
可愛らしい実や鮮やかな黄色い花で私たちを楽しませてくれるヒペリカム。寒さが本格化する12月に入り、葉が赤く色づいたり、落葉し始めたりして「もしかして枯れてしまったのではないか」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
実はヒペリカムは耐寒性が比較的強い植物ですが、日本の冬、特に鉢植えでの管理や寒冷地での越冬には、いくつか押さえておくべき重要なポイントがあります。
この記事では、園芸初心者の方でも迷わずに実践できる、ヒペリカムの正しい冬越し方法を徹底解説します。水やりの頻度や置き場所の選び方といった基本の管理から、来シーズンもたくさんの実をつけるために欠かせない剪定のタイミングまで、プロの視点で詳しくご紹介します。
適切な冬のケアを行うことで、ヒペリカムは春に再び力強い芽吹きを見せてくれますよ。
この記事のポイント
- 鉢植えと地植えでは冬越しの難易度と対策が異なる
- 冬の水やりは「控えめ」が鉄則だが乾燥させすぎにも注意
- 葉が赤く変色したり落葉したりするのは自然な生理現象
- 強剪定は冬の初めではなく春の芽吹き前に行うのが正解
ヒペリカムの冬越し方法と栽培環境の重要ポイント

- 鉢植えと地植えで異なる冬越しの基本管理
- 冬場の水やりは控えめに根腐れを防ぐコツ
- 休眠期の肥料は不要?寒肥の正しいタイミング
- 寒冷地における防寒対策とマルチングの効果
- 葉が茶色や赤に変色するのは枯れたサインか
鉢植えと地植えで異なる冬越しの基本管理
ヒペリカムを無事に冬越しさせるためには、まず栽培環境ごとのリスクを正しく理解することが第一歩です。ヒペリカムは基本的には耐寒性がある植物で、マイナス5度程度までは耐えられる品種が多いですが、根が凍結してしまうと株全体が枯死する原因となります。
特に注意が必要なのは「鉢植え」の場合です。
地植えのヒペリカムは、大地が巨大な断熱材の役割を果たすため、地中深くまで根を張っていれば急激な温度変化にさらされることは稀です。関東以西の平地であれば、特段の防寒対策をしなくても屋外で越冬できるケースがほとんどでしょう。
しかし、鉢植えは環境が全く異なります。鉢の側面が全方向から外気に直接触れているため、土の内部温度が外気温と同じレベルまで急速に下がってしまいます。これにより、夜間に土中の水分がカチカチに凍って根を傷める「凍害」のリスクが格段に高くなるのです。
12月中旬以降、最低気温が0度を下回るような日が続く場合は、鉢植えの置き場所を見直してください。理想的なのは、北風が直接当たらない南向きの軒下です。日中は太陽の光で鉢と株全体を温め、夜間は軒が放射冷却や霜を防ぐ役割を果たします。コンクリートの床に直置きすると底冷えするため、フラワースタンドやレンガの上に乗せて地面から離すのも有効です。
もし、寒冷地にお住まいで屋外管理が厳しい場合は、玄関内や無暖房の明るい室内に取り込むのも一つの手です。ただし、ここで注意したいのが室温です。温かすぎるリビングなどに置くと、植物が冬を感じられずに休眠できず、ひょろひょろと軟弱に育ってしまい、春以降の生育に悪影響を及ぼすことがあります。
室内管理の注意点
- 暖房の風が直接当たる場所は厳禁(乾燥で枯れます)
- 日照不足になると株が弱るため、窓辺の明るい場所を選ぶ
- 夜間の窓辺は冷え込むため、厚手のカーテンや段ボールで冷気を遮断する
地植えの場合は移動ができませんから、植え付け場所が北風の通り道になっていないかを確認し、必要であればコモや寒冷紗で風除けを設置するなどの工夫をしましょう。植物の状態を毎日観察し、「今、寒がっていないか」を感じ取ることが大切です。
冬場の水やりは控えめに根腐れを防ぐコツ
冬の園芸作業において、もっとも失敗が多く、枯死の原因となりやすいのが「水やり」です。ヒペリカムを枯らしてしまう原因の多くは、寒さそのものよりも、冬場の水のやりすぎによる「根腐れ」にあると言っても過言ではありません。
気温が低下し、植物の成長が緩慢になる冬の間、ヒペリカムは水をあまり必要としません。吸水力が極端に落ちている状態で土が常に湿っていると、根が呼吸できずに窒息状態になり、やがて細胞が壊死して腐ってしまいます。
具体的な水やりのタイミングですが、地植えの場合は、基本的には降雨に任せてしまって構いません。よほど雨が降らず、空気が乾燥した日が2週間以上続いた場合に限り、暖かい日の午前中に水を与える程度で十分です。
過保護にする必要はありません。
一方、鉢植えの場合は、土の表面が白く乾いてから、さらに2〜3日待ってから水を与えるくらいのペースでちょうど良いでしょう。「土が乾いたらたっぷりと」という基本は変わりませんが、その頻度を夏場の半分以下に落とすイメージです。そして、水やりを行う「時間帯」も極めて重要です。必ず晴れた日の「午前中(できれば10時から12時頃)」に行ってください。夕方に水やりをしてしまうと、夜間の冷え込みで鉢の中の水分が凍結し、根を傷める原因になります。

| 項目 | 夏の水やり | 冬の水やり |
|---|---|---|
| 頻度 | 土の表面が乾いたらすぐ | 乾いてから数日待つ |
| 時間帯 | 朝または夕方 | 暖かい午前中のみ |
| 量 | 鉢底から出るまでたっぷり | 鉢底から出るまでたっぷり(回数は減らす) |
| 注意点 | 水切れによる枯れ | やりすぎによる根腐れ・凍結 |
また、受け皿に溜まった水はすぐに捨ててください。これが残っていると、鉢底から冷えが伝わりやすくなり、根腐れを助長します。冬の水やりは「植物に水をあげる」というよりも、「土の中の水分量を適度に保ち、根の乾燥を防ぐ」という意識で行うのが成功の秘訣です。
指で土を触ってみて、少しでも湿り気を感じるうちは水やりを我慢する勇気を持ちましょう。
休眠期の肥料は不要?寒肥の正しいタイミング
「冬の間も元気に育ってほしい」「寒さに負けないように栄養をあげたい」という親心から、肥料を与えたくなる気持ちはよく分かります。しかし、冬のヒペリカムに肥料を与えることは、百害あって一利なしです。12月から2月にかけての厳寒期、ヒペリカムは生育を休止し、休眠状態に入っています。この時期に速効性の化成肥料などを与えてしまうと、根が肥料成分を吸収できず、土の中の肥料濃度が高くなりすぎて根の水分が奪われる「肥料焼け」を起こしてしまいます。冬場に肥料を与えるのは、深く眠っている人を無理やり起こして、脂っこいステーキを食べさせるようなものです。消化不良を起こすどころか、体調を崩してしまいます。

肥料を与える正しいタイミングは、春の芽吹きに備える「寒肥(かんごえ)」の時期です。具体的には、最も寒さが厳しい時期を過ぎ、春の気配を感じ始める2月下旬から3月上旬頃が適しています。この時期に、ゆっくりと効き目が現れる有機質肥料(油かすと骨粉を混ぜたものや、発酵鶏糞など)や、緩効性の化成肥料を株元に施します。
寒肥は、これから始まる春の急成長を支えるための重要なエネルギー源となります。特に有機質肥料は、土の中で微生物によって分解され、植物が利用できる形になるまでには時間がかかります。
そのため、実際に芽が動き出す少し前に施しておくのがポイントです。施し方は、鉢植えであれば鉢の縁に沿って数箇所に置き肥をします。地植えの場合は、枝先の下あたり(根が張っている範囲の目安)に浅く穴を掘り、土と混ぜて埋め戻すと良いでしょう。
この寒肥を適切に行うことで、春の新芽の勢いが増し、その後の花付きや実付きが格段に良くなります。今は肥料袋を開けず、じっと春を待つのが正解です。
寒冷地における防寒対策とマルチングの効果
北海道や東北地方、あるいは標高の高い地域など、冬の寒さが厳しいエリアでは、通常の管理に加えて積極的な防寒対策が必要になります。ヒペリカムは比較的寒さに強いとはいえ、土壌がカチカチに凍結してしまうような環境では、根が物理的なダメージを受けて枯れてしまうことがあります。
また、強い寒風によって枝の水分が奪われ、春を待たずに枝枯れを起こす「乾燥害」も寒冷地特有のリスクです。
そこで非常に有効なのが「マルチング」です。株元の土の表面を、腐葉土、バークチップ、藁(わら)、あるいはもみ殻などで覆う作業のことを指します。マルチングを行うことで、土の表面からの放熱を抑え、地温の急激な低下を防ぐ「布団」のような効果が得られます。また、冬場の乾燥した風から土壌の水分を守る保湿効果も期待できます。厚さは5cm〜10cm程度、たっぷりと敷き詰めるのがコツです。特に、まだ植え付けてから1〜2年未満の若い株は寒さへの抵抗力が弱いため、念入りに行いましょう。

さらに、寒冷地では「霜柱」による被害にも注意が必要です。霜柱が立つと、植物の根が土と一緒に持ち上げられ、切断されたり、冷気にさらされたりしてしまいます。一度持ち上げられた根は、自然には元に戻らず、そのまま乾燥して枯れてしまいます。
マルチングは、この霜柱の発生を抑制する効果も絶大です。
雪国での管理ポイント
もし積雪がある地域であれば、雪の下は0度付近で温度が一定に保たれるため、雪囲いをして雪に埋もれさせてしまうのも一つの越冬方法です。ただし、雪の重みで枝が折れないよう、支柱を立てて枝を紐で束ねるなどの対策は必須です。
ご自身の地域の気候特性に合わせて、「根を守る」「風を防ぐ」という2点を意識した対策を講じてください。適切な防寒は、春のスタートダッシュを大きく左右します。
葉が茶色や赤に変色するのは枯れたサインか

12月に入ると、それまで鮮やかな緑色だったヒペリカムの葉が、赤茶色や褐色に変色してくることがあります。園芸初心者の方から「枯れてしまったのでしょうか?」「病気でしょうか?」という相談をよく受けますが、これは多くの場合、正常な生理現象ですので安心してください。
ヒペリカムの多くの品種は「半常緑性」または「落葉性」の性質を持っています。気温が低下すると、アントシアニンという色素が生成され、紅葉のように葉が色づきます。地域や寒さの度合いによっては、古い葉を落として冬を越そうとします。
この変色は、植物が寒さに耐えるために自らの身を守る反応、いわゆる「紅葉(こうよう)」の一種です。特に気温が急激に下がった時や、霜に当たった後に色が変わりやすくなります。
葉が赤くなっても、枝自体が生きていれば問題ありません。
では、本当に枯れているのか、紅葉なのかをどう見分ければ良いのでしょうか。簡単な確認方法があります。枝を爪で軽く引っ掻いてみてください。
- 樹皮の下が瑞々しい緑色:その枝は生きています。春になれば芽吹きます。
- 中が茶色く乾燥している:その部分は枯れています。ポキポキと簡単に折れる場合も同様です。
ELただし、すべての葉が茶色く縮れてパリパリになり、枝もしわが寄っているようであれば、それは寒さによる生理現象ではなく、根腐れや極度の水切れによる枯死の可能性があります。
自然な紅葉であれば、葉にはまだ水分が含まれており、しっとりとした質感が残っています。もし落葉してしまっても、株元や枝の節々に小さな冬芽が準備されていれば、春にはまた新しい葉が展開します。
見栄えが悪いからといって、無理に葉をむしり取ったりせず、自然に任せて見守ってあげましょう。この時期の葉色は、ヒペリカムが季節の移ろいを感じて生きている証拠なのです。
来年も実を楽しむための冬の剪定とトラブル対策


- 冬越し前の強剪定はNG?春を待つべき理由
- 古い枝と新しい枝の整理方法と切る位置
- 冬場に発生しやすい病害虫のチェックポイント
- 挿し木で増やした苗の初めての冬越し注意点
- 寒さで株が弱った場合のリカバリー方法
冬越し前の強剪定はNG?春を待つべき理由
「冬になる前に庭をスッキリさせておきたい」「枝が伸び放題だから今のうちに切っておこう」と、12月にバッサリと剪定をしてしまう方がいらっしゃいますが、ヒペリカムに関しては、本格的な冬を迎える前の「強剪定」は避けるべきです。これには明確な理由があります。植物にとって、枝や葉は寒さから身を守るためのコートのような役割も果たしています。厳寒期に入る前に深く切り詰めてしまうと、株の内部(クラウン部分)が寒風や霜に直接さらされることになり、株全体が弱ってしまうリスクがあるのです。


また、切り口から水分が蒸発したり、そこから冷気が入り込んで枝枯れが進行したりすることもあります。特に寒冷地では、剪定した位置から数センチ下まで枯れ込むことがよくあります。
これを「切り戻し枯れ」などと呼びます。もし冬前に深く切ってしまうと、春に残したかった芽の部分まで枯れ込んでしまい、結果として花数や実の数が減ってしまうことになりかねません。
もし、どうしても枝が伸びすぎて邪魔だという場合は、枯れ枝や明らかに混み合いすぎている細い枝を整理する程度の「軽い剪定」に留めましょう。来年の花や実を最大限に楽しむための本格的な剪定(強剪定)は、寒さの峠を越え、植物が活動を再開しようとする「3月上旬〜中旬」に行うのがベストです。この時期であれば、どの芽が元気に伸びそうかを目で見て確認しながら切ることができますし、剪定の刺激が春の芽吹きを促進する効果も期待できます。今はじっと我慢して、植物自身の防寒能力を信じて枝を残しておいてください。
古い枝と新しい枝の整理方法と切る位置
では、3月に入ってからの剪定はどのように行えばよいのでしょうか。ヒペリカムは、春に新しく伸びた枝の先に花を咲かせ、実をつける性質(新枝咲き)を持っています。つまり、春にどれだけ元気な新しい枝を出させるかが、実付きを良くする鍵となります。
基本的な剪定方法は、株元から15cm〜20cm程度の高さを目安に、全体を刈り込むように切ることです。「そんなに低く切っていいの?」と不安になるかもしれませんが、ヒペリカムは萌芽力が非常に強いため、思い切って切ることで株元から勢いのある新梢(シュート)がたくさん発生し、こんもりとした美しい樹形に仕上がります。逆に剪定をサボると、株の下部がスカスカになり、上の方だけにしか葉がない不格好な姿になってしまいます。


切る位置は、充実した芽(節)の5mm〜1cmほど上が基本です。芽のギリギリで切ってしまうと、切り口からの乾燥で芽そのものが枯れてしまうことがあるため、少し余裕(マージン)を持たせてください。
優先して切るべき枝リスト
- 枯れ枝:色が変色し、乾燥してポキッと折れる枝
- 古枝:数年経過し、木質化して太くなりすぎた枝(花付きが悪くなります)
- 内向枝:株の内側に向かって伸び、風通しを悪くする枝
- 交差枝:他の枝と重なり合っている枝
特に重要なのが「古枝の更新」です。3年以上経過したような古い枝は、新しい芽を出す力が弱まっています。こうした枝は株元近くから切り取り、代わりに若々しい枝を残すように更新していくと、株全体がリフレッシュされます。
春の剪定は、いわばヒペリカムの「若返り手術」のようなものです。ハサミを入れることを恐れず、新しい季節に向けた準備をしてあげましょう。
冬場に発生しやすい病害虫のチェックポイント
冬は気温が低いため、害虫の活動は鈍くなりますが、完全にいなくなるわけではありません。多くの害虫は、卵や幼虫、あるいは成虫の姿でじっと冬を越し、春の訪れとともに活動を開始します。特に注意したいのが「カイガラムシ」や「ハダニ」の存在です。
冬の間に株を観察し、枝に白っぽい貝殻のようなものや、ロウ状の塊が付着していないかチェックしてください。これがカイガラムシです。吸汁して株を弱らせるだけでなく、排泄物がすす病の原因にもなります。
冬のカイガラムシは成虫で動かないため、見つけたら歯ブラシやヘラなどでこすり落としてしまうのが最も確実で環境にも優しい駆除方法です。冬の間は硬い殻を被っており薬剤が効きにくいため、物理的な除去が効果的です。
また、株元に溜まった「落ち葉」をそのままにしていませんか?落ち葉は、病原菌や害虫にとって温かくて快適な越冬場所になります。特にヒペリカムがかかりやすい「さび病」などの病原菌は、落ち葉の中で冬を越すことが多いです。
冬の間に株元の掃除(サニテーション)を徹底し、清潔な環境を保つことは、来シーズンの病害虫予防において農薬散布以上に高い効果を発揮します。地植えの場合、マルチングをしているとその下の様子が見えにくくなりますが、時々めくって確認し、カビが生えていないか、害虫が潜んでいないかをチェックすることをお勧めします。
冬の静かな時期こそ、じっくりと株の健康診断ができるチャンスです。
挿し木で増やした苗の初めての冬越し注意点
秋頃に剪定した枝を使って挿し木を行い、小さな苗を作ったという方もいらっしゃるかもしれません。親株は寒さに強くても、挿し木をして根付いたばかりの幼苗は、まだ体力がなく、根の張りも不十分なため、寒さに対して非常にデリケートです。
これらを親株と同じ感覚で屋外に放置すると、一晩の霜や寒風で枯れてしまうことがよくあります。
挿し木1年目の苗に関しては、基本的には「室内」または「霜の当たらない簡易温室(フレーム)」での管理を推奨します。鉢植えであれば、夜間は玄関や勝手口などの屋内に取り込み、氷点下の環境にさらさないようにしてください。もし地植えにしてしまった場合は、苗全体を覆うように不織布(パオパオなど)をかけたり、厚めのマルチングを施したりして、過保護なくらいに防寒対策を行う必要があります。
また、幼苗は根の量が少ないため、乾燥にも弱いです。親株よりも水切れを起こしやすいので注意が必要ですが、かといって水をやりすぎるとすぐに根腐れします。このバランスが難しいのですが、土の表面が乾いたら、暖かい日の午前中に少量の水を与えるようにし、常に土の湿り具合を気にかけてあげてください。
「赤ちゃんは寒さと乾燥に弱い」ということを肝に銘じ、春に新しい葉が展開し始めるまでは、特別扱いして守り抜く必要があります。この最初の冬を乗り越えれば、翌年からは親株同様に逞しく育ってくれるはずです。
寒さで株が弱った場合のリカバリー方法
万全の対策をしていても、記録的な寒波や不意の積雪などで、ヒペリカムがダメージを受けてしまうことはあります。葉が完全に枯れ落ち、枝先が黒ずんでしまった時、どうすれば良いのでしょうか。まず大切なのは「慌てていじくり回さない」ことです。
寒さで弱っている株に、良かれと思って活力剤や肥料を与えるのは絶対にNGです。弱った胃腸に脂っこい食事を与えるようなもので、根に負担をかけ、トドメを刺すことになりかねません。まずは水やりを控えめにし、半日陰の風の当たらない場所に移動させて、静かに見守ってください。枯れ込んだ枝先が気になるかもしれませんが、すぐに切り落とす必要はありません。どこまで枯れているかの境界線がはっきりする春先まで待ってから、枯死した部分だけを取り除くのが安全です。
春になり、気温が上がってくると、枯れたように見えた株元の土の中から、ひょっこりと新しい芽(ヒコバエ)が出てくることがよくあります。ヒペリカムは生命力が強く、地上部が全滅しても根が生きていれば復活する可能性が高い植物です。
3月〜4月になっても全く芽吹かない場合は、残念ながら枯死したと判断せざるを得ませんが、それまでは諦めずに管理を続けてください。復活の兆しが見えたら、そこで初めて薄い液体肥料などを与え、成長をサポートしてあげましょう。
植物の生きる力を信じて待つのも、園芸の醍醐味の一つです。


総括:ヒペリカムの冬越しは「過保護」より「見守り」で成功する
- ヒペリカムは耐寒性が強いが、鉢植えは根の凍結に注意が必要だ
- 鉢植えの置き場所は、北風を避けた南向きの軒下がベストである
- 地植えは基本的に防寒不要だが、寒冷地ではマルチングが有効だ
- 冬の水やりは、土の表面が乾いて数日経ってから行うのが基本だ
- 水やりは必ず晴れた日の午前中に行い、夜間の凍結を防ぐべきだ
- 冬の休眠期に肥料を与えると、肥料焼けや根腐れの原因になる
- 寒肥は春の芽吹き前の2月下旬から3月上旬に与えるのが正解だ
- 葉が赤や茶色になるのは紅葉であり、枝が生きていれば問題ない
- 冬前の強剪定は株を弱らせるため、枯れ枝の整理程度に留める
- 本格的な剪定は、寒さが和らぐ3月上旬〜中旬に行うべきだ
- 剪定時は株元から15cm〜20cmを目安に、古い枝を更新する
- カイガラムシや落ち葉の掃除を行い、病害虫の越冬を防ぐこと
- 挿し木1年目の幼苗は寒さに弱いため、室内や温室で管理する
- 寒さで弱っても、春に株元から新芽が出る可能性があるため待つ
- 冬は植物の生命力を信じ、静かな環境で休ませることが重要だ








