バーミキュライトの代用をお探しですか?「買い忘れた」「安全性が心配」など、理由は様々でしょう。この記事では、園芸の専門家がバーミキュライトの代わりとなる資材を徹底解説します。パーライトやピートモスなど、よく似た資材には「黒曜石」「真珠岩」といった種類や「無調整」「調整済」の違いがあり、間違えると逆効果にも。保水性・保肥性・無菌性といったバーミキュライトの特性を理解し、種まきや多肉植物など、あなたの目的に最適な代用品を見つけるための完全ガイドです。
- バーミキュライトの3大効果(保水・保肥・無菌)と安全性
- 代用品は「どの効果を代替するか」で選ぶのが重要
- パーライトやピートモスには種類があり、使い分けが必要
- ココピートの塩抜きなど、代用品ごとの注意点を解説
バーミキュライトの代用は必要?基本特性と安全性の全知識
- そもそもバーミキュライトとは?保水・保肥・無菌の3大効果
- 「代用」を考える理由:コスト、性能、アスベストの安全性
- 代用できる資材の比較一覧表(性能・pH・コスト)
- 用途別:代用が適する場合とバーミキュライトが最適な場合
そもそもバーミキュライトとは?保水・保肥・無菌の3大効果

バーミキュライトの代用品を探す前に、まずはバーミキュライト自体がどのような資材なのかを正確に知っておくことが大切です。これを知ることで、なぜその代用品が適しているのか(あるいは適していないのか)が明確になります。
バーミキュライトは、「蛭石(ひるいし)」などの天然鉱物を、約800℃~1,000℃以上の高温で急速に加熱処理して作られる園芸用土です。この加熱によって、鉱物内部の水分が蒸発し、アコーディオンの蛇腹のように層状に膨張します。この多孔質な構造が、バーミキュライトのユニークな効果を生み出しているのです。
主な効果は、「保水性」「保肥性」「無菌性」の3つです。
- 高い保水性
アコーディオン状の隙間に大量の水分を保持することができます。そのため、土壌改良材として用土に混ぜ込むことで、水持ちを飛躍的に向上させます。 - 卓越した保肥性(肥料持ち)
これがバーミキュライトの最大の強みかもしれません。バーミキュライトは「CEC(塩基置換容量)」という数値が約 150meq/100g と非常に高い特性を持っています。簡単に言えば、「肥料分を磁石のように吸着して保持する力」が強いということです。水やりをしても、カルシウムやマグネシウム、カリウムといった肥料成分が流れ出てしまうのを防ぎ、植物の根が必要な時に効率よく吸収できるように助けます。 - 無菌性
製造過程で高温焼成されているため、雑菌や雑草の種子を含まない「無菌状態」です。これは、病気にデリケートなタネから苗を育てる「育苗」や、枝から根を出させる「挿し木」において非常に重要です。カビや病気のリスクを大幅に減らし、発芽率や発根率を高めるため、種まき・挿し木用土として広く愛用されています。
このほか、土の約1/10という「軽量性」からハンギングバスケットにも使われたり、熱を伝えにくい「断熱性」で真夏や真冬の地温変化を和らげる効果もあります。pH(酸度)はほぼ中性~弱アルカリ性(pH 6.8~8.0程度)を示すのが一般的です。
「代用」を考える理由:コスト、性能、アスベストの安全性

これほど優れた資材なのに、なぜ「代用」が検索されるのでしょうか。それには、大きく分けて3つの理由が考えられます。
1. 性能のミスマッチ(使いどころの間違い)
バーミキュライトの「高い保水性」は、時としてデメリットになります。例えば、乾燥を好む多肉植物やサボテンの栽培において、水持ちが良すぎる土は「根腐れ」の直接的な原因になります。この場合、バーミキュライトの「代用」というより、性質が真逆の「排水性の高い資材」が求められます。
2. 入手性・コスト
単純に「土を配合しようとしたら、バーミキュライトだけ切らしていた」「近所のホームセンターでパーライトより高価だった」というケースです。すぐに作業したい場合、手近にあるもので代用できないか、と考えるのは自然なことです。
3. 安全性(アスベスト)への懸念
これが専門的に最も重要なポイントです。過去に、一部の鉱山から採掘されたバーミキュライトに、発がん性物質である「アスベスト(石綿)」が混入していたことが世界的に問題となりました。これは主に建築用の断熱材として使われた古いバーミキュライト製品に関連する問題です。
ELとはいえ、過去の報道などから「なんとなく不安」と感じる方が、より安全が確認されている他の資材を代用品として選びたい、というお気持ちはよく分かります。
代用できる資材の比較一覧表(性能・pH・コスト)


バーミキュライトの代用を考える上で最も重要なのは、「バーミキュライトの “どの性質” を代用したいのか」を明確にすることです。
「保水性」を代用したいのか、「保肥性」を代用したいのか、あるいは「軽量性」や「無菌性」なのか。目的によって、選ぶべき資材は全く異なります。
ここで、主要な土壌改良材とバーミキュライトの性質を比較してみましょう。特に「パーライト」と「ピートモス」には重要な種類(サブタイプ)の違いがあるため、それも明記します。
| 資材 | 主な役割 | 保水性 | 排水性 | 保肥性 (CEC) | pH | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| バーミキュライト | 保水・保肥・無菌 | ◎ 高い | 〇 良い | ◎ 非常に高い | 中性〜弱アルカリ性 | 最強の保肥性。種まきに最適。 |
| パーライト (黒曜石) | 排水・通気 | × 低い | ◎ 非常に高い | × ほぼ無い | 中性 | 水はけ改善用。多肉植物向き。 |
| パーライト (真珠岩) | 保水・通気 | 〇 良い | 〇 良い | × ほぼ無い | 中性 | 保水もするが、保肥性は無い。 |
| ピートモス (無調整) | 保水・酸度調整 | ◎ 高い | △ 悪い | 〇 良い | 強酸性 (pH 3-4) | ブルーベリーなど酸性土壌用。 |
| ピートモス (調整済) | 保水・保肥 | ◎ 高い | △ 悪い | 〇 良い | 中性 (pH 6前後) | 一般的な保水・保肥の代用。 |
| ココピート | 保水・通気 | 〇 良い | 〇 良い | △ 中程度 | 弱酸性〜中性 | バランス型。塩抜きに注意。 |
| 赤玉土 (小粒) | 基本用土 | 〇 良い | 〇 良い | 〇 良い | 弱酸性 | 万能だが、時間と共に崩れる。 |
用途別:代用が適する場合とバーミキュライトが最適な場合


上記の比較表から分かる通り、「完璧な代用品」は存在しません。それぞれの資材に一長一短があるため、目的によって使い分けるのが正解です。
バーミキュライトが最適な場合(代用非推奨)
「種まき」と「挿し木」です。この2つの作業で最も重要なのは「無菌性」と「適度な保水・保肥性」です。バーミキュライトは、発芽・発根に必要な最低限の肥料分を保持しつつ(高いCEC)、カビや雑菌からデリケートな苗を守る(無菌性)という、まさに理想的な環境を提供します。あえて他の資材で代用するメリットは少ないでしょう。
代用品が適する場合
- 排水性を高めたい(多肉植物など):
バーミキュライトは不適です。「パーライト(黒曜石)」や「赤玉土(大粒)」を選びます。 - 酸性の土壌を作りたい(ブルーベリーなど):
アルカリ性のバーミキュライトは不適です。「ピートモス(無調整)」が最適解です。 - 一般的な培養土の保水性を高めたい:
「ピートモス(調整済)」や「ココピート」が、安価で優秀な代用品となります。
目的別!バーミキュライトの代用品7選と最適な使い方
- 【排水性・通気性の代用】パーライト(黒曜石・真珠岩)
- 【保水性・酸性土壌の代用】ピートモス(無調整・調整済)
- 【保水性・中性土壌の代用】ココピート(塩抜きの注意点)
- 【基本用土の代用】赤玉土(崩れるデメリットと特性)
- 植物別(種まき・多肉・観葉)の最適配合ガイド
【排水性・通気性の代用】パーライト(黒曜石・真珠岩)


バーミキュライトと最もよく比較されるのが「パーライト」です。どちらも鉱物を高温処理した軽量な資材ですが、その性質は大きく異なります。そして、パーライトには2種類あることを知っておく必要があります。
パーライトは、黒曜石や真珠岩といったガラス質の火山岩を高温で熱し、ポップコーンのように膨張させたものです。主な役割は土の軽量化と「根腐れ防止」です。
1. パーライト(黒曜石)
原料の黒曜石は水分が少なく、高温で処理しても内部にのみ空洞ができます。表面はツルツルしており、水をほとんど吸収しません。
土に混ぜ込むと、土粒子の間に強制的に隙間を作り、空気の通り道と水の通り道を作ります。つまり、「排水性・通気性の向上」に特化した資材です。バーミキュライトの「保水性」とは真逆の性質と言えます。多肉植物の土や、鉢底石の代わりとして使うのに最適です。
2. パーライト(真珠岩)
原料の真珠岩は水分を多く含むため、加熱すると大きく膨張し、表面にも無数の穴が空きます。スポンジのように、その穴に水分をある程度保持します。
こちらはバーミキュライトの「保水性」に近い役割を果たします。ただし、通気性も同時に確保できるバランス型です。
パーライトを使う最大の注意点
パーライト(真珠岩)はバーミキュライトの「保水性」を代用できますが、「保肥性(CEC)」は代用できません。パーライトは肥料分を保持する力がほぼゼロです。
もし、苗の育成などでバーミキュライトの「肥料持ちの良さ」も期待していた場合、パーライトで代用すると肥料切れを起こしやすくなります。その場合は、別途、元肥(もとごえ)をしっかり施したり、液肥をこまめに与える工夫が必要です。
【保水性・酸性土壌の代用】ピートモス(無調整・調整済)


ピートモスは、ミズゴケなどが長期間堆積し、腐熟してできた泥炭(ピート)を乾燥・粉砕したものです。繊維質で、保水性・保肥性に優れています。
このピートモスにも、非常に重要な2つの種類があります。
1. ピートモス(無調整)
採掘したピートモスをそのまま乾燥させたもので、pH 3〜4という「強酸性」を示します。これは一般的な植物の生育には酸性が強すぎます。
この資材は、バーミキュライトの「代用」として使うものではありません。ブルーベリーやツツジ、シャクナゲなど、酸性の土壌を好む植物の専用土を作るための「pH調整剤」として使います。アルカリ性に傾いた土壌を中和する目的でも使用されます。
2. ピートモス(調整済)
無調整のピートモスに石灰(苦土石灰など)を加え、pHを 6前後に中和(調整)したものです。
これこそが、バーミキュライトの「保水性」「保肥性」の代用品として最も一般的な資材です。価格も安価で、ホームセンターなどで「ピートモス」として売られている商品の多くはこちらの調整済タイプです。観葉植物や野菜の培養土のベースとして幅広く使えます。
ピートモスを使う最大の注意点
ピートモスは保水性が高い反面、一度カラカラに乾燥させてしまうと、急激に「撥水性(はっすいせい)」を持つようになります。つまり、水を弾いてしまい、吸水しなくなるのです。
プランターの土が乾ききってカチカチになり、水やりをしても土の表面を水が滑っていくだけ…という経験はありませんか? あれはピートモスが原因であることが多いです。使用する際は、あらかじめ湿らせてから他の用土とよく混ぜ込み、「乾かしすぎない」管理が求められます。
【保水性・中性土壌の代用】ココピート(塩抜きの注意点)


ココピート(ヤシガラピート)は、ココナッツ(ヤシの実)の殻(ハスク)を細かく砕いて繊維状にしたものです。ピートモスの代替品として近年注目されています。
性質はピートモスに似ていますが、より優れている点も多くあります。保水性が高いと同時に繊維の隙間が大きいため、「通気性」や「排水性」も良好です。土が固く締まりにくく、根張りのスペースを確保しやすいのが特徴です。
また、ピートモスと違って乾燥しても水を弾きにくく、pHも弱酸性〜中性で安定しているため、非常に扱いやすい万能な資材と言えます。
バーミキュライトの「保水性」の代用として、ピートモスの「扱いにくさ」を避けたい場合に最適な選択肢です。
ココピートを使う最大の注意点(塩抜き)
ココピートの原料であるココナッツは、海岸近くで栽培されることが多いため、繊維に「塩分」を多く含んでいる場合があります。塩分は植物の生育、特に発芽や根の伸長を著しく阻害します。
購入時に「塩抜き済み」「アク抜き済み」と記載のある商品を選ぶのが最も安全です。
もし記載がない場合や、安価な圧縮ブロックタイプを使う場合は、以下の「塩抜き」作業を必ず行ってください。
- バケツなどの容器にココピートを入れ、たっぷりの水を注ぎます。(圧縮ブロックは水で戻します)
- そのまま数時間〜半日ほど放置します。水が濃い紅茶のような色になります。
- 一度水をすべて捨て、再び新しい水を注ぎます。
- この「水換え」を、水の濁りがなくなるまで3〜4回繰り返します。
この一手間をかけるだけで、ココピートは非常に安全で優秀な土壌改良材になります。
【基本用土の代用】赤玉土(崩れるデメリットと特性)


赤玉土(あかだまつち)は、火山灰土を乾燥させ、粒の大きさでふるい分けた、日本を代表する基本用土です。バーミキュライトのような「土壌改良材」というより、培養土の「ベース」となる資材です。
粒状で多孔質であるため、「保水性」「排水性」「通気性」「保肥性」のすべてをバランス良く備えています。pHも弱酸性で、ほとんどの植物に適しています。そういった意味では、バーミキュキライトが持つ多くの性質を「代用」できる万能選手です。
特に観葉植物や一般的な草花の培養土において、バーミキュライトの代わりに赤玉土(小粒)の配合比率を少し増やすことで、保水性と保肥性を補うことができます。
赤玉土を使う最大の注意点
赤玉土の唯一にして最大の欠点は、「時間と共に粒が崩れる」ことです。特に安価な赤玉土は、数回の水やりや凍結・乾燥の繰り返しで粘土化しやすいです。
粒が崩れて微塵(みじん)になると、せっかくの通気性や排水性が失われ、鉢の底でヘドロのように固まり、深刻な「根詰まり」と「根腐れ」を引き起こします。
赤玉土を多めに使って代用する場合は、「いずれ崩れる」ことを前提とし、1〜2年に一度は必ず新しい土で「植え替え」を行うメンテナンスが必須となります。
植物別(種まき・多肉・観葉)の最適配合ガイド
では、具体的にどのような植物に、どの代用品をどう配合すればよいのでしょうか。あくまで一例ですが、基本的な考え方として3つの「配合レシピ」をご紹介します。
1. 【種まき・挿し木】無菌性と保水性を重視
- 最適(代用なし):バーミキュライト 100%
- 次善(代用なし):バーミキュライト 50% + ピートモス(調整済) 50%
- 代用レシピ:ピートモス(調整済) 50% + パーライト(真珠岩) 50%
2. 【多肉植物・サボテン】排水性と通気性を最重視
- NGな配合:バーミキュライトやピートモスを多く使うこと。
- 代用レシピ:赤玉土(小粒) 40% + 鹿沼土(小粒) 30% + パーライト(黒曜石) 30%
3. 【観葉植物・一般草花】保水性と排水性のバランスを重視
- 基本の配合:赤玉土(小粒) 60% + ピートモス(調整済) 30% + バーミキュライト 10%
- 代用レシピ:赤玉土(小粒) 50% + ココピート(塩抜き済) 30% + パーライト(真珠岩) 20%



例えば、日当たりが良く風通しも抜群のベランダ(乾きやすい環境)なら、保水性の高い「ピートモス」や「ココピート」の割合を増やします。逆に、室内や日陰(乾きにくい環境)なら、排水性を高める「パーライト(黒曜石)」や「赤玉土」の割合を増やします。
資材の特性を理解すれば、あなただけの「黄金比」が見つかりますよ。
総括:バーミキュライトの代用は「目的」に合わせた選択が鍵
この記事のまとめです。
- バーミキュライトは「蛭石」を高温焼成した園芸用土である
- 主な特徴は「高い保水性」「高い保肥性(CEC)」「無菌性」の3点である
- 「保肥性(CEC)」の高さが、他の多くの資材との決定的な違いである
- 「種まき」「挿し木」では、無菌性を持つバーミキュライトが最適である
- アスベストの懸念は、過去の建築用資材の問題であり、現在の園芸用は安全性が高い
- バーミキュライトの代用は「どの性質を代替したいか」で選ぶ
- 「パーライト」には水を弾く「黒曜石」と、保水する「真珠岩」の2種類がある
- 「ピートモス」には強酸性の「無調整」と、中性の「調整済」の2種類がある
- 排水性を高めたい(多肉植物など)場合は、「パーライト(黒曜石)」が適する
- 酸性の土壌を作りたい(ブルーベリーなど)場合は、「ピートモス(無調整)」が適する
- 一般的な保水性の代用には、「ピートモス(調整済)」か「ココピート」が適する
- パーライトは保肥性(CEC)がほぼ無いため、肥料切れに注意が必要である
- ピートモスは一度乾燥すると水を弾く「撥水性」に注意が必要である
- ココピートは「塩分」を含むことがあり、使用前の「塩抜き」が重要である
- 赤玉土は万能だが、時間と共に「粒が崩れる」ため定期的な植え替えが必須である











