
お庭のグランドカバーとして人気のクローバーですが、美しい緑の絨毯を作るためには、種をまくタイミングが何よりも重要です。本記事では、園芸の専門的な視点から、クローバーの種まき時期について徹底的に解説します。
2025年現在、気候変動の影響でこれまでの「常識」が通用しにくくなっていますが、基本となる気温と土壌の関係を理解すれば失敗は防げます。春と秋の最適なタイミングや、地域ごとの気候に合わせた調整、さらには発芽率を格段に高めるための土作りや水やりのテクニックまで、初心者の方でも迷わず作業を進められる情報をお届けします。
この記事を読めば、クローバーが元気に育つ環境を整え、雑草に負けない理想的な庭作りを実現する具体的なステップがわかります。
この記事のポイント
- クローバーの種まきに最適な春と秋の具体的な気温とタイミング
- 地域ごとの気候の差を考慮した種まきスケジュールの立て方
- 発芽を成功させるために不可欠な土壌環境と肥料の基礎知識
- 登録品種(マイクロクローバー等)を扱う際に守るべき種苗法のルール
クローバーの種まき時期を極める最適なタイミング

- 春まきの最適なタイミングと気温
- 秋まきのメリットと冬越し準備
- 地域別!寒冷地と暖地の違い
- 避けるべき時期と失敗の原因
春まきの最適なタイミングと気温

クローバーの種まきにおいて、春は最も一般的で成功しやすい季節です。具体的な時期としては、3月から5月にかけてが最適とされています。この時期の大きなポイントは、地温が安定して上昇してくる点にあります。クローバー(シロツメクサ等)の発芽適温は一般的に15℃から25℃の間とされており、日中の最高気温が20℃前後で安定する時期を狙うのがベストです。2025年の気候傾向を見ても、桜が散り、新緑が芽吹くタイミングが土壌温度の目安となります。
春まきの最大のメリットは、これから夏に向けて日照時間が長くなり、植物の光合成が活発になる時期と重なることです。クローバーは日光を非常に好む植物ですので、春にしっかりと根を張らせることができれば、その後の生育スピードも格段に早まります。
ただし、注意点として、春まきは雑草との競争が激しくなる時期でもあります。暖かくなるとクローバー以外の野草も一斉に芽吹くため、種をまく前にしっかりと除草を行い、クローバーが優先的に育つ環境を整えてあげることが、美しい緑の絨毯を作るための第一歩となります。
また、春まきの場合、梅雨の時期に入る前にどれだけ株を大きくできるかが重要です。梅雨の長雨で土壌が過湿状態になると、まだ幼い苗は根腐れを起こしやすいため、5月の中旬までには種まきを完了させておきたいところです。
もし、4月後半から5月にまくのであれば、水はけの良い土壌作りをより意識してください。具体例としては、排水性を高めるためにパーライトを少量混ぜ込むなどの工夫が挙げられます。
春まき成功の3箇条
- 最高気温が20℃前後で安定する時期を選ぶ
- 種まき前の徹底的な除草でクローバーの勢力を守る
- 梅雨の湿害を避けるため、遅くとも5月中旬までに完了させる

秋まきのメリットと冬越し準備
クローバーの種まきにおいて、春に次いで、あるいはそれ以上に適しているのが秋です。具体的には9月から10月下旬頃までが目安となります。秋まきの大きなメリットは、春に比べて雑草の勢いが落ち着いてくるという点にあります。多くの夏雑草は秋になると勢いを失うため、クローバーの芽が雑草に負けてしまうリスクを軽減できるのです。また、秋にまくことでクローバーは冬を越すために根を深く張ろうとします。この「冬の寒さを経験させる」ことが、翌春の爆発的な成長につながる重要なステップとなります。
秋まきを成功させるための気温の目安も、春と同様に15℃から25℃程度です。9月の残暑が厳しい時期に焦ってまいてしまうと、強い日差しと高温で芽が焼けてしまったり、乾燥で発芽が止まってしまったりすることがあります。
そのため、彼岸を過ぎて朝晩の冷え込みを感じるようになってから作業を始めるのが理想的です。2025年12月現在、近年の傾向として秋の高温化が続いているため、カレンダー上の日付よりも「最高気温が25℃を下回る予報」を確認してタイミングを見極めることが成功への近道です。
冬越しに向けた準備も欠かせません。秋まきの場合、本格的な霜が降りる前に、本葉が4枚から6枚程度まで育っていることが望ましいです。この段階まで成長していれば、クローバーは十分な耐寒性を備え、雪の下でも枯れずに春を待つことができます。
もし、成長が遅れている場合は、不織布を被せるなどの防寒対策を行うことで、幼苗を厳しい寒風から守ることができます。秋にじっくりと根を張らせたクローバーは、春の訪れとともに驚くほどの速さで地面を覆い尽くしてくれるため、管理の手間を減らしたい方には非常におすすめの選択肢と言えます。
地域別!寒冷地と暖地の違い
日本は南北に長く、地域によって気候が大きく異なるため、クローバーの種まき時期も一律ではありません。自分の住んでいる地域の特性を理解することが重要です。
| 地域区分 | 最適な種まき時期(春) | 最適な種まき時期(秋) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 寒冷地 (北海道・東北など) | 5月下旬〜6月中旬 | 8月下旬〜9月上旬 | 冬の訪れが早いため秋まきは早めに |
| 中間地 (関東・東海・関西など) | 3月中旬〜5月中旬 | 9月中旬〜10月下旬 | 春・秋ともに適期。秋まきが最も安定 |
| 暖地 (九州・四国など) | 3月上旬〜4月下旬 | 10月上旬〜11月上旬 | 夏の酷暑を避けるため秋まきが推奨 |

寒冷地においては、春まきがメインとなります。冬の訪れが早く、秋に遅くまくと根が十分に張る前に凍結してしまう「凍上」のリスクが高いためです。一方、暖地では夏の猛暑が厳しいため、春まきの場合は夏が来る前に株を完成させる必要があります。
近年は10月まで暑い日が続くことも多いため、暖地では10月に入ってからの秋まきが最も失敗が少ない傾向にあります。
EL避けるべき時期と失敗の原因


クローバーの種まきを絶対に避けるべき時期は、主に「厳冬期」と「盛夏」の2つです。まず12月から2月の厳冬期は、地温が低すぎて種が休眠状態に入ってしまいます。たとえ発芽したとしても、夜間の凍結によって土が持ち上がる「霜柱」の影響で、幼い根が土から浮き上がり、そのまま乾燥して枯死してしまいます。この時期に無理に種をまくのは、種を無駄にするだけでなく、土壌の中で種が腐敗する原因にもなるため、春まで待つのが賢明です。
次に、7月から8月の盛夏も避けるべきです。クローバーの種は発芽の際、常に安定した湿度を必要としますが、真夏の高温下では土壌があっという間に乾燥します。一度水分を吸って活動を始めた種が乾燥してしまうと、二度と芽吹くことはありません。
また、強い直射日光は幼い苗にとって過酷すぎて、葉が焼けて一晩で全滅することも珍しくありません。どうしても夏にまかなければならない場合は、遮光ネットや頻繁な水やりが必要ですが、成功率は極めて低くなります。
失敗の主な原因として、時期以外には「覆土(ふくど)のしすぎ」が挙げられます。クローバーの種は非常に細かく、光を感じて発芽する「好光性」の性質が強いため、土を深く被せすぎると芽が出ません。土を被せるというよりは、手や板で軽く押さえて土と密着させる「鎮圧」という作業が重要です。また、早く地面を覆いたいからと大量に種をまくと、芽が密集しすぎて風通しが悪くなり、蒸れによる病害が発生しやすくなります。適切な量を、適切な時期にまくことが大原則です。
種まき時期に合わせたクローバーの育て方
- 土作りと肥料の与え方のコツ
- 発芽率を高める種まきの手順
- 水やりと初期成長の管理ポイント
- グランドカバーを維持する手入れ
土作りと肥料の与え方のコツ


クローバーは比較的生命力が強く、どんな土壌でも育つと思われがちですが、美しいグランドカバーを目指すなら事前の土作りが欠かせません。クローバーが好むのは、水はけが良く、かつ適度な保水性を持った弱酸性から中性(pH6.0〜7.0程度)の土壌です。日本の土壌は雨の影響で酸性に傾きやすいため、種まきの2週間ほど前に苦土石灰を1平方メートルあたり100g程度散布し、よく耕しておくことでpHを調整してください。
肥料については、クローバーの特性を理解した与え方が必要です。クローバーはマメ科の植物であり、根に「根粒菌」を共生させています。この菌は空気中の窒素を取り込んでクローバーに供給してくれるため、窒素分の多い肥料を過剰に与える必要はありません。逆に窒素が多すぎると、根粒菌の働きが弱まり、かえって軟弱な株になってしまうことがあります。元肥(もとごえ)としては、リン酸やカリ分を主体とした緩効性肥料を少量混ぜ込む程度で十分です。
また、土壌の物理的な改善も重要です。粘土質の土壌では根が十分に伸びず、夏場に水が溜まって根腐れを起こしやすくなります。このような場合は、腐葉土を混ぜ込んで、通気性と排水性を確保してください。
逆に砂質の土壌で水持ちが悪い場合は、黒土を混ぜる対策が有効です。2025年現在、市販されている「グランドカバー専用の土」などを活用するのも失敗を減らす良い手段となります。
発芽率を高める種まきの手順


種まきの準備が整ったら、いよいよ実践です。クローバーの種は非常に小さいため、均一にまくには少しコツがいります。まず、種をまく場所の表面をレーキなどで平らにならしてください。その後、種をバケツに入れ、乾燥した細かな砂やバーミキュライトと1対3程度の割合でよく混ぜ合わせます。こうすることで、種のボリュームが増し、手からこぼれる際に一箇所に固まるのを防ぐことができます。
まき方は、縦方向に往復してまいた後、さらに横方向に往復してまく「クロスまき」がおすすめです。これにより、まきムラを最小限に抑えることができます。種をまき終えたら、次に重要なのが「鎮圧」です。
クローバーの種は土を厚く被せる必要はありません。足で優しく踏み固めるか、板のような平らなもので土の表面を軽く押さえ、種と土をしっかりと密着させてください。これにより、土中の水分が種に伝わりやすくなり、発芽率が劇的に向上します。
覆土の厚さに注意!
- 土を被せる場合は、種が隠れるか隠れないか程度の2mm〜3mmまでに留めてください。
- 深すぎると光が届かず、発芽せずに土の中で腐ってしまう原因になります。
種まきが終わったら、すぐに水やりを行います。この際、ハス口の細かいジョウロを使用し、種が水で流されないように優しく丁寧に散布してください。勢いよく水をかけると、せっかく均一にまいた種が一箇所に集まってしまうため注意が必要です。
水やりと初期成長の管理ポイント
種をまいてから約1週間から10日ほどで、クローバーの可愛らしい双葉が顔を出します。この発芽直後から、本葉が数枚揃うまでの期間が最もデリケートな時期です。水やりは「土の表面が乾き始めたらたっぷりと」が基本ですが、幼苗の頃は根がまだ浅いため、極端な乾燥には非常に弱いです。
晴天が続く日は、朝の涼しい時間帯に毎日状態を確認し、必要であれば土の様子を見て追加の水やりを行ってください。
初期成長の段階で最も気をつけるべきは、雑草の存在です。クローバーが地面を完全に覆い尽くすまでは、どうしても隙間から雑草が生えてきます。クローバーが小さいうちは、雑草の影に隠れて日光が当たらなくなったり、養分を奪われたりしてしまいます。
見つけ次第、クローバーの根を傷めないように丁寧に手で抜き取ってください。この時期の除草を徹底することで、後の管理が劇的に楽になります。
また、初期の追肥についても触れておきましょう。元肥を適切に施していれば、基本的には急いで追肥をする必要はありません。しかし、葉の色が薄い黄色っぽくなっていたり、成長が極端に遅かったりする場合は、規定よりも薄めた液体肥料(1000倍程度)を水やり代わりに与えると、成長に勢いがつきます。
2025年の最新資材として、発芽を促進するバイオスティミュラント(植物活性剤)なども注目されており、これらを初期段階で使用するのも一つの手です。
グランドカバーを維持する手入れ


クローバーが地面を隙間なく覆ったら、いよいよ維持管理のフェーズに入ります。クローバーは一度定着すれば非常に丈夫ですが、放置しすぎると茎が伸びすぎて「立ち上がり」、見た目がだらしなくなってしまうことがあります。
これを防ぐためには、定期的な「刈り込み」が有効です。芝刈り機や刈払機を使用して、春と秋の成長期に高さを3cm〜5cm程度に揃えてあげると、脇芽が促進されてより密度の高い絨毯になります。
また、クローバーには種苗法で保護されている品種があることに注意が必要です。例えば、背が低く維持管理が楽な「マイクロクローバー(品種名:ピポリーナなど)」は、登録品種として保護されています。
種苗法に関する注意点
2022年施行の改正種苗法により、登録品種の種子や苗から増やしたものを、権利者の許可なく他人に譲渡したり販売したりすることは禁止されています。自分の庭で楽しむ分には問題ありませんが、友人への株分けなどには注意が必要です。
さらに、数年経つと株が古くなり勢いが落ちることがあります。その場合は、春か秋の適期に軽く耕して新しい種を「追い蒔き」することで、常に若々しい緑を維持することができます。
クローバーは踏みつけにも比較的強いですが、常に同じ場所を踏み続けると剥げてしまうため、歩く頻度が高い場所には飛び石を置くなどの工夫をすると、美しい景観を長く保つことができます。
総括:クローバーの種まき時期を正しく選び理想の緑の絨毯を実現しよう


この記事のまとめです。
- 種まきの適期は春(3〜5月)と秋(9〜10月)で、気温15〜25℃が目安
- 春まきは梅雨前に株を大きくし、秋まきは初霜の1ヶ月前までに完了させる
- 地域によって適期が異なるため、寒冷地は春まき、暖地は秋まきを優先する
- 真夏の酷暑と真冬の凍結期は発芽・定着が難しいため避ける
- 土作りでは苦土石灰でpHを整え、窒素肥料は控えめにするのがコツ
- 種は砂と混ぜてクロスまきし、覆土はせずに「鎮圧」で土と密着させる
- 発芽までは乾燥させないよう、細かいシャワーで優しく水やりを行う
- 定期的な刈り込みによって密度を高め、美しいグランドカバーを維持する
- マイクロクローバーなどの登録品種は種苗法を遵守して取り扱う











