
庭先でたわわに実るレモンは、家庭菜園の憧れですよね。しかし、レモンは柑橘類の中でも特に寒さに弱く、適切な冬越し対策を怠ると、一晩の寒波で枯れてしまうことも珍しくありません。
「冬になると葉が落ちてしまった」「毎年実がつく前に木が弱ってしまう」といった悩みを持つ方は多いものです。この記事では、2026年現在の最新の栽培知見に基づき、地植えと鉢植えそれぞれの冬越し方法、水やりや肥料のタイミング、さらには寒さで葉が落ちた時の対処法まで、園芸の専門家が徹底解説します。
この記事を読めば、厳しい冬を乗り越え、春に力強く芽吹かせるための具体的なテクニックがすべてわかります。

この記事のポイント
- 品種ごとの耐寒温度を把握し環境に合わせた防寒対策を行う
- 冬の水やりは控えめを徹底し根腐れと凍結を同時に防止する
- 不織布やマルチングを活用して寒風と地温の低下を物理的に防ぐ
- 寒さによる落葉を正しく診断し春の芽吹きに向けた管理を継続する
レモンの冬越しを成功させる環境作りと対策
- 栽培品種ごとの耐寒性の違いを知る
- 地植えレモンの寒風対策と不織布の使い方
- 鉢植えレモンの室内移動と置き場所の注意点
- 冬の間の水やりと肥料管理の重要ポイント
- 寒さで葉が落ちる原因とその後の対処法
栽培品種ごとの耐寒性の違いを知る
レモンの冬越しを考える上で、まず最初に理解しておくべきなのは、育てている「品種」がどれくらいの寒さに耐えられるかという点です。レモン全般の耐寒温度の目安は、一般的にマイナス3℃前後とされています。しかし、2026年現在流通している品種を比較すると、その強さには明確な差があります。
| 品種名 | 耐寒性の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| リスボン | 比較的強い(-3℃〜-4℃) | 日本で最も普及。樹勢が強く、関東以南なら地植え可能。 |
| ユーレカ | やや弱い(-2℃〜-3℃) | 四季咲き性が強いが、寒さには敏感。入念な防寒が必要。 |
| マイヤーレモン | 強い(-5℃前後) | オレンジとの交雑種。皮が薄く、寒冷地でも育てやすい。 |
| サイパンレモン | 弱い(0℃以上推奨) | 暑さには強いが寒さに極めて弱い。冬は室内管理が必須。 |

特に日本で人気が高い「リスボン」は、比較的寒さに強く、温暖な地域であれば地植えでの冬越しが十分に可能です。一方で「ユーレカ」は、リスボンに比べると耐寒性が低いため、気温が氷点下になる夜は不織布での保護が欠かせません。また、最近のトレンドである「マイヤーレモン」は耐寒性が高い傾向にありますが、それでも霜に当たれば大きなダメージを受けます。
さらに、苗木の年齢も重要な要素です。植え付けてから3年未満の若木は、まだ幹が細く根も十分に張っていないため、成木であれば耐えられる気温でも枯死してしまうリスクが高いです。
若木を育てている場合は、品種の耐寒性にかかわらず、一段上の厳しい防寒対策を施すことが、翌春以降の健全な成長につながります。
地植えレモンの寒風対策と不織布の使い方
地植えのレモンにとって、冬の最大の敵は「氷点下の気温」そのものよりも、実は「乾燥した寒風」です。冷たい風が常に葉に当たることで、葉から水分が過剰に奪われます。冬は根が休眠状態で吸水能力が落ちているため、蒸散量に吸水が追いつかず、結果として枝が枯れ込んでしまうのです。
そのため、物理的に風を遮ることが冬越しの成否を分けます。
最も効果的で手軽な方法は、園芸用の「不織布」で樹冠全体を覆うことです。不織布は光を通しつつ、内部の温度を外気より数℃高く保つ効果があります。包む際は、枝を無理に束ねず、ふんわりと全体を包み込むようにしましょう。風で飛ばされないよう、麻紐で優しく固定します。このとき、地面に近い部分まで不織布で覆うことで、地中からの地熱を逃がさず、ドーム状の保温空間を作ることができます。

ビニール袋の代用は厳禁ビニールは通気性が全くないため、晴天の昼間に内部が40℃以上の高温多湿になり、植物が「蒸れ」によって腐ったり、休眠を妨げられたりします。必ず通気性のある不織布や防虫ネットを使用してください。
もし、不織布だけでは心もとない厳しい寒冷地(最低気温が頻繁にマイナス5℃を下回る場所)であれば、不織布の上からさらに防風ネットを張る二重構造にするか、寒冷紗を併用すると、防寒性能が飛躍的に向上します。
鉢植えレモンの室内移動と置き場所の注意点
鉢植えでレモンを育てている最大のメリットは、環境に応じて移動ができることです。最低気温が3℃を下回る予報が出始めたら、安全のために室内や軒下へ移動させることを検討しましょう。ただし、室内へ取り込む際にはいくつか注意すべきポイントがあります。
最も避けるべきは、エアコンの暖房が直接当たる場所に置くことです。レモンは極度の乾燥を嫌います。不自然な温風は葉を急激に乾燥させ、冬なのに夏のような蒸散を強いるため、木が耐えきれず一気に落葉する原因となります。理想的な場所は、暖房の影響を受けにくい、日当たりの良い窓辺です。ただし、夜間の窓際は「放射冷却」の影響で外気温と変わらないほど冷え込むため、夜間だけは窓から1メートルほど離すか、厚手のカーテンを閉めて冷気を遮断してください。

室内管理のコツ
- 湿度が低い場合は、週に数回、霧吹きで「葉水」を与えると葉の乾燥を防げます。
- キャスター付きの鉢皿を利用すると、日中の日向への移動が楽になります。
室内での管理において、もう一つ注意したいのが「日照不足」です。レモンは日光を非常に好む植物ですので、冬の間も1日に最低3〜4時間は日光に当てたいところです。日照が足りないと、春になったときに新芽がひょろひょろと徒長し、弱々しくなってしまいます。
室内に日光が入らない場合は、晴れた日の昼間だけ屋外の暖かい場所に出し、夕方には再び取り込むといった管理が理想的です。
冬の間の水やりと肥料管理の重要ポイント
冬のレモンは成長が緩慢になり、休眠に近い状態になります。この時期に夏場と同じ感覚で頻繁に水やりを行うと、鉢内が常に湿った状態になり、根が呼吸できずに「根腐れ」を引き起こす可能性が非常に高くなります。さらに、夜間に鉢内の水分が凍結すると、膨張した氷が根の細胞を破壊し、致命的なダメージを与えてしまいます。
冬の水やりの基本は「土の表面が完全に乾いてから、さらに2日から3日待って与える」という控えめな姿勢です。与える時間帯は、気温が上がり始めた午前10時から11時頃がベストです。夕方に水を与えてしまうと、夜間の冷え込みで水分が残り、凍結のリスクが高まるため厳禁です。

水の温度にひと工夫冬の水道水は非常に冷たいため、そのまま与えると根に「温度ショック」を与えます。バケツに汲み置いて室温に戻した水か、少しだけお湯を混ぜて「常温(15℃〜20℃程度)」にした水を与えるのが、プロの管理テクニックです。
肥料についても注意が必要です。冬の間は根の吸収力が落ちているため、基本的に速効性の化学肥料を与える必要はありません。過剰な肥料は根を傷める「肥料焼け」の原因になります。もし「寒肥(かんごえ)」として有機質肥料を与える場合は、最も冷え込む時期を過ぎた1月下旬から2月頃に行います。この時期にゆっくり効く肥料を施しておくことで、春の芽吹きと同時に栄養を供給することができます。
寒さで葉が落ちる原因とその後の対処法
冬になるとレモンの葉が黄色くなってパラパラと落ちてしまうことがありますが、これには大きく分けて二つの理由があります。一つは、寒さに対する「生理落葉」です。レモンは常緑樹ですが、極端な寒さを感じると自ら葉を落として蒸散面積を減らし、本体の水分を守ろうとすることがあります。
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枝が生きているかどうかの見分け方は、枝の表面を爪やハサミの先で少しだけ削ってみることです。中が「鮮やかな緑色」であれば、その枝は生きています。逆に茶色く乾いている場合は、その部分は枯れています。もし緑色が確認できれば、春に気温が上がると節々から新しい芽が出てきますので、慌てて伐採したりせず、そのまま静かに見守りましょう。
もう一つの原因は、室内管理における「乾燥」です。土は湿っているのに葉が落ちる場合は、空気の乾燥が原因であることが多いです。この場合、焦って水をやりすぎると今度は根腐れを併発します。
落葉した株は水の吸い上げが極端に少なくなっているため、水やりは通常よりもさらに控えめにし、霧吹きでの保湿を中心に行ってください。落葉はレモンからの「助けて」のサインですが、そこで過保護にしすぎず、適度な放置と適切な温度管理を貫くことが、復活への一番の近道です。
冬越し中に注意すべきトラブルと春の準備
- 冬に発生しやすい病害虫と防除のコツ
- マルチングで地温を維持し根を守る技術
- 積雪対策と枝折れを防ぐための補強方法
- 春の芽吹きを助ける2月の剪定と寒肥
- 苗木を購入する際の最新品種と法的な注意点
冬に発生しやすい病害虫と防除のコツ
冬は病害虫の動きが止まっていると思われがちですが、実はこの時期にしかできない効率的な対策があります。レモン栽培で最も厄介な敵の一つである「カイガラムシ」は、冬の間も枝や葉の裏に張り付いて樹液を吸い続けています。成虫は硬い殻を被っており薬剤が効きにくいですが、活動が鈍い冬こそ物理的に排除する絶好のチャンスです。
見つけ次第、古い歯ブラシなどでこすり落とすのが最も効果的です。また、この時期に「マシン油乳剤」を散布するのもプロの知恵です。マシン油は害虫を油の膜で包み込み、窒息死させる薬剤です。


| 散布時期 | マシン油の希釈倍率 | 目的 |
|---|---|---|
| 12月〜2月(冬) | 30〜50倍 | 越冬中の成虫・卵の窒息死。休眠期なので高濃度が可能。 |
| 3月以降(成長期) | 散布を控えるか100倍以上 | 新芽への油焼け(薬害)を防ぐため注意が必要。 |
冬の間に徹底して駆除しておくことで、翌春の繁殖を劇的に抑えることができます。また、剪定を行った後の切り口は、冬の冷気や乾燥で痛みやすく、そこから菌が入り込んで「幹腐れ」を起こすことがあります。切り口には必ずトップジンMペーストなどの癒合剤を塗り、保護してあげましょう。冬のクリーンアップが、春以降の健康な株作りを左右します。
マルチングで地温を維持し根を守る技術
レモンの寒さ対策において、地上部の保護と同じくらい重要なのが「足元(根)の保温」です。地植えでも鉢植えでも、地面が凍結するほどの寒さは細根を死滅させ、春先の成長を著しく阻害します。これを防ぐための技術が「マルチング」です。
マルチングとは、株元の土を資材で覆い、断熱層を作ることです。2026年現在、家庭菜園でよく使われるマルチング材には以下のものがあります。
- 稲わら・敷きわら: 通気性と保温性のバランスが最高。見た目も風情がある。
- 腐葉土: 保温効果に加え、分解されると肥料にもなる。
- バークチップ: 見栄えが良く、泥跳ねによる病気予防にもなる。
- 不織布シート: 地温を逃がさない効果が高い。
これらを株元に厚さ5cm〜10cmほど敷き詰めることで、外気温が氷点下になっても地温をプラス数℃に保つことができます。鉢植えの場合は、鉢そのものをアルミ断熱シートやプチプチ(緩衝材)で包むことも有効な「鉢マルチ」となります。特にコンクリートの上に直接鉢を置いている場合、底冷えがダイレクトに伝わるため、レンガやすのこの上に置くだけでも大きな防寒効果が得られます。
積雪対策と枝折れを防ぐための補強方法
雪があまり降らない地域であっても、近年の異常気象による「ドカ雪」には注意が必要です。レモンは常緑樹であり、冬の間も葉を茂らせているため、雪が葉の上に積もりやすく、その重みで枝が簡単に折れてしまうことがあります。
特に実をたくさん収穫した直後の枝は、組織が疲弊しており、重圧に耐えられないことが多いのです。
雪予報が出た際は、事前に支柱を立てて枝を支える補強を行いましょう。中心の太い幹に支柱を添えるだけでなく、横に広がった太い枝の下に「つっかえ棒」をするだけでも折損事故を防げます。
雪下ろしの注意点積もった雪を落とす際、凍結している枝を強く叩いたり揺らしたりするのは避けてください。凍った枝は非常に脆くなっており、衝撃で簡単にパキッと折れてしまいます。
ホウキなどで優しく雪を払う程度にとどめましょう。
また、鉢植えの場合は雪が降り始める前に軒下などの屋根がある場所へ退避させるのが一番の対策です。もし屋外で雪に埋もれてしまった場合は、雪には一定の「断熱効果」があるため、無理に掘り起こして外気に晒すよりも、物理的な重みがかかっていないのであれば、そのまま雪解けを待つ方が安全な場合もあります。
ただし、雪解け水で鉢が常に過湿にならないよう、水はけの良い場所に移動させる配慮が必要です。
春の芽吹きを助ける2月の剪定と寒肥
厳しい冬が終わりに近づく2月下旬頃、レモン栽培においては次のシーズンに向けた「仕込み」の時期がやってきます。この時期に行う重要な作業が「剪定」と「寒肥(かんごえ)」です。
剪定は、春からの新しい芽出しをコントロールするために行います。冬の間に寒さで枯れ込んでしまった枝先を、生きている部分(緑色の組織が見える場所)まで切り戻します。また、樹冠の内部に日が当たるよう、重なり合っている細い枝を根元から切る「間引き剪定」を中心に行いましょう。
花芽を飛ばさないためにレモンは春に伸びた新しい枝(新梢)の先に花を咲かせます。そのため、すべての枝を短く切り詰めすぎると、その年の花がなくなってしまいます。剪定は全体の1〜2割程度に留め、懐の古い枝や徒長枝を整理するイメージで行いましょう。
同時に行う寒肥は、春の爆発的な成長を支えるためのエネルギー源です。油かすや骨粉などの有機質肥料を、枝先が広がっている直下の地面に溝を掘って施します。2月に与えた肥料は、微生物によってゆっくり分解され、ちょうど新芽が動き出す3月下旬から4月頃に根から吸収されやすい状態になります。このタイミングでの施肥が、その年の結実数と果実の大きさを決定づけます。


苗木を購入する際の最新品種と法的な注意点
冬から春にかけては、園芸店に新しい苗木が並ぶ時期です。2026年現在、家庭菜園でも育てやすい「トゲ無しリスボン」や、より耐寒性を高めた選抜品種など、優れた苗が多く流通しています。
新しくレモンを迎え入れる際は、自分の地域の最低気温を確認し、最適な品種を選んでください。
ここで、現代の園芸家として必ず知っておかなければならないのが「種苗法(しゅびょうほう)」です。2022年に改正・施行されたこの法律により、登録品種については、家庭菜園であっても許可なく「自家増殖(挿し木などで苗を増やすこと)」を行うことは法律で禁止されています。
- PVPマーク: 苗のラベルにこのマークがあるものは、農林水産省に登録された品種です。
- 増殖の禁止: 自分で挿し木をして増やしたり、その苗を友人に譲渡したりすることは違法となります。
- 販売の禁止: 許可なくフリマアプリ等で販売することも厳格に処罰されます。
レモンの人気品種の中には、この登録品種が多数含まれています。ルールを正しく守ることは、新しい品種を生み出した育種家の努力を保護し、将来的にさらに優れた品種が登場することを支えることにつながります。法を遵守した健全な園芸ライフを楽しみましょう。
総括:正しい知識でレモンの冬越しを成功させ豊かな収穫へ
この記事のまとめです。
- レモンの耐寒性は品種によって異なるが一般的にマイナス3℃が限界である
- リスボンやマイヤーレモンは比較的寒さに強く初心者にも育てやすい
- 地植えの場合は不織布で樹冠を覆い冷たい寒風を遮ることが最優先である
- 不織布は通気性と透光性があるものを選び蒸れによる病気を防ぐ
- 鉢植えは最低気温が3℃を下回る前に室内や軒下へ移動させる
- 室内では暖房の風を避け日当たりの良い窓辺で管理を行う
- 冬の水やりは土が乾いてから数日後に午前中の暖かい時間帯に行う
- 休眠期の冬は基本的に肥料を控え根を休ませることが重要である
- 寒さで葉が落ちても枝が生きていれば春に芽吹くので見守る
- カイガラムシなどの害虫は冬のうちに物理的に除去するか薬剤防除を行う
- 株元のマルチングは地温を維持し根の凍結を防ぐために非常に有効である
- 大雪の予報時は支柱で枝を補強し重みによる枝折れを未然に防ぐ
- 2月下旬に寒肥と軽い剪定を行い春の本格的な成長に備える
- 登録品種の自家増殖は種苗法で禁止されているためルールを厳守する
- 適切な冬越し管理を行うことで翌秋に高品質なレモンを収穫できる










