夏の強い日差しにも負けず、色鮮やかな花を次々と咲かせてくれるマツバボタン。その健気な姿を来年も見たいと考え、「マツバボタンの冬越し」について調べている方も多いのではないでしょうか。実はこの植物、本来は多年草ですが、寒さに非常に弱いため、日本の多くの地域では一年草として扱われています。この記事では、冬越しが難しいとされるマツバボタンについて、花が終わったらどうすれば良いのか、また株を放置するとどうなるのか、といった基本的な疑問にお答えします。さらに、茎が伸びすぎた際の対処法から、こぼれ種や直播きで翌年も花を楽しむ方法、最適な種まきの時期、そして種が発芽しないときの対策まで、あなたが知りたい情報を網羅的に解説します。この記事を読めば、冬越し以外の方法で、来年もマツバボタンの美しい花を咲かせる知識がきっと身につくはずです。
- マツバボタンの基本的な性質と冬越しの難易度
- 花がら摘みや摘心など日々の手入れ方法
- こぼれ種や種の採取による確実な増やし方
- 種まきの最適な時期と発芽させるコツ
マツバボタンの冬越しは基本的に難しい
- マツバボタンは本来多年草なのか
- 日当たりと水はけの良い土を用意する
- 茎が伸びすぎたと感じたら摘心
- 花が終わったらこまめな花がら摘み
- 花がらを放置するとどうなる?
マツバボタンは本来多年草なのか

マツバボタン・イメージ
マツバボタンは、分類上は多年草に属しますが、日本のガーデニングにおいては一年草として扱われるのが一般的です。なぜなら、原産地がブラジルなどの暖かい地域であり、寒さに非常に弱い性質を持っているためです。
具体的には、生育に適した温度は20℃から30℃とされ、耐寒温度の目安は約7℃までと言われています。これを下回る環境では株が枯れてしまう可能性が高く、霜が降りるような状況では屋外での冬越しはまず不可能です。
ただ、一部には耐寒性がやや強い園芸品種も存在します。例えば「ジュエル」という品種は、軽い霜程度なら耐えることがあるとされています。しかし、これも暖地での話であり、多くの地域では冬越しをさせずに、毎年新しい苗を植えるか、種から育てるのが確実な方法と言えるでしょう。
- 植物学的には多年草
- 寒さに弱いため、日本では一年草扱いが基本
- 屋外での冬越しは非常に難しい
日当たりと水はけの良い土を用意する

マツバボタン・イメージ
マツバボタンを元気に育てるためには、日当たりと水はけの良い環境を整えることが最も重要です。「日照り草(ヒデリソウ)」という別名があるほど、マツバボタンは日光を好む植物。日照時間が不足すると、花つきが悪くなったり、茎が弱々しく育ってしまいます。
また、多肉質の葉を持つマツバボタンは乾燥に強い一方で、過湿な環境を極端に嫌います。水はけの悪い土壌では根が腐る「根腐れ」を起こしやすいため、土作りには特に注意が必要です。
地植えの場合
庭に直接植える際は、水はけが悪い場所であれば腐葉土や川砂を混ぜ込み、土壌を改良しましょう。雨水が溜まらないよう、地面を15cmほど高くして畝(うね)を作る「高植え」にするのも非常に効果的です。
鉢植えの場合
鉢植えで育てる場合は、市販の草花用培養土に鹿沼土や軽石を2〜3割ほど混ぜて、水はけを良くする工夫をしましょう。鉢底にゴロ石(鉢底石)を多めに入れることも、根腐れ防止に繋がります。

茎が伸びすぎたと感じたら摘心


マツバボタン・イメージ
マツバボタンを育てていると、特に梅雨明けから夏にかけて茎がぐんぐん伸びて、株全体の形が乱れてしまうことがあります。このように茎が伸びすぎてしまった場合は、「摘心(てきしん)」という作業を行うのがおすすめです。
摘心とは、伸びた茎の先端を摘み取ることで、植物の脇芽の成長を促す手入れのこと。これを行うことで、株がこんもりと茂り、結果的に花数も増えるという大きなメリットがあります。
- 時期:7月中旬から下旬頃が最適です。
- 方法:伸びすぎた茎の先端部分を、清潔なハサミや指でカットします。
- 効果:脇から新しい芽が伸びてきて枝数が増え、株全体のボリュームがアップし、たくさんの花が楽しめます。
特に肥料の与えすぎ、中でもチッ素成分が多い肥料を与えると、葉や茎ばかりが茂り(これを「蔓ボケ」や「葉ボケ」と言います)、花つきが悪くなることがあります。摘心は、そういった場合の株姿を整えるのにも役立ちます。
花が終わったらこまめな花がら摘み


マツバボタン・イメージ
マツバボタンの花を長く、そしてたくさん楽しむためには、花が終わったら「花がら摘み」をこまめに行うことが大切です。マツバボタンの花は一日花で、朝咲いて夕方にはしぼんでしまいますが、次から次へと新しいつぼみが開花します。
この咲き終わった花(花がら)をそのままにしておくと、植物は種を作るためにエネルギーを使い始めます。すると、次々と花を咲かせるための体力が奪われ、花数が減ったり、株そのものが弱ってしまう原因になるのです。
また、衛生的な観点からも花がら摘みは重要です。特に長雨が続く時期は、しぼんだ花がらにカビが生え、「灰色かび病(ボトリチス病)」などの病気を引き起こすことがあります。病気の予防のためにも、咲き終わった花は早めに取り除きましょう。



花がらを放置するとどうなる?


マツバボタン・イメージ
前述の通り、咲き終わった花がらを放置するとどうなるのか、もう少し詳しく見ていきましょう。主なデメリットは以下の3つです。
- 花つきが悪くなる
最も大きなデメリットは、株のエネルギーが種の生成に集中してしまうことです。植物は子孫を残すために種を作ろうとしますが、その分、新しい花を咲かせるためのエネルギーが不足します。結果として、シーズン後半の花数が明らかに少なくなってしまいます。 - 株が弱りやすくなる
エネルギーを消耗することで、株全体の勢いが衰えます。株が弱ると、病気に対する抵抗力も低下し、健康な状態を維持するのが難しくなります。 - 病気の発生源になる
しぼんで湿った花がらは、カビ菌の温床になりやすいです。特に梅雨時や秋の長雨の時期は、灰色かび病が発生しやすくなります。この病気は葉や茎にも広がるため、注意が必要です。
もちろん、来年のために種を採取したい場合は、花が終わっても花がらを摘まずにそのままにしておく必要があります。花がらが完全に枯れて茶色くなると、その根元に小さな果実ができ、中に種が入っています。目的によって花がら摘みを行うかどうかを判断しましょう。
マツバボタンの冬越しより確実な種の育て方
- こぼれ種でも翌年咲く可能性がある
- 最適な種まきの時期と温度管理
- 直播きで栽培する場合のコツ
- 種が発芽しない時の見直し点
こぼれ種でも翌年咲く可能性がある


マツバボタン・イメージ
マツバボタンは非常に生命力が強く、環境が合えば「こぼれ種」からでも翌年自然に芽を出すことがあります。こぼれ種とは、花が終わった後にできた種が自然に地面に落ち、次の年に発芽することです。
花がら摘みをせずにおくと、たくさんの種が地面に落ちるため、何もしなくても春になると庭のあちこちから可愛らしい芽が出てくる、という楽しみがあります。これは、ガーデニングの手間を省きたい方にとっては大きなメリットと言えるでしょう。
ただし、こぼれ種には注意点もあります。市販されているマツバボタンの多くは、異なる性質の親を掛け合わせて作られた「F1(一代交配種)」です。F1品種から採れた種(こぼれ種も含む)は、親と全く同じ色や形の花が咲くとは限らず、元の親の性質に戻ってしまうことがあります。お気に入りの花色を確実に翌年も楽しみたい場合は、こぼれ種に頼るのではなく、毎年新しい種や苗を購入するのが最も確実です。
- メリット:手間をかけずに自然に増える可能性がある。
- デメリット:親と違う花が咲くことがある。発芽するかどうかは環境次第で不確実。
最適な種まきの時期と温度管理
マツバボタンを種から確実に育てるためには、種まきの時期と温度管理が非常に重要です。マツバボタンの種が発芽するためには、地温が20℃〜25℃程度必要になります。
このため、種まきの適期は、4月中旬から6月頃。遅霜の心配がなくなった、十分に暖かい季節になってから行いましょう。気温が低い時期にまいても、なかなか発芽しないので注意が必要です。
項目 | ポイント | 詳細・理由 |
---|---|---|
種まき時期 | 4月中旬〜6月 | 安定して気温が20℃を超える時期が目安です。暖地では5〜6月まきでも夏から秋の開花が楽しめます。 |
発芽適温 | 20℃〜25℃ | この温度を保てないと発芽率が著しく低下します。寒い時期は室内での管理やビニールトンネルの利用も有効です。 |
種の性質 | 好光性種子 | 発芽に光を必要とする性質です。そのため、種をまいた後に土をかぶせる「覆土」はしません。 |
種をまいた後は、発芽するまで土が乾かないように管理しますが、水の勢いで種が流れてしまわないよう、霧吹きを使ったり、鉢底から水を吸わせる「底面給水」で水やりをするのがおすすめです。
直播きで栽培する場合のコツ


マツバボタン・イメージ
マツバボタンは移植を嫌わないためポットで育苗することも可能ですが、花壇やプランターに直接種をまく「直播き」でも手軽に育てることができます。直播きを成功させるためのいくつかのコツをご紹介します。
1. 土をならして湿らせておく
まず、種をまく場所の土を平らにならし、あらかじめ霧吹きやジョウロで優しく湿らせておきます。こうすることで、種が土に密着しやすくなります。
2. 細かい砂と混ぜてまく
マツバボタンの種は非常に細かく、そのまままくと一箇所に固まってしまったり、風で飛んでしまったりします。そこで、種の3〜4倍量の乾いた細かい砂とよく混ぜてからまくと、均一にばらまきやすくなり、おすすめです。
3. 覆土はせず、軽く押さえる
前述の通り、マツバボタンは発芽に光が必要な「好光性種子」です。そのため、種をまいた後に土をかぶせる必要はありません。種をまいたら、土と種を密着させるために、手のひらや板などで上から軽く押さえてあげましょう。これを「鎮圧」と言います。



種が発芽しない時の見直し点


マツバボタン・イメージ
「適切な時期に種をまいたはずなのに、なかなか芽が出ない…」マツバボタンの種が発芽しない場合、いくつかの原因が考えられます。もし発芽しない場合は、以下の点を見直してみてください。
1. 温度が低い
最も多い原因は温度不足です。特に春先に早くまきすぎると、夜間の気温が下がり、地温が20℃に達していないことがあります。天気予報を確認し、最低気温が15℃を下回らないような時期にまくのが安全です。
2. 土をかぶせてしまった
好光性種子であるマツバボタンの種に、誤って土を厚くかぶせてしまうと、光が届かずに発芽できません。覆土はしないか、するとしてもごくごく薄く、種が見え隠れする程度に留めましょう。
3. 水やりで種が流れてしまった
細かい種は、ジョウロなどで勢いよく水やりをすると、流れて一箇所に固まったり、土の深くに潜ってしまったりすることがあります。発芽するまでは霧吹きや底面給水で優しく水やりをすることが大切です。
4. 種が古い
種には寿命があります。前年に採った種や、購入してから時間が経った種は、発芽率が低下している可能性があります。新しい種を使用するのが最も確実です。
無事に発芽した後は、日当たりの良い場所で管理し、水のやりすぎに注意して育てましょう。多湿の状態が続くと、苗がひょろひょろと弱々しく育つ「徒長(とちょう)」の原因になります。
まとめ:マツバボタンの冬越しと育て方のコツ
この記事では、マツバボタンの冬越しの難しさと、種で翌年も楽しむための育て方について解説しました。最後に、記事全体の要点をリストでまとめます。
- マツバボタンは本来多年草だが日本では一年草扱い
- 耐寒性が低く屋外での冬越しは基本的に難しい
- 一部の耐寒性品種を除き7℃が生育限界の目安
- 日当たりと風通し、水はけの良い環境が最も重要
- 地植えでは高植え、鉢植えでは水はけの良い用土を工夫する
- 水のやりすぎは根腐れの原因になるため乾燥気味に管理
- 茎が伸びすぎたら7月中旬〜下旬に摘心を行う
- 摘心すると分枝が促され花数が増える
- 花が終わったらこまめに花がらを摘み株の消耗を防ぐ
- 花がらを放置すると花つきが悪くなり病気の原因にもなる
- こぼれ種で自然に増えることもあるが親と同じ花は咲かない場合がある
- 確実に増やすなら種の採取か新しい種や苗の購入がおすすめ
- 種まきの適期は気温が20℃以上になる4月中旬から6月
- 発芽に光が必要な好光性種子なので覆土はしない
- 細かい種は砂と混ぜると均一にまきやすい