
シルバーリーフが美しく、庭木や切り花として絶大な人気を誇るユーカリですが、「冬になると急に葉が枯れてしまった」という悩みを抱える方は非常に多いです。オーストラリア原産のユーカリは、種類によって耐寒性が大きく異なり、日本の厳しい冬を乗り切るには適切な知識と準備が不可欠です。
2025年現在、気候変動による急激な寒暖差も植物への大きなストレスとなっています。この記事では、園芸の専門的な視点から、ユーカリの冬越しを成功させるための具体的なテクニックを詳しくご紹介します。
品種ごとの耐寒温度の目安から、最新の防寒グッズの活用法、そして万が一枯れかけた時のリカバリー方法まで、大切なユーカリを春まで守り抜くためのノウハウをすべて解説します。
この記事のポイント

- 品種ごとの正確な耐寒温度(限界温度)を知り、適切な環境で管理する
- 冬の枯死の主因である「生理的乾燥」と「寒風」への対策を徹底する
- 鉢植えと地植えで異なる具体的な防寒テクニック(二重鉢やマルチング)を実践する
- 幼苗期の脆弱性を理解し、成長段階に合わせた保護(不織布など)を行う
ユーカリの冬越しの基本と寒さに強い品種の選び方
- ユーカリが冬の寒さに耐えられる限界温度
- 耐寒性に優れた冬越ししやすいおすすめ品種
- 冬のユーカリが枯れる主な原因と対策
- 苗のサイズが冬越しの成功率に与える影響
- 地域ごとの寒冷地対策と環境作りのコツ
- 冬越し前に済ませておきたい剪定と準備作業
ユーカリが冬の寒さに耐えられる限界温度
ユーカリの冬越しにおいて、最も重要なのは「その品種が何℃まで耐えられるか」を正確に把握することです。ユーカリは世界に800種以上存在し、熱帯由来のものから高山帯に自生するものまで様々です。
一般的に、成木であればマイナス5℃からマイナス10℃程度まで耐えるものが多いですが、これはあくまで「一時的な最低気温」に対する耐性です。連日のように氷点下が続く場合や、霜が直接当たる環境では、公表されている耐寒温度よりも高い気温でダメージを受けることがあります。
特に注意が必要なのは、最高気温が上がらない「真冬日」の継続です。ユーカリは日光を好むため、日中の気温が上がらないと体力を消耗します。また、耐寒温度の目安は「健康な成木」を基準としているため、植え付けたばかりの苗や、病害虫で弱っている株は、プラスの気温であっても深刻なダメージを受けるリスクがあります。
| 品種名 | 耐寒温度(目安) | 特徴 |
|---|---|---|
| グニー | -15℃ | 最も寒さに強く、初心者向け |
| ポポラス | -6℃~-8℃ | 人気だがグニーよりは寒さに弱い |
| レモンユーカリ | 5℃以上 | 寒さに非常に弱く、室内管理必須 |
| シルバーロップ | -10℃ | 銀葉が美しく、比較的丈夫 |

耐寒性に優れた冬越ししやすいおすすめ品種
日本の冬、特に寒冷地以外で地植えに挑戦するなら「ユーカリ・グニー」が圧倒的におすすめです。タスマニアの高地原産であるグニーは、成木になればマイナス15℃近くまで耐えると言われ、関東以北の寒冷地でも冬越しが可能です。
そのシルバーブルーの小葉は冬の庭でも美しく映えます。次に人気なのは「ポポラス」ですが、こちらはマイナス6℃を下回ると葉が赤く変色(紅葉)し始め、霜に当たると葉先から枯れ込むことがあります。
また、最近注目されているのは「スノーガム」と呼ばれる系統です。これらは自生地でも雪に覆われる環境にあるため、雪に対する耐性が非常に高いのが特徴です。一方、人気の「レモンユーカリ」は熱帯性のため、12月の声を聞く頃には室内の暖かい場所へ移動させなければなりません。
品種選びを間違えると、どんなに防寒対策をしても枯れてしまうため、自分の住んでいる地域の最低気温と、購入する品種のスペックを必ず照らし合わせましょう。
冬のユーカリが枯れる主な原因と対策

冬にユーカリが枯れる最大の原因は、実は寒さそのものよりも「生理的乾燥」にあります。冬の日本、特に太平洋側では空気が極端に乾燥し、冷たい北風(寒風)が吹き付けます。
ユーカリは常緑樹のため、冬でも葉から水分を蒸散させていますが、気温が低くなると根の活動が鈍り、水を吸い上げる力が極端に落ちます。この「吸水<蒸散」のアンバランスによって、細胞内の水分が不足し、葉がパリパリに乾いて枯死するのです。

この生理的乾燥を防ぐためには、風対策が不可欠です。 鉢植えであれば、風が直接当たらない建物の南側の壁際へ移動させるのが最も効果的です。地植えの場合は、防風ネットを張るか、後述する不織布で株を包むことで、冷たい風による過度な蒸散を抑えることができます。「冬だから水やりは控えめに」という格言を鵜呑みにしすぎて、完全に断水してしまうのも危険です。土が芯まで乾ききらないよう、適切な水分管理が求められます。
冬の乾燥による「水切れ」の見落としに注意!
- 葉が丸まってきたら水分不足のサインです。
- 晴天が続く冬の日は、空気中だけでなく土中の水分も急激に奪われます。
- 「寒いから枯れた」のではなく「乾いて枯れた」ケースが非常に多いです。
苗のサイズが冬越しの成功率に与える影響

ユーカリの冬越しにおいて「サイズは正義」です。園芸店でよく見かける3号〜4号ポット(高さ30cm程度)の幼苗は、幹がまだ緑色で柔らかく、樹皮が十分に発達していません。
この状態の苗は寒さのダメージをダイレクトに受けやすく、カタログ上の耐寒温度がマイナス10℃であっても、0℃付近で枯れてしまうことが多々あります。幹が茶色く木質化(もくしつか)し、親指ほどの太さになるまでは、本来の耐寒性は発揮されないと考えてください。
そのため、購入して1年目の冬は、地植えを避けて鉢植えで管理することを強くおすすめします。鉢植えであれば、寒波が来る夜だけ玄関に入れるなどの柔軟な対応が可能です。地植えにする場合は、少なくとも1〜2年は鉢で育てて体力をつけ、春の暖かい時期に植え付けるのがセオリーです。
「小さな苗を冬の庭にいきなり植えるのは、赤裸で雪原に放り出すようなもの」と心得て、成長段階に合わせた保護を行いましょう。
地域ごとの寒冷地対策と環境作りのコツ
日本国内でも、北海道・東北・北陸などの寒冷地と、関東以南の暖地では対策のレベルが異なります。寒冷地では、耐寒性の強いグニーであっても、積雪による枝折れや、凍結による根のダメージが深刻です。
雪に埋もれると意外にも温度は0℃付近で安定しますが、雪の重みは想像以上です。あらかじめ支柱を3本立てて「雪囲い」を作り、株が押し潰されないように工夫してください。
一方、関東以南の暖地では「放射冷却」への対策がメインとなります。日中は暖かいのに夜間に急激に冷え込む環境は、植物にとって非常に過酷です。鉢植えをコンクリートの上に直置きすると、底冷えで根が凍結するため、スタンドやレンガの上に置いて隙間を作るだけで生存率が上がります。
また、ベランダ栽培の場合は、室外機の風が直接当たらないよう配置に注意してください。室外機の乾燥した温風・冷風は、ユーカリにとって致命的な乾燥ダメージとなります。
冬越し前に済ませておきたい剪定と準備作業
冬本番を迎える前の11月頃、やっておくべき重要な準備がいくつかあります。まず、剪定については「強剪定」を避けることが鉄則です。冬直前に強く切り戻すと、ユーカリは生き残ろうとして新しい芽を吹かせることがあります。
しかし、この時期に出る新芽は非常に柔らかく、最初の霜で確実に枯れてしまいます。また、新しい芽を作るために親株のエネルギーを消費してしまうため、冬越しの体力が奪われます。
枝が伸びすぎて邪魔な場合は、先端を軽く整える程度に留めましょう。
次に、秋の終わりに与える「カリ肥料」が有効です。窒素分の多い肥料は成長を促してしまいますが、カリ(加里)は細胞壁を強くし、植物の耐寒性を高める効果があります。微粉ハイポネックスなどのカリ分が高い肥料を、11月中に1〜2回与えておくと「冬に強い株」を作ることができます。
ELユーカリの冬越しを成功させる具体的な管理方法
- 冬のユーカリの水やりと適切なタイミング
- 鉢植えユーカリの防寒対策と置き場所の工夫
- 地植えユーカリの根元を守るマルチング技術
- 寒冷紗や不織布を使った物理的な防寒方法
- 冬の肥料管理と春に向けた芽吹きの準備
- 万が一枯れかけた時の復活方法と判断基準
冬のユーカリの水やりと適切なタイミング
冬の水やりは「いつ、どのように与えるか」が生存の分かれ目となります。冬のユーカリは成長が緩慢になるため、吸水量は減りますが、完全な休眠はしません。水やりのタイミングは、土の表面が完全に乾き、さらに鉢を持って軽く感じるようになってから数日後が目安です。
指を第2関節まで土に差し込み、湿り気を感じないことを確認してください。
与える時間は、必ず「晴れた日の午前中(9時〜11時頃)」に限定します。午後に水を与えると、夜までに土の中の水分が引ききらず、夜間の冷え込みで鉢の中の水分が凍結する恐れがあるからです。
凍結は根の細胞を破壊し、致命傷を与えます。また、与える水の温度も重要です。氷のように冷たい水道水をそのままかけるのではなく、汲み置きして室温に戻したものか、少しぬるま湯を混ぜて15℃〜20℃程度に調整した水を与えると、根へのショックを和らげることができます。
鉢植えユーカリの防寒対策と置き場所の工夫
鉢植えの場合、最も脆弱なのは「鉢の中の根」です。土の量が限られているため、外気温の影響をダイレクトに受け、根が凍結しやすいという弱点があります。これを防ぐための最新のテクニックが「二重鉢」や「鉢のラッピング」です。
二重鉢とは、育てている鉢を一回り大きな鉢に入れ、その隙間に発泡スチロールの破片やウッドチップ、緩衝材(プチプチ)などを詰める方法です。これにより、根部に空気の断熱層ができ、地温の低下を劇的に防ぐことができます。
ラッピングを行う場合は、鉢の周りに厚手のアルミ断熱シートや麻布を二重に巻き付けましょう。見た目も園芸的でおしゃれに仕上がります。置き場所については、日当たりの良い南向きの軒下が最適ですが、夜間だけは段ボールを被せたり、簡易温室に入れたりするだけでも効果があります。
ただし、ビニール温室は日中の温度上昇が激しいため、日中は必ず換気を行い、蒸れを防ぐようにしてください。
冬の鉢植え置き場所チェックリスト
- 北風が直接当たらない場所か?
- コンクリートの上に直置きしていないか?(スタンド等を使用)
- 1日3時間以上の日照が確保できるか?
- 夜間の放射冷却を避けられる屋根があるか?
地植えユーカリの根元を守るマルチング技術


地植えのユーカリにとって、マルチングは「防寒の要」です。マルチングとは土の表面を覆うことですが、冬場は5cm〜10cmほどの厚みを持たせてしっかりと行います。おすすめの素材はバークチップ、腐葉土、わら、そして最近人気のヤシガラ(ベラボン)などです。
これらを株元を中心に半径50cm程度の範囲に敷き詰めます。
マルチングの効果は絶大です。まず、地温の急激な低下を防ぎ、霜柱が立つのを抑制します。霜柱は土を持ち上げる際、ユーカリの細い根を引きちぎってしまうことがありますが、これを防ぐだけで株の安定感が違います。
また、地表からの水分の蒸散を抑え、冬の天敵である「乾燥」から守ってくれます。春になり、地温が上がってきたらマルチング材を少し薄く広げて、土の通気性を確保してあげましょう。
寒冷紗や不織布を使った物理的な防寒方法


特に冷え込みが予想される時期や、まだ苗が小さい場合には、不織布や寒冷紗による「被覆(ひふく)」が最も確実な物理的防御になります。不織布は光と空気を通しながらも、冷たい風や霜を遮断し、被覆内の温度を外気より2〜3℃高く保つことができます。
このわずか数度の差が、ユーカリの生死を分けます。
やり方は簡単で、株全体を不織布でふわっと包み、麻紐で軽く縛るだけです。このとき、枝をきつく縛りすぎないのがポイントです。不織布と葉の間に空気の層を作ることで、断熱効果が高まります。
また、支柱を数本立てて「行灯(あんどん)仕立て」のようにし、その上から不織布を被せると、雪の重みからも守ることができます。見た目は少し冬仕様になりますが、12月末から2月末までの2ヶ月間、この対策をするだけで春の芽吹きの勢いが全く変わります。
冬の肥料管理と春に向けた芽吹きの準備
冬の間は、原則として肥料を与えてはいけません。気温が低い時期は根の吸収能力が落ちているため、肥料を与えても吸収されず、土の中に残った肥料成分が濃度障害(肥料焼け)を起こして根を痛めてしまいます。
ユーカリを健康に保つためには「冬は休ませる」ことが何よりの薬です。
しかし、2月下旬から3月上旬、まだ寒さが残るものの春の気配を感じる時期に施す「寒肥(かんごえ)」は非常に重要です。この時期にゆっくりと効く有機質肥料(油かすや骨粉など)を株元に埋めておくと、春の訪れとともに微生物によって分解され、新芽が動く時期にちょうど栄養が供給されます。
このタイミングで栄養がしっかりあると、ユーカリ特有の美しい新葉が勢いよく展開し、冬の間に傷んだ葉をすぐに覆い隠してくれます。
万が一枯れかけた時の復活方法と判断基準
冬を越した後、「葉が全部茶色くなってしまった」と諦めるのはまだ早いです。ユーカリは再生能力が非常に高い植物です。まずは、株が本当に死んでいるのか、それとも生きているのかを確認する「スクラッチテスト」を行いましょう。


幹の表面を爪先やナイフで軽く削ってみてください。削った内部が「鮮やかな緑色」をしていれば、その部分は生きています。逆に茶色く乾いていれば、その部分は死んでいます。
もし上部が枯れていても、地際近くが緑色なら復活のチャンスがあります。春になり暖かくなったら、緑色の部分の少し上で切り戻してください。ユーカリには「リグノチューバ」という地中の貯蔵組織を持つ品種が多く、そこから新しい芽(ヤゴ)が吹き出してくることがよくあります。
5月くらいまでは諦めずに、日当たりの良い場所で適度な水やりを続けて様子を見ましょう。
総括:ユーカリの冬越しをマスターして春に美しいシルバーリーフを楽しもう


この記事のまとめです。
- ユーカリの耐寒性は品種ごとに大きく異なり、特にグニーやシルバーロップが寒さに強い
- 冬の枯死の主因は「生理的乾燥」であり、冷たい北風から守る対策が必須である
- 幼苗は耐寒温度に関わらず寒さに弱いため、鉢植えで過保護に育てるのが無難
- 鉢植えは二重鉢やラッピングで「根の凍結」を防ぐことが冬越しのポイント
- 地植えは厚さ10cm程度のマルチングを行い、地温の低下と乾燥を防止する
- 水やりは「晴天の午前中」に限定し、夜間の凍結リスクを回避する
- 肥料は冬の間は与えず、2月下旬から3月に「寒肥」として施す
- 寒さが厳しい地域では不織布や寒冷紗を活用し、物理的に霜と風を遮断する
- 万が一葉が枯れても、幹の内部が緑色なら春に再生する可能性がある
- 雪対策として、雪の重みで枝が折れないよう支柱や雪囲いを準備する
冬越しの成功は「品種選び」と「最初の2年」で決まる!
- 自分の地域の最低気温に耐えられる品種を選びましょう。
- 幹が太くなるまでは鉢植えで管理し、体力をつけるのが近道です。
- 春になれば、冬の苦労を忘れるほどの美しい新芽を見せてくれますよ。








