホトトギスの冬越しに向けた具体的な手入れ
- 枯れた茎の剪定と地際でのカット方法
- 根を守るマルチングのやり方とおすすめ資材
- 鉢植えと地植えで異なる冬の管理ポイント
- 春の芽吹きを助ける肥料と植え替えの準備
枯れた茎の剪定と地際でのカット方法
秋の花が終わり、12月から1月にかけて葉が完全に茶色くなったら、剪定の時期です。この剪定には二つの大きな目的があります。一つは、見た目をすっきりさせて冬の庭を整えること。もう一つは、病害虫の越冬場所をなくすという衛生面でのメリットです。枯れた茎をそのままにしておくと、翌春に新しい芽が出る際の物理的な邪魔になるだけでなく、枯葉の間にアブラムシの卵やウイルス病の病原菌が潜んでしまうリスクがあります。
具体的な方法は、清潔な園芸バサミを使い、茎を地際から2~3cmの高さでバッサリと切り取ります。あまり深く切りすぎて根茎を傷つけないよう注意しながら、地表に見えている古い茎をすべて取り除いてください。
切り取った茎や周囲に落ちている枯葉には、前述の通り病害虫が潜んでいる可能性があるため、そのまま放置せずに速やかに処分しましょう。堆肥にする場合も、病気にかかっていた株のものは避けるのが無難です。
もし、茎の中にまだ緑色の部分が残っている場合は、完全に枯れるまで待ってから切るのが理想的です。茎が緑色のうちは、まだ光合成の残滓を根に送っている途中だからです。目安としては、1月の初旬から中旬頃、寒さが本格的になったタイミングで行うのが一般的です。
この作業を丁寧に行っておくことで、春に地面からひょっこりと新しい芽が出てくる様子を、遮るものなく観察できるという楽しみも増えます。
根を守るマルチングのやり方とおすすめ資材
特に冷え込みが厳しい地域や、霜柱が立ちやすい場所では「マルチング」が非常に有効です。マルチングとは、土の表面を何らかの資材で覆うことで、地温の低下を防ぎ、水分の蒸発を抑える手法を指します。
ホトトギスは根が比較的浅い場所にあるため、土が凍結して持ち上げられる「霜柱」の被害に遭いやすく、それによって根が切れたり、浮き上がって乾燥したりするのを防ぐ必要があります。
マルチングに使用する資材は、通気性が良く、保湿効果があるものが適しています。おすすめの資材を以下の表にまとめました。
| 資材名 | 特徴 | メリット |
|---|---|---|
| バークチップ | 樹皮を砕いたもの | 見た目が美しく、適度な重みで風に飛ばされにくい。 |
| 腐葉土 | 落ち葉を腐熟させたもの | 保温効果が高く、そのまま春の肥料分(土壌改良)にもなる。 |
| 敷きわら | 稲わらを乾燥させたもの | 伝統的な手法で通気性と保温性のバランスが良い。 |
| ヤシガラ | ヤシの皮を加工したもの | 水はけが良く、清潔で病気になりにくい。 |


マルチングを行う際は、剪定した後の株元を中心に、3~5cm程度の厚みを持たせて広げます。あまり厚すぎると春先に蒸れの原因になることもありますが、真冬の間は少し厚めでも問題ありません。春になり芽吹きの兆しが見えたら、新芽の成長を妨げないように資材を少しだけ横に避けてあげると、スムーズに成長が始まります。このひと手間で、冬越しの成功率は格段に上がります。
マルチングの効果を最大化するコツ
- 剪定後、地面を軽く掃除してから敷き詰める
- 株の周囲だけでなく、少し広めに覆うことで地中の温度変化を緩やかにする
- 春に芽が出始めたら、光が当たるように少し隙間を作る
鉢植えと地植えで異なる冬の管理ポイント
ホトトギスを鉢植えで育てている場合と地植えで育てている場合では、冬越しの注意点がいくつか異なります。まず鉢植えですが、最も警戒すべきは「凍結」と「乾燥」のセットです。
鉢は地面に比べて外気温の影響をダイレクトに受け、冷え込みが厳しい夜には鉢の中の水分が完全に凍ってしまうことがあります。一度や二度の凍結なら耐えることが多いですが、連日繰り返すと根がダメージを受けます。
これを防ぐには、鉢を二重にする(二重鉢)か、発泡スチロールの箱に鉢を入れて隙間に新聞紙を詰めるなどの対策が有効です。
一方、地植えの場合は、一度根付いてしまえば非常に安定しています。地植えでの最大のポイントは、前述のマルチングと「冬の間の踏みつけ防止」です。地上部がなくなると、どこにホトトギスが植わっていたか分からなくなり、うっかりその場所を踏み固めたり、別の植物を植えようと掘り返したりしてしまうことがあります。土が固まると新芽が出にくくなるため、支柱や名札を立てて、植栽場所を明確にしておくことが重要です。
また、地植えでは「冬の水はけ」も重要です。冬の間、常に湿っているような粘土質の場所では根腐れを起こしやすくなります。植え付け時に腐葉土やパーライトを混ぜて水はけを良くしておくのが理想ですが、冬の間は周囲に溝を掘るなどして、余分な雨水が溜まらないよう配慮してください。
鉢植えは機動力を活かして場所を調整し、地植えはどっしりと環境を整える。それぞれの特性に合わせた管理を心がけましょう。
鉢植えの凍結対策の裏技
鉢を地面に直接置かず、木製の棚や発泡スチロールの上に置くだけでも、下からの冷え込みを大幅に軽減できます。寒冷地では、鉢ごと土に埋めて冬越しさせる方法も有効です。
春の芽吹きを助ける肥料と植え替えの準備
冬の間は休眠しているため、肥料を与える必要はありません。いわゆる「冬の元肥」も、ホトトギスの場合は芽が動き出す直前か、あるいは芽が出始めてからで十分です。休眠中に肥料分が多すぎると、根を傷める「肥料焼け」の原因になったり、冬の雑草を元気にしてしまったりするため、12月から2月の間は施肥を控えましょう。
春の足音が聞こえてくる3月頃、緩効性の固形肥料を少量、株元から少し離れた場所に置く(置き肥)のがおすすめです。
冬は「植え替え」の計画を立てる絶好の時期でもあります。ホトトギスは生育が旺盛で、鉢植えの場合は1~2年もすると鉢の中が根でいっぱい(根詰まり)になります。根詰まりを起こすと夏の乾燥に弱くなり、花の付きも悪くなるため、2年に1回程度の頻度で植え替えを行いましょう。適期は新芽が動き出す前の2月下旬から3月中旬頃です。冬の静かな時期に、新しい鉢や清潔な用土(赤玉土7:腐葉土3の割合など)を準備しておくと、春の作業がスムーズに進みます。
地植えの場合も、数年経って株が混み合ってきたら、株分けを兼ねて植え直しを行います。ホトトギスは地下茎で横に広がる性質があるため、広がりすぎた部分を整理することで、風通しが良くなり、夏の病害虫の発生を抑えることができます。
冬の静かな時期に、春の庭のレイアウトを想像しながらこれらの準備を進めるのは、園芸家にとって至福のひと時と言えるでしょう。丁寧な冬の準備が、秋の豪華な花姿へと繋がっていきます。


総括:ホトトギスの冬越しを成功させて来年も美しい花を咲かせる
- ホトトギスは地上部が枯れて冬越しする多年草である
- 枯れた姿を見ても死んだと勘違いせず見守ることが大切である
- 基本的な耐寒性は強く日本全国の屋外で冬越しが可能である
- 12月から1月にかけて枯れた茎を地際で剪定し清掃する
- 冬の間も土が乾いたら午前中に水やりを行い乾燥を防ぐ
- 地上部がない時期の水切れは根死の最大の原因となる
- 寒冷地ではバークチップや腐葉土でのマルチングが有効である
- 冬の置き場所は風当たりの強くない半日陰が理想的である
- 休眠期に自然な寒さに当てることで春の芽吹きが良くなる
- 暖房の効いた室内での冬越しは避けるべきである
- 冬の間は肥料を与えず根をゆっくりと休ませる
- 鉢植えの場合は二重鉢などで土中の凍結対策を行うと安心である
- 春の芽吹き前の2月から3月が植え替えや株分けの適期である
- 植栽場所に目印を立てて冬の間の踏みつけを防止する
- 秋の開花を想像しながら冬の静かな管理を楽しむのがコツである










