「ラズベリーを庭に植えたいけど、植えてはいけないって本当?」そんな噂を耳にして、栽培をためらっていませんか。確かに、ラズベリーは地植えにすると後悔することがある植物ですが、その理由と正しい対策を知れば、家庭で美味しい実を楽しむことは十分に可能です。地植えでの注意点や、鉢植えやプランターでの育て方、さらには実がなるまで何年かかるのか、そして花言葉はなぜ怖いと言われるのかまで、ラズベリー栽培に関するあらゆる疑問に答えます。この記事を読めば、植えっぱなしでも後悔しない、賢いラズベリーの育て方がわかります。
- ラズベリーを植えてはいけないと言われる本当の理由
- 地植えで後悔しないための具体的な対策
- 鉢植えやプランターでの上手な育て方
- 初心者でも安心な品種の選び方
ラズベリーを植えてはいけないと言われる理由
- 地植えで後悔する地下茎の繁殖力
- 植えっぱなしにすると庭が大変なことに
- 手入れを妨げる鋭いトゲの存在
- ラズベリーの花言葉はなぜ怖いのか
- 実がなるまで何年かかるのか
地植えで後悔する地下茎の繁殖力
ラズベリーを地植えして後悔する最大の理由は、その驚異的な繁殖力にあります。ラズベリーは「地下茎(ちかけい)」と呼ばれる地下の茎を四方八方に伸ばして増える性質を持っています。これは、竹やミントが増える仕組みと似ています。
植えた場所から離れた、思いもよらない場所から新しい芽(吸枝:きゅうし)が出てくるため、一度地植えにすると完全に除去するのは非常に困難です。
この地下茎は、地表近くを這うように広がるため、隣の家の敷地に侵入してトラブルになったり、庭に植えた他の植物の生育を妨げたりする原因にもなります。知らないうちに庭中がラズベリーに乗っ取られていた、という事態になりかねないのです。
地下茎の厄介な性質
ラズベリーの株は、実を付けた枝が枯れると、地下茎でつながった別の場所から新しい枝を出して世代交代します。つまり、株自体が毎年少しずつ移動していくのです。フェンス沿いに植えたはずが、数年後には庭の真ん中に移動していた、ということも起こり得ます。

植えっぱなしにすると庭が大変なことに
前述の通り、ラズベリーは地下茎でどんどん増えるため、植えっぱなしにしておくと庭の景観を損なうほど茂ってしまいます。ラズベリーの枝は自立する力が弱く、支柱やフェンスに誘引しないと倒れてしまい、見た目も乱雑になります。
繁殖力旺盛な地下茎から次々と新しい枝が生え、古い枯れ枝と新しい枝が混在し、手入れの行き届かない鬱蒼とした茂みができてしまうのです。こうなると、風通しが悪くなって病害虫の温床になるリスクも高まります。
また、1株植えただけでも、数年後には直径2m以上の範囲に広がることも珍しくありません。限られたスペースの庭では、他の植物を植える場所がなくなってしまうでしょう。このように、植えっぱなしにすることで管理の手間が飛躍的に増大し、美しい庭を維持することが難しくなるのです。
手入れを妨げる鋭いトゲの存在
ラズベリーが植えてはいけないと言われるもう一つの大きな理由が、枝にびっしりと付いた鋭いトゲです。ラズベリーはバラ科の植物なので、多くの品種に細かいながらも硬く鋭いトゲがあります。
このトゲは、剪定や収穫、誘引といった手入れの際に非常に厄介です。少し油断しただけで衣服に引っかかったり、肌を傷つけたりします。特に、茂みの内側に入り組んだ枝を処理する際には、怪我をするリスクが高まります。
小さなお子様やペットがいるご家庭は特に注意
ラズベリーのトゲは、子供やペットにとって危険です。好奇心で茂みに近づいて、顔や目に怪我をしてしまう可能性も考えられます。人通りの多い場所や、子供の遊び場の近くに植えるのは避けるべきでしょう。
手入れの際には、厚手の革手袋(バラ用グローブなど)が必須となりますが、それでも完全に防ぐのは難しい場合があります。このトゲの存在が、ラズベリーの手入れを億劫にさせ、結果的に放置されて庭が荒れる原因の一つにもなっています。
ラズベリーの花言葉はなぜ怖いのか
ラズベリーには「愛情」「謙遜」といったポジティブな花言葉がある一方で、「深い後悔」という少し怖い花言葉も存在します。この「深い後悔」という花言葉は、まさにこれまで解説してきたラズベリーの性質に由来しています。
可愛らしい見た目と甘酸っぱい実に惹かれて安易に手を出すと、鋭いトゲで痛い思いをすることから、「後悔」という言葉が連想されたと言われています。また、その強すぎる繁殖力を知らずに庭に植えてしまい、後から管理の大変さに気づいて「後悔」するという意味も込められていると考えられます。
花言葉の由来
- 愛情:甘酸っぱい実が、恋愛の感情を連想させるため。
- 謙遜:葉の陰に隠れるように、ひっそりと可憐な花を咲かせる姿から。
- 深い後悔:鋭いトゲと、手に負えないほどの繁殖力から。
このように、花言葉は植物の見た目だけでなく、その性質や特徴を反映していることが多いのです。「深い後悔」という花言葉は、ラズベリーを育てる上での注意点を昔の人々が伝えてきた、ある種の警告と捉えることもできるでしょう。
実がなるまで何年かかるのか
「ラズベリーを植えても、実がなるまで何年もかかるのでは?」と心配する方もいるかもしれません。しかし、ラズベリーは比較的早く収穫を楽しめる果樹です。
ラズベリーには、収穫期が異なる「一季なり性」と「二季なり性」の2つのタイプがあり、それぞれ実がなるまでの期間が異なります。
- 一季なり性品種:春に植え付けた場合、その年に伸びた枝に翌年の夏(6月~7月頃)に実がつきます。つまり、植え付けから約1年で収穫が始まります。
- 二季なり性品種:春に植え付けた場合、その年の秋(10月~11月頃)に最初の収穫が可能です。さらに、その枝は翌年の夏(6月~7月頃)にも実をつけます。つまり、植え付けたその年から収穫できる可能性があります。
このように、ラズベリーは植え付けから収穫までの期間が短いのが魅力です。ただし、これはあくまで苗から育てた場合の話です。種から育てると、実がなるまでにはさらに数年かかることが一般的です。市販の苗木から始めるのが、最も早く収穫に至る確実な方法と言えるでしょう。



「ラズベリーを植えてはいけない」と言われても対策できる
- 地植えする際の注意点と根止め
- 鉢植えでコンパクトに育てる方法
- プランターでの育て方のポイント
- トゲなしや矮性品種を選ぶ
- 定期的な剪定で繁殖を抑制する
- まとめ:ラズベリーを植えてはいけないか再考
地植えする際の注意点と根止め
これまで解説してきたように、ラズベリーの地植えにはリスクが伴いますが、適切な対策を講じれば不可能ではありません。最も重要な対策は、地下茎の広がりを物理的に制限することです。
そのために有効なのが「根止め(ねどめ)」や「ルートストッパー」と呼ばれる資材の設置です。これは、硬いプラスチックや波板などの板を土の中に埋め込み、地下茎がそれ以上広がるのを防ぐ壁を作る方法です。
根止めの設置方法
- ラズベリーを植えたい範囲を決め、その周囲を深さ40~50cmほど掘ります。
- 掘った溝に、根止め用の板を垂直に埋め込みます。このとき、板の継ぎ目に隙間ができないようにしっかりと重ね合わせることが重要です。
- 板の上部が、地上に5cmほど出るように設置すると、地下茎が板を乗り越えて広がるのを防ぎやすくなります。
- 板で囲んだ内側に、腐葉土や堆肥を混ぜた土を戻し、ラズベリーの苗を植え付けます。
根止め設置のポイント
根止めは、ラズベリーの地下茎が広がる深さよりも深く埋める必要があります。最低でも40cm以上の深さが推奨されます。また、安価な波板などを使用することも可能ですが、土圧で変形しにくい、専用の頑丈な製品を選ぶとより安心です。
このような対策を施すことで、地植えでもラズベリーの繁殖範囲をコントロールし、管理しやすくすることができます。ただし、完全に防げるわけではないため、定期的に囲いの外に芽が出ていないかチェックする習慣も大切です。
鉢植えでコンパクトに育てる方法
ラズベリーの繁殖力を最も確実にコントロールできるのが、鉢植えやプランターでの栽培です。鉢という限られたスペースで育てることで、地下茎が無限に広がるのを防ぎ、コンパクトな樹形を維持できます。
鉢植え栽培は、ベランダなどの省スペースでも楽しむことができ、移動も可能なため日当たりや風通しの良い場所に動かせるというメリットもあります。
鉢植え栽培の基本
- 鉢のサイズ:苗木を植える際は、まず6号~8号(直径18~24cm)程度の鉢から始めます。最初から大きすぎる鉢に植えると、土が乾きにくく根腐れの原因になることがあります。株の成長に合わせて、2~3年に一度、一回り大きな鉢に植え替えていきましょう。最終的には10号(直径30cm)以上の大きな鉢が理想です。
- 用土:市販の果樹用培養土や野菜用培養土を使えば手軽です。自分で配合する場合は、赤玉土(小粒)6:腐葉土3:川砂1などの水はけの良い配合がおすすめです。
- 支柱:鉢植えでも枝は自立しにくいため、あんどん支柱などを立てて誘引してあげると、形がまとまり管理しやすくなります。
鉢植えでも油断は禁物!
鉢植えで育てていても、鉢の底穴から地下茎が伸び出し、地面に根付いてしまうことがあります。これを防ぐため、鉢を直接地面に置かず、レンガやブロック、すのこの上に置くなどの対策を必ず行いましょう。
鉢植えは、地植えに比べて水やりや肥料の管理がシビアになりますが、それさえ気をつければ、ラズベリーの厄介な性質に悩まされることなく、手軽に栽培を楽しむことができます。
プランターでの育て方のポイント
プランターでの栽培も、鉢植えと同様にラズベリーの繁殖を抑えるのに非常に有効な方法です。基本的な育て方は鉢植えと共通していますが、プランターならではのポイントがいくつかあります。
プランターは鉢よりも土の量が多く入るため、複数の株を植えたり、より大きく育てたりすることが可能です。深さが30cm以上ある、大型の野菜用プランターを選ぶと良いでしょう。
プランター栽培のポイント
- 水はけを良くする:プランターの底には、鉢底石を多めに敷き、水はけを確保することが重要です。土が常に湿った状態だと根腐れを起こしやすくなります。
- 土の乾燥に注意:プランターは鉢植えよりも土の表面積が広く、乾燥しやすい傾向があります。特に夏場は水切れに注意し、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えましょう。朝夕の2回水やりが必要になることもあります。
- 植え替え:プランターでも数年経つと土が古くなり、根詰まりを起こします。2~3年に一度は、古い土を半分ほど入れ替え、新しい土を追加して植え直す作業が必要です。
- 支柱の工夫:プランターの形状に合わせて、ネットを張ったり、複数の支柱を立てて垣根のように仕立てたりと、誘引方法を工夫する楽しみもあります。



プランター栽培は、地植えのリスクを回避しつつ、家庭菜園として本格的にラズベリー栽培を楽しみたい方におすすめの方法です。
トゲなしや矮性品種を選ぶ
ラズベリー栽培のハードルとなっている「トゲ」と「大きさ」の問題は、品種選びによって解決できます。近年では、品種改良が進み、手入れがしやすい様々な特徴を持ったラズベリーが登場しています。
トゲなし品種
名前の通り、枝にトゲが全くないか、あってもごくわずかで気にならない品種です。剪定や収穫の際に怪我をする心配がなく、小さなお子様がいる家庭でも安心して育てられます。
- グレンモイ:代表的なトゲなし品種。風味も良く、育てやすいと人気です。
- グレンアンプル:こちらもトゲなしで、大粒の実が特徴です。
矮性(わいせい)品種
矮性品種は、樹高が1m程度とコンパクトに育つため、鉢植えやプランターでの栽培に特に向いています。通常の品種ほど大きく広がらないため、管理が非常に楽です。ベランダなどの限られたスペースでも栽培しやすいのが魅力です。
品種選びで栽培はもっと楽しくなる
これらの品種を選ぶことで、「トゲが痛い」「大きくなりすぎて困る」といった、ラズベリー栽培でよくある悩みの多くを解消できます。園芸店やオンラインショップで苗を探す際には、ぜひ品種名や特徴をチェックしてみてください。「トゲなし」「コンパクト」といったキーワードで探すと見つけやすいでしょう。
自分の栽培環境や、どれくらい手入れに時間をかけられるかを考えて品種を選ぶことが、ラズベリー栽培を成功させるための重要な第一歩です。
定期的な剪定で繁殖を抑制する
たとえ鉢植えや根止めで対策をしても、ラズベリーを健康に育て、美味しい実をたくさん収穫するためには定期的な剪定(せんてい)が不可欠です。剪定には、不要な枝を取り除いて風通しを良くし、病害虫を防ぐ目的と、株の勢いをコントロールして繁殖を抑制する目的があります。
ラズベリーの剪定は、主に葉が落ちた冬(12月~2月)に行います。剪定の基本は、その年に実を付けて枯れた枝を根元から切り取ることです。
剪定の基本ルール
- 収穫後の枯れ枝を切る:夏に収穫が終わった枝(結果母枝)は、その年の冬までに自然と枯れていきます。これらの茶色く枯れた枝は、病気の原因にもなるため、地際から切り取ります。
- 込み合った枝を間引く:新しく伸びた元気な枝(シュート)が多すぎると、風通しや日当たりが悪くなります。細すぎる枝や、内側に向かって伸びている枝などを間引き、1株あたり5~6本の太く充実した枝を残すようにします。
- 不要な吸枝を取り除く:株元や、意図しない場所から生えてくる新しい芽(吸枝)は、見つけ次第、根元から抜き取るか切り取ります。これを放置すると、どんどん株が広がってしまいます。



適切な剪定は、ラズベリーの暴走を抑えるだけでなく、残した枝に栄養を集中させて、翌年の実付きを良くする効果もあります。美味しいラズベリーを収穫するためにも、剪定は欠かせない大切な作業なのです。
まとめ:ラズベリーを植えてはいけないか再考
- ラズベリーを植えてはいけないと言われる主な理由は強すぎる繁殖力にある
- 地下茎を伸ばして広がるため地植えは計画的に行う必要がある
- 植えっぱなしにすると庭がラズベリーに占領される可能性がある
- 多くの品種には鋭いトゲがあり手入れの際に怪我をしやすい
- 「深い後悔」という花言葉はトゲや繁殖力に由来する
- 苗から育てれば1年から2年で実がなり収穫までの期間は短い
- 地植えする場合は根止め(ルートストッパー)で地下茎の広がりを防ぐ対策が必須
- 鉢植えやプランターで育てれば繁殖力を確実にコントロールできる
- 鉢植えは底穴から根が伸びないよう地面に直接置かない工夫が必要
- 品種選びが重要でトゲなし品種やコンパクトに育つ矮性品種がおすすめ
- 定期的な剪定は繁殖を抑制し病害虫を防ぐために不可欠
- 剪定の基本は収穫後に枯れた枝と込み合った枝を取り除くこと
- 不要な場所から生える吸枝は早めに抜き取る
- 適切な対策と管理を行えばラズベリーは家庭で十分に楽しめる果樹である
- 植える前にデメリットと対策を理解することが後悔しないための鍵となる