
初夏に爽やかな香りと美しい紫色の花を楽しませてくれるラベンダーですが、日本の厳しい冬を無事に乗り越えさせるには、系統ごとの特性に合わせた適切な管理が欠かせません。
せっかく大切に育てた株を冬の寒さや乾燥で枯らしてしまうのは、非常に残念なことです。
気候変動の影響で冬の寒暖差が激しくなる傾向にあり、従来の「出しっぱなし」では対応できないケースも増えています。この記事では、イングリッシュ系やフレンチ系といった種類ごとの耐寒性の違いから、冬越しを左右する秋の剪定、水やりの頻度、最新の防寒対策まで、専門的な知見に基づき詳しく解説します。
この記事を読むことで、お持ちのラベンダーに最適な環境を整え、来春に再び見事な花を咲かせるための具体的なステップが明確になるはずです。
この記事のポイント
- 系統ごとの耐寒温度(マイナス15℃からプラス5℃まで)を把握し、適切な置き場所を確保する
- 冬の根腐れを防ぐため、土が乾いてから数日置く「乾燥気味」の水管理を徹底する
- 秋の剪定(10月〜11月)で株の内部を空かし、冬の湿気による病害虫や蒸れを予防する
- 寒冷地や太平洋側の乾燥地では、マルチングや不織布を活用して「根の凍結」と「乾燥死」を防ぐ

ラベンダーの冬越しを成功させる系統別の管理法
- イングリッシュラベンダーの耐寒性と対策
- フレンチラベンダーの寒さ対策と冬の置き場所
- レースラベンダーを冬の寒さから守る室内管理
- ラバンディン系が冬を越すための環境作り
- 鉢植えと地植えで異なる冬越しの注意点
イングリッシュラベンダーの耐寒性と対策

イングリッシュラベンダー(アングスティフォリア系)は、数ある系統の中で最も耐寒性に優れています。原産地が地中海沿岸の高地であるため、マイナス15℃からマイナス20℃程度の極寒にも耐えるポテンシャルを持っています。しかし、日本での栽培において盲点となるのが、関東以西の太平洋側特有の「乾燥した冬の空風」です。
冬の間、ラベンダーは休眠状態に入りますが、葉からの蒸散が完全に止まるわけではありません。地面が凍結して根が水を吸えない状況で、乾いた北風が吹き付け続けると、植物体内の水分が奪い去られ、春を待たずに「乾燥死」してしまうことがあります。これを防ぐためには、直接風が当たらない場所に鉢を移動させるか、不織布等で風よけを作ることが推奨されます。
また、北海道などの積雪地帯では、意外にも雪の下にある方が温度が一定(約0℃)に保たれ、安定して越冬できます。むしろ、雪が少ないのに気温だけが下がる地域の方がリスクが高いため、株元をバークチップや腐葉土で覆うマルチングを施し、地温の急激な変化を抑えることが重要です。
イングリッシュラベンダーは「寒さに当たる」ことで翌春の芽吹きが促進されます。氷点下にならない室内に入れっぱなしにすると、春に花が咲かなくなることがあるため、基本は屋外管理がベストです。
フレンチラベンダーの寒さ対策と冬の置き場所

ウサギの耳のような可愛い苞葉が特徴のフレンチラベンダー(ストエカス系)は、イングリッシュ系に比べると寒さにはやや弱いです。耐寒温度はマイナス5℃前後が目安となります。関東以西の暖地であれば屋外での冬越しも可能ですが、霜に当たると葉が傷み、最悪の場合は株全体が枯死するため注意が必要です。
冬の置き場所としては、一日中日が当たる南向きの軒下が理想的です。フレンチラベンダーは冬の間も完全に動きを止めないことが多いため、日照が不足すると株がひ弱になり、病気にかかりやすくなります。
鉢植えの場合、気温がマイナスを下回る予報が出た夜間は、玄関内などへ一時的に避難させると安心です。ただし、暖房の効いたリビングなど暖かい場所に長時間置くと、季節を勘違いして新芽が出てしまい、その後に再び寒さに当たった際、致命的なダメージを受ける「寒暖差ショック」のリスクが高まります。
地植えで移動ができない場合は、寒冷紗や不織布でテントのように株を覆ってあげましょう。このとき、ビニールなどの通気性の悪い素材は避けてください。日中に内部の温度が上がりすぎ、夜間との温度差で蒸れが発生し、カビの原因となります。
レースラベンダーを冬の寒さから守る室内管理

繊細な切れ込みの入った葉が美しいレースラベンダー(プテロストエカス系)は、熱帯・亜熱帯の性質を強く継承しており、ラベンダーの中で最も寒さを嫌います。耐寒温度は5℃から10℃と高く、日本の冬を屋外で越すことはほぼ不可能です。11月に入り最低気温が10℃を下回り始めたら、速やかに室内へ取り込むのが鉄則です。
室内では日当たりの良い窓辺に置きますが、冬の窓際は夜間に放射冷却で急激に冷え込みます。夜間だけは窓から離れた部屋の中央部に移動させるか、段ボール箱に入れるなどの断熱対策を行ってください。また、室内管理で最も恐ろしいのがエアコンによる乾燥です。直接風が当たる場所は厳禁で、乾燥しすぎるとハダニが発生し、あっという間に葉が枯れ落ちてしまいます。
ELラバンディン系が冬を越すための環境作り


ラバンディン系は、イングリッシュ系とスパイクラベンダーの交雑種で、両者の「耐寒性」と「耐暑性」を兼ね備えた非常に強健なグループです。耐寒温度はマイナス7℃からマイナス10℃程度あり、平地であれば特段の防寒なしで冬を越せます。
注意点は、その「旺盛な成長力」にあります。ラバンディン系は大株になりやすいため、冬の積雪によって枝が横に広がり、重みで中央からバキッと裂けてしまうトラブルが多発します。
雪が降る前に、麻紐などで株を軽く縛ってスリムな形にまとめておくと、雪の重みを逃がすことができます。
また、ラバンディン系は根の張りが非常に良いため、鉢植えの場合は冬の間に根詰まりを起こしていないか確認しましょう。根が鉢いっぱいに詰まっていると、吸水がうまくいかず、冬場の乾燥ダメージを強く受けてしまいます。2026年現在の気候では、1月下旬〜2月の厳冬期を除けば、秋の終わりや早春に一回り大きな鉢に植え替えることで、春からの爆発的な成長を支えることができます。
鉢植えと地植えで異なる冬越しの注意点
ラベンダーを鉢で育てているか、庭に植えているかで、冬のリスクと対策は大きく変わります。
| 管理項目 | 鉢植えの冬越し | 地植えの冬越し |
|---|---|---|
| 温度変化の影響 | 鉢土が少ないため、外気の影響を受けやすく凍結しやすい | 土の量が多く地熱があるため、根圏の温度は安定する |
| 乾燥リスク | 水切れを起こしやすく、気づかないうちに乾燥死する | 降雨があればほぼ不要だが、連日の晴天時は注意が必要 |
| 主な対策 | 二重鉢、ウッドチップでの鉢面マルチ、夜間避難 | 腐葉土での株元マルチ、不織布カバー、北風除け |
| 水やりの時間帯 | 気温が上がる午前中(10時〜11時頃)に限定 | 乾燥が続く場合のみ、暖かい日中に軽く行う |
鉢植えの場合、プラスチック製の鉢は特に熱を通しやすいため、鉢ごと凍結する恐れがあります。「二重鉢(大きな鉢の中に鉢を入れる)」にしたり、鉢の周りにプチプチ(緩衝材)を巻くだけでも、根を凍結から守る大きな効果があります。地植えの場合は、霜柱によって土が持ち上げられ、根が露出して乾いてしまうのが一番の懸念点です。株元をしっかりとマルチングで保護し、地温を安定させましょう。
ラベンダーの冬越し作業のポイントとトラブル対策
- 秋から冬の剪定が来春の花付きを左右する理由
- 根腐れを防ぐ冬場の正しい水やりと土の状態
- 寒冷地で必須となるマルチングと防寒資材の活用
- 冬の休眠期に避けるべき肥料と土壌のメンテナンス
- 春に新芽が出ない時の原因切り分けと復活の可能性
秋から冬の剪定が来春の花付きを左右する理由


冬を目前に控えた10月〜11月の「秋の剪定」は、来春の美しさを決める最も重要な作業です。この時期に切り戻しを行う目的は二つ。一つは、冬の湿気による「蒸れ」の防止、もう一つは、「受光効率の改善」です。
剪定の目安は、株全体の3分の1から半分程度のボリュームにするイメージで、丸くドーム状に整えます。ここで絶対に守るべきルールは、「緑の葉がついている部分の上で切る」ことです。ラベンダーは木質化した(茶色くなった)古い茎からは新芽が出にくい性質があります。茶色の部分まで深く切りすぎてしまうと、春になっても芽が出ず、そのまま枯れてしまう「強剪定の失敗」を招きます。
ハサミは必ず消毒したものを使用してください。冬は植物の回復力が遅いため、切り口から病原菌が入ると株全体が腐敗する恐れがあります。また、作業は必ず晴天が続く日に行い、切り口がすぐに乾くように配慮しましょう。
根腐れを防ぐ冬場の正しい水やりと土の状態


冬のラベンダーを枯らす最大の原因は、寒さではなく「水のやりすぎによる根腐れ」です。気温が下がると植物の活動は最小限になり、蒸散量も減ります。それなのに夏と同じ頻度で水を与えると、土が常に湿った状態になり、酸素不足で根が腐ってしまいます。
冬の水やりの合言葉は、「乾いたらさらに2日待つ」です。鉢植えの場合、土の表面が白っぽく乾き、鉢を持ち上げてみて「羽のように軽い」と感じるまで待ってください。水を与える際は、必ず「晴れた日の午前中」に行います。夕方に水を与えると、夜間に鉢の中の水分が凍結し、根の細胞を破壊してしまうからです。地植えの場合は、基本的に雨に任せて問題ありませんが、2週間以上雨が降らない乾燥注意報が出ているような時期には、暖かい日中に軽く水を与えてください。
寒冷地で必須となるマルチングと防寒資材の活用
最低気温がマイナス10℃を下回る寒冷地や、北風が吹き抜ける地域では、資材を使った積極的な保護が必要です。2026年現在は、従来のワラだけでなく、通気性と保温性に優れた最新の園芸用不織布や、意匠性の高い防寒ドームなどが広く普及しています。
マルチング材としては、通気性が良く腐りにくいバークチップやウッドチップが最適です。これを株元に5〜8cmの厚さで敷き詰めることで、霜柱による根の浮き上がりを防止できます。株全体を覆う場合は、不織布を使用しましょう。不織布は光を80%以上通しつつ、風を遮り、内部に適度な湿度を保つことができます。
マルチングの注意点
春になり気温が15℃を超え始めたら、早めにマルチングを少しどかして、株元の通気性を確保してください。そのままにしておくと、今度は春の長雨で湿気がこもり、根元から腐りやすくなります。
冬の休眠期に避けるべき肥料と土壌のメンテナンス
「冬の間に栄養を」と考え、肥料を与えるのは逆効果です。冬はラベンダーが眠っている時期。この時に肥料を与えても根は吸収できず、土壌に残った成分が根を傷める「肥料焼け」の原因になります。
肥料の代わりにこの時期行うべきは、「酸度(pH)の調整」です。ラベンダーはアルカリ性の土壌を好みますが、日本の雨は酸性に傾きがちです。2月頃に、株の周りに少量の苦土石灰を撒いておくと、春の雨でゆっくりと溶け出し、芽吹きに最適な土壌環境を整えてくれます。また、土がカチカチに固まっている場合は、根を傷めない程度に株から離れた場所を軽くほぐし、空気を送り込んであげる「中耕(ちゅうこう)」も有効なメンテナンスです。
春に新芽が出ない時の原因切り分けと復活の可能性


3月、4月になっても新芽が見えないと不安になりますが、諦めるのはまだ早いです。特にイングリッシュ系は、気温が十分に上がらないと動き出さない「のんびり屋」な個体も多いからです。
まず、枝の生存を確認しましょう。枝先を数ミリポキッと折ってみて、断面が「緑色で潤いがある」なら生きています。もし茶色くカサカサであれば、その枝は枯れています。しかし、枝の先端が枯れていても、株元に近い部分が生きていれば復活のチャンスはあります。



復活を助けるには、市販の植物活力液(メネデール等)を規定量よりさらに薄めて水やり代わりに与えるのが効果的です。ただし、この段階での肥料は厳禁。芽が5cm以上伸び、活動が本格化してから薄い液肥から再開しましょう。
総括:ラベンダーの冬越しをマスターして来春の満開を迎えましょう
- 自分のラベンダーの系統(イングリッシュ、フレンチ、レース等)を正しく把握し、耐寒限界を知る。
- イングリッシュ系はマイナス15℃まで耐えるが、冬の乾燥した北風による「乾燥死」に注意する。
- フレンチ系はマイナス5℃以下になる地域では、軒下への移動や不織布での保護を徹底する。
- レースラベンダーは5℃以下で枯れるため、冬場は日当たりの良い室内で「ハダニ」に注意して管理する。
- 冬の水やりは「土が完全に乾いてから数日後」に、必ず暖かい日の午前中に行う。
- 秋の剪定(10〜11月)で、木質化していない緑の葉を残しつつ、株の通気性を確保する。
- 寒冷地ではワラやウッドチップでマルチングを施し、霜柱や凍結から根を守る。
- 冬の休眠期は肥料を一切与えず、2月頃に苦土石灰でアルカリ性の土壌調整のみ行う。
- 春先に芽が出なくても、枝の中が緑色なら生存しているため、5月頃まで根気強く見守る。
- 2026年の気候に合わせ、不織布などの便利な防寒資材をスマートに活用して、植物の負担を減らす。










