
庭を彩る可愛らしい斑入りの葉が魅力のグレコマ。ガーデニング初心者でも育てやすく、グランドカバーとして高い人気を誇りますが、実は「安易に庭に植えてはいけない植物」として名前が挙がることが非常に多い植物でもあります。
なぜ、これほどまでに警戒されているのでしょうか。

2025年現在、環境意識の高まりとともに、外来種の管理の難しさが再認識されています。この記事では、グレコマの驚異的な繁殖力の仕組みや、庭植えをした際に起こりうるトラブル、そして後悔せずにその美しさを楽しむための具体的な管理術を詳しく解説します。
これからグレコマを迎えようとしている方も、増えすぎて困っている方も、この記事を読むことでトラブルを未然に防ぎ、健やかな庭づくりを実現する術がわかるようになります。
この記事のポイント
- グレコマが持つ驚異的な繁殖スピードと周囲を飲み込む性質が理解できる
- 地下茎と匍匐茎の両方で増えるため一度根付くと駆除が極めて困難になる理由
- 庭植えを避けるべき理由と物理的な仕切りを用いた安全な栽培方法の具体策
- 万が一増えすぎてしまった時の効率的な駆除手順と適切な処分方法がわかる

グレコマを植えてはいけないと言われる理由と繁殖力の正体
- グレコマの驚異的な繁殖スピードと生育環境
- 茎と根の両方から増え続けるシソ科の特性
- 一度根付くと完全な駆除が困難になるリスク
- 他の植物や芝生を飲み込んでしまう競合性
- 斑入り品種が先祖返りして野生化する恐怖
グレコマの驚異的な繁殖スピードと生育環境
グレコマは学名を Glechoma hederacea といい、和名では「セイヨウカキドオシ」や「斑入りカキドオシ」と呼ばれています。シソ科の多年草であり、その最大の特徴は、あらゆる環境に適応してしまう強靭な生命力にあります。日当たりの良い場所を好むのはもちろんのこと、他の植物が育ちにくい半日陰や、湿り気のある場所でも難なく広がっていきます。この適応力の高さこそが、初心者には育てやすさとして映る一方で、経験豊富なガーデナーからは「植えてはいけない」と恐れられる最大の要因です。
春から秋にかけての生育期には、目に見えて成長が分かるほどのスピードで茎を伸ばします。特に、栄養分が豊富な庭土に植えた場合、わずか1、2ヶ月で数メートル先まで到達することも珍しくありません。
グレコマの成長は止まることを知らず、一度好環境を見つけると、文字通り地面を覆い尽くすまでその勢いを維持します。この爆発的な広がりが、庭のバランスを崩すきっかけとなってしまうのです。
さらに、耐寒性も非常に高く、日本の多くの地域で地上部を残したまま越冬、あるいは春に力強く芽吹きます。冬の間は動きが止まっているように見えても、春の訪れとともに爆発的なエネルギーを解放し、気づいたときには手出しできない範囲まで広がっていることがあります。
2025年現在の温暖化傾向により、冬の休眠期間が短縮され、活動開始が早まっている傾向も無視できません。このように、時間とともに制御不能なレベルへ到達するスピード感が、グレコマの恐ろしさの第一歩と言えるでしょう。
日本の在来種との違い
日本には在来種の「カキドオシ」が存在しますが、園芸店で見かけるグレコマ(セイヨウカキドオシ)は、より繁殖力が強化された品種であることが多いです。
茎と根の両方から増え続けるシソ科の特性
グレコマの繁殖力を支えているのは、シソ科特有の生理構造にあります。この植物は「匍匐茎(ランナー)」と呼ばれる茎を地表に這わせながら移動しますが、恐ろしいのはその節々の仕組みです。
ランナーの節が地面に触れると、そこから瞬時に新しい根(不定根)を出し、しっかりと地面に固着します。つまり、親株から伸びた茎が地面に触れるたびに、新しい独立した株が次々と誕生していくような仕組みを持っているのです。
通常の植物であれば、主根を抜けば枯死させることができますが、グレコマの場合は節ごとに根が張っているため、一箇所を抜いても他の節から再生が可能です。さらに、地表のランナーだけでなく、土壌の浅い層にも根を張り巡らせます。
この網目のようなネットワークが、一度の除草作業で全てを取り除くことを困難にしています。シソ科の植物にはミントなども含まれますが、グレコマはそのミントにも引けを取らない、あるいはそれ以上にしぶとい生存戦略を持っています。
例えば、千切れた茎の一節(わずか1〜2cm程度)が地面に落ちているだけでも、そこから水分を吸収して発根し、新たな繁殖を開始する能力があります。草刈機などで細かく裁断して放置しようものなら、それぞれの破片が種のような役割を果たし、翌年には庭中がグレコマだらけになるという惨劇を招きかねません。

この「どこからでも増える」という特性が、庭植えにおいて大きな脅威となります。
裁断による拡散に注意!
- 草刈機での処理は、破片を撒き散らすため逆効果になることがあります。
- 手作業で抜く際も、途中で茎を千切らないよう慎重に行う必要があります。
一度根付くと完全な駆除が困難になるリスク
「グレコマを植えてはいけない」と断言される理由の核心は、その駆除の難しさにあります。グレコマの根は細く、土の奥深くや他の植物の根の間に複雑に絡みつきます。手で引き抜こうとしても、茎が非常に脆いために途中で千切れてしまいやすく、肝心の根や節が土の中に残ってしまうのです。先述の通り、残ったわずかな組織から再生するため、手作業による完全な絶滅はほぼ不可能に近いと言わざるを得ません。
特に、庭に大きな石やレンガ、構造物がある場合、その隙間に逃げ込んだ根を追いかけるのは至難の業です。石の下で生き延びた根が、数ヶ月後に再び地上へと芽を出し、そこからまたランナーを伸ばし始めます。
この「いたちごっこ」のような状態が数年続くこともあり、精神的な負担を感じるガーデナーも少なくありません。完全に駆除するためには、土を丸ごと入れ替えるか、強力な除草剤を計画的に使用し続ける必要があります。
また、グレコマは種子によっても増えることが可能です。花が咲いた後に種がこぼれれば、翌春には予期せぬ場所から芽を出します。ランナーによる水平方向の移動と、種子による垂直方向、あるいは遠方への移動を組み合わせることで、グレコマは庭全体の支配権を握ろうとします。
この多角的な繁殖戦略こそが、一度根付いたら最後、完全な自由を奪われるリスクそのものなのです。
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他の植物や芝生を飲み込んでしまう競合性
グレコマをグランドカバーとして導入する際、最も注意すべきは他の植物との競合です。グレコマは他の植物に配慮して広がることはありません。大切に育てている宿根草や低木の根元に侵入し、その株元を隙間なく覆い尽くします。
これにより、本来その植物が必要としていた水分や養分を奪い取るだけでなく、地面の通気性を悪化させ、病害虫の発生を招く原因となります。
特に芝生を育てている庭にとって、グレコマは最悪の天敵となります。芝生の密度が低い場所から侵入し、芝を覆い隠すように葉を広げるため、光合成を阻害された芝生はやがて枯死してしまいます。
一度芝生の中に混じってしまうと、芝の根とグレコマの根を判別して取り除くことは不可能であり、芝生ごと剥ぎ取って張り替えるという大掛かりな補修が必要になるケースも珍しくありません。


| 特徴 | グレコマ | 一般的な芝生(高麗芝など) |
|---|---|---|
| 成長速度 | 非常に速い(数週間で拡大) | 緩やか |
| 耐陰性 | 高い(日陰でも育つ) | 低い(日照が必要) |
| 再生能力 | 茎の破片からでも再生 | 根やランナーが必要 |
| 管理のしやすさ | 困難(制御しにくい) | 比較的容易(刈り込みで管理) |
また、グレコマの葉は密度が高く重なり合うため、その下は常に湿った状態になります。これはナメクジやダンゴムシ、あるいはカビによる病気の温床となりやすく、庭全体の衛生環境を損なう恐れがあります。
他の草花を主役として楽しみたい庭において、グレコマの旺盛すぎるサービス精神は、むしろ他の命を脅かす「侵略」として機能してしまうのです。
斑入り品種が先祖返りして野生化する恐怖
園芸店で一般的に流通しているのは、葉の縁に白い斑が入る「バリエガータ」という品種です。見た目が非常に明るく、観賞価値が高いことから選ばれることが多いのですが、ここには「先祖返り」という大きな落とし穴があります。
斑入りの葉は、白い部分に葉緑体を持たないため、光合成能力が緑一色の葉よりも劣ります。植物にとって、これは生存上のハンデキャップとなります。
そのため、過酷な環境に置かれたり、株が古くなってきたりすると、生き残るための生存本能として、より光合成効率の良い「緑一色の葉」を出すようになります。これが先祖返りです。
緑色に戻ったグレコマは、斑入り種よりも遥かに強靭で、繁殖スピードも格段に速くなります。気づかずに放置していると、いつの間にか斑入りの部分が駆逐され、庭が野生化した真っ緑のカキドオシに占拠されてしまいます。
先祖返りした株は、もはや園芸植物としての繊細さは失われ、野山に自生する野草そのものの強さを見せつけます。この状態になると、元々の美しさを楽しむどころではなくなり、文字通り「雑草」としての戦いが始まります。斑入りを維持するためのこまめな剪定が必要であり、その手間を惜しむと、庭の景観は一気に野性味あふれる、悪く言えば荒れ果てた姿へと変貌してしまいます。斑入りの美しさを保つには、緑の葉を見つけた瞬間に根元からカットする厳格な管理が求められます。
グレコマを安全に楽しむための植栽管理とトラブル対策
- 庭植えを回避し鉢植えやハンギングで育てる
- 根止めシートやレンガを活用した物理的隔離
- 広がりすぎた場合の正しい剪定と処分方法
- 放置して増えすぎたグレコマを駆除する手順
- グレコマの代わりにおすすめのグランドカバー
庭植えを回避し鉢植えやハンギングで育てる
グレコマの美しさを安全に、そしてストレスなく楽しむための最も確実な方法は、地面に直接植えないことです。鉢植えやコンテナ栽培に限定することで、その驚異的な繁殖力を鉢の中に封じ込めることができます。


グレコマは垂れ下がる性質があるため、鉢植えにすると縁から溢れるように葉が茂り、非常に優雅な姿を見せてくれます。特に寄せ植えの引き立て役として優秀で、シルバーリーフや明るい色の花との相性は抜群です。
特におすすめなのが、ハンギングバスケットや高い台の上に置いたプランターでの栽培です。高い位置に配置することで、ランナーが地面に接触することを物理的に防ぐことができます。
宙に浮いた状態で伸びるランナーからは根が出ることができないため、勝手に増殖して広がる心配がありません。このように「接地させない」工夫を凝らすだけで、グレコマは非常に扱いやすい優等生な観葉植物へと変わります。
鉢植えで育てる際の注意点としては、鉢底の穴から根が脱走して地面に根付かないようにすることです。鉢を地面に直置きしていると、気づかないうちに根が地面に到達し、そこから庭全体へ広がってしまうことがあります。
レンガや鉢置き台を使い、地面との間に空間を設けることが、長期的な安全を確保するための鉄則です。この一工夫があるだけで、管理の難易度は劇的に下がります。
根止めシートやレンガを活用した物理的隔離
どうしても庭の一部に植えたい、あるいは特定のエリアだけでグランドカバーとして機能させたいという場合には、徹底した物理的隔離が不可欠です。中途半端な仕切りでは、グレコマのランナーは簡単に乗り越えてしまいます。
有効な手段の一つは、園芸用の「根止めシート」や「エッジング材」を土中に深く埋め込むことです。少なくとも15cmから20cm以上の深さまでシートを入れ、地下茎の横移動を遮断する必要があります。
仕切りの上部についても注意が必要です。グレコマは地表を這うランナーで広がるため、仕切りが地面と同じ高さだと、あっさりと境界線を越えていきます。レンガを二段に積む、あるいは仕切り板を地面から5cm程度露出させるなどして、乗り越えるためのハードルを高く設定してください。
定期的に仕切りの境界をチェックし、越境しようとしている茎があればその場で切り取る習慣を身につけることが、庭の平和を守る鍵となります。
物理的隔離の成功ポイント
- シートの深さは20cm以上を確保する。
- 地上部にも5cm以上の高低差を作る。
- 数ヶ月に一度、境界を乗り越えていないか目視確認する。
また、隔離エリアの土壌についても考慮が必要です。仕切られた空間内は根が回りやすいため、数年に一度は株を掘り起こして整理し、土を更新する必要があります。これを怠ると、エリア内の栄養を使い果たしたグレコマが、生存領域を求めて必死に外へと脱走を試みるようになります。
物理的な壁を作るだけでなく、壁の中の環境を適切に維持することが、管理を継続するための秘訣です。


広がりすぎた場合の正しい剪定と処分方法
グレコマの管理において「剪定」は日常的な作業となります。伸びすぎたランナーをカットする際は、ただ切るだけでなく、切った後の処理に細心の注意を払ってください。グレコマの剪定で最もやってはいけないことは、切った茎をその場に放置したり、庭の隅のゴミ捨て場に投げ入れたりすることです。
先述の通り、放置された茎から根が出て、そこが新たな繁殖拠点になってしまうからです。
正しい処分方法は、切った茎を速やかにビニール袋に入れ、各自治体のルールに従って「燃えるゴミ」として出すことです。堆肥の中に混ぜることも避けてください。家庭用コンポスター程度の温度では、グレコマの生命力を奪いきれないことがあり、完成した堆肥を庭に撒いた際、意図せず庭中にグレコマを植え付けてしまう結果になりかねません。確実に乾燥させて死滅させるか、ゴミとして家から出すのが最も安全です。
剪定のタイミングは、生育が旺盛になる梅雨前から夏にかけてがメインとなりますが、理想を言えば「気づいた時にその都度切る」のがベストです。一度に大量に切るよりも、こまめにハサミを入れることで、株の密度を保ちつつ、暴走を防ぐことができます。
また、剪定時に先祖返りした緑色の葉を見つけた場合は、その枝の付け根から徹底的に取り除き、株全体の美しさを維持するように努めましょう。
放置して増えすぎたグレコマを駆除する手順
もし、すでに庭の広範囲にグレコマが広がってしまい、手作業では負えない状況になっている場合は、計画的な駆除作戦が必要になります。まず最初に行うべきは、地上部のランナーを可能な限り手で、あるいは鎌で刈り取ることです。
これにより、光合成を阻害し、植物のエネルギーを削ぎ落とします。この際、前述の通り刈り取った残骸は一切残さず回収してください。
次に、残った根に対してアプローチします。手作業で掘り起こす場合は、スコップで深く土を返し、網目状に広がる根を丁寧に取り除きます。しかし、これは非常に労力がかかるため、状況に応じて除草剤の使用を検討するのも一つの手です。
グレコマに効果があるのは、グリホサート系などの移行性の除草剤です。葉から成分が入り込み、根まで枯らすタイプのものを選びましょう。他の大切な植物に薬剤がかからないよう、筆で塗るか、ノズルを近づけてスポット的に散布してください。
除草剤を使用しても、一度の散布で全てを根絶できるとは限りません。土の中に眠っている種や、薬剤が届かなかった一部の根から再生してくることが多いため、数週間後に再び芽が出てこないか監視を続けます。新しい芽を見つけたら、小さいうちに速やかに抜き取る。この「徹底した追撃」を数ヶ月繰り返すことで、ようやくグレコマの支配から庭を解放することができます。


「一度で終わらせようとしない」ことが駆除成功の鉄則です。
グレコマの代わりにおすすめのグランドカバー
グレコマの繁殖力に不安を感じるけれど、地面を緑で覆いたいという方には、より管理がしやすく、かつ魅力的な代替植物がいくつかあります。それぞれの特徴を理解して選ぶことで、将来のトラブルを未然に防ぐことができます。
| 植物名 | 特徴 | 適した環境 |
|---|---|---|
| リシマキア・ヌンムラリア・オーレア | ライムグリーンの葉が美しい。湿り気を好む。 | 日向〜半日陰 |
| クリーピングタイム | 香りが良く、初夏に花が咲く。踏みつけに強い。 | 日向・乾燥気味 |
| アジュガ | 花が豪華で、ランナーの制御が比較的容易。 | 半日陰〜日陰 |
| ユキノシタ | 日本の環境に合い、日陰でも美しく育つ。 | 日陰・湿潤 |
例えば「リシマキア・ヌンムラリア・オーレア」は、明るいライムグリーンの葉が美しく、湿り気を好む点はグレコマに似ていますが、グレコマほど攻撃的な広がりは見せず、手入れもしやすいのが特徴です。
また、乾燥に強く、踏みつけにも耐える「クリーピングタイム」も優秀な候補です。タイムも広がりますが、木質化していくためグレコマのような「どこからでも根付く」といった神出鬼没な増え方はしません。
それぞれの植物には適した環境があるため、庭の日照条件や湿度、そして自分がどれくらいメンテナンスに時間を割けるかを考慮して選ぶことが大切です。「植えてはいけない」と後悔する前に、グレコマ以外の選択肢を検討してみることで、理想の庭づくりへの道がより確かなものになるでしょう。
どの植物を選ぶにせよ、その特性を正しく理解し、人間がコントロールできる範囲で楽しむことが、園芸の醍醐味です。


総括:グレコマの「植えてはいけない」性質を理解し、正しい距離感で付き合おう
この記事のまとめです。
- グレコマはシソ科の多年草で極めて強い繁殖力を持っている
- 節が地面に触れるだけで発根する仕組みが爆発的な広がりの正体である
- 日向から半日陰まで場所を選ばず適応し成長スピードが非常に速い
- 一度庭植えで根付くと土中の細かな根まで取り除くのは困難を極める
- 芝生や他の植物を飲み込み光合成を阻害して枯死させることがある
- 斑入り種は先祖返りするとさらに強靭な緑色の野生株へ戻るリスクがある
- 安全に楽しむための最善策は庭植えを避けて鉢植えやハンギングにすること
- 庭植えにする際は根止めシートを深く埋め込み物理的に隔離すべきである
- 剪定した茎は放置せず乾燥させて燃えるゴミとして処分するのが鉄則である
- 駆除する際は地上部を刈り取った後に移行性除草剤を併用すると効果的である
- 駆除作業は一度で終わらせず数ヶ月かけて再生する芽を叩き続ける必要がある
- 刈り取った残骸が少しでも残るとそこから再生するため清掃を徹底する
- 代わりの植物としてリシマキアやタイムなど管理しやすい種も検討に値する
- グレコマの特性を理解していれば寄せ植えなどの鉢栽培では非常に有用である
- 植栽前にメリットとデメリットを比較し将来の管理コストを予測することが重要








