
オーストラリア原産で、別名「オーストラリアン・ローズマリー」とも呼ばれるウエストリンギアは、その繊細なシルバーがかった葉と涼しげな花で、日本のガーデニングシーンでも非常に高い人気を誇っています。
特に地植えにすると、その生命力を存分に発揮し、美しい低木としてお庭の主役や生垣として活躍してくれます。しかし、地植えにする際には、日本の気候特有の湿度や冬の寒さなど、いくつか注意しなければならない重要なポイントが存在します。
この記事では、園芸の専門家としての視点から、ウエストリンギアを地植えで健康に、そして美しく育てるための土作り、植え付け場所の選定、剪定方法、冬越しの対策まで、網羅的に詳しく解説していきます。
この記事を読めば、ウエストリンギアを枯らすことなく、長く楽しむための具体的なステップがすべて理解できるはずです。

この記事のポイント
- 地植えに最適な日当たりと風通しの条件
- 根腐れを完全に防ぐための排水性に特化した土作り
- 美しい樹形と健康を維持するための「開花後」剪定術
- 日本の冬を乗り切るためのマルチングと防寒対策

ウエストリンギアを地植えで育てるコツ
- 最適な植え付け場所の選び方
- 地植えに適した土作りの基本
- 水やりのタイミングと注意点
- 成長を促す肥料の与え方
最適な植え付け場所の選び方
ウエストリンギアを地植えで成功させるための第一歩は、その植物が本来育ってきた環境を理解し、それに近い場所をお庭の中で見つけることです。ウエストリンギアはオーストラリアの沿岸部に自生している植物であるため、潮風には強く、非常に日光を好むという性質を持っています。
したがって、植え付け場所の絶対条件は「日当たりが極めて良いこと」です。具体的には、一日のうち少なくとも5時間から6時間は直射日光が当たる場所を優先して選んでください。
日照が不足すると、枝がひょろひょろと伸びる「徒長」という現象が起き、葉の密度がスカスカになって見栄えが悪くなるだけでなく、ウエストリンギア特有の小さな可愛らしい花付きも極端に悪くなってしまいます。
次に重要なのが「風通し」です。ウエストリンギアは乾燥した環境を好み、湿気が停滞することを非常に嫌います。特に日本の梅雨から夏にかけての高温多湿な時期は、植物にとって最大の試練となります。
周囲を背の高い塀や密植された他の植物に囲まれ、空気が動かないような場所は避けるべきです。風通しが良い場所であれば、雨が降った後も葉や土壌の表面が速やかに乾き、カビによる病気や蒸れによる落葉を未然に防ぐことができます。

また、植栽する場所の「微気候」にも注目しましょう。冬の北風が直接当たる場所は、耐寒性がそれほど高くないウエストリンギアにとって過酷です。建物の南側や、北風を遮る構造物がある場所、あるいは冬に霜が降りにくい場所が地植えには理想的です。
特に寒冷地に近い地域で地植えに挑戦する場合は、この「冬の北風を避けられる日向」という条件が、枯死を防ぐための決定的な要因となります。
地植えに適した土作りの基本
地植えでウエストリンギアが枯れる最大の原因は「根腐れ」です。これは土壌の排水性が悪く、根が長時間水に浸かった状態になることで酸素不足に陥り、根が腐ってしまう現象です。
日本の多くの住宅地で見られる粘土質の土壌は、水分を保持する力は強いのですが、ウエストリンギアのような乾燥を好む植物には全く向いていません。そのため、地植えを行う際には、元の土をそのまま使うのではなく、排水性を劇的に向上させるための土壌改良が不可欠です。
まず、植え付け予定の場所を、根鉢の2倍から3倍の広さと深さで掘り起こします。掘り出した土に対し、排水性を高めるための資材を最低でも3割から4割程度混ぜ込みます。おすすめの資材は、軽石砂、パーライト、あるいは川砂です。これらは土の中に物理的な隙間を作り、余分な水がスムーズに下へと抜けていくのを助けます。また、通気性を確保するために、腐葉土や完熟堆肥も適量混ぜ込むと良いでしょう。
もし、植え付け場所が非常に水はけの悪い粘土質である場合は、「高植え」という手法を強く推奨します。これは、地面よりも10〜20cmほど高く土を盛り上げ、その盛り土の部分に植え付ける方法です。
こうすることで、雨が降っても根の主要な部分が水没することを物理的に防げます。
理想的な土壌配合の目安
- 庭土(掘り出した土):50%
- 軽石砂またはパーライト:30%
- 腐葉土または完熟堆肥:20%
- ※水はけが特に悪い場合は、さらに軽石の割合を増やしてください。

水やりのタイミングと注意点
地植えのウエストリンギアにおける水やりは、鉢植えの場合とは考え方を大きく変える必要があります。地植えの最大のメリットは、根が地中深くへと伸び、地下の水分を自ら吸収できるようになることです。そのため、一度根がしっかりと張ってしまえば、基本的には降雨だけで十分育ち、人間が定期的に水やりをする必要はほとんどありません。むしろ、良かれと思って毎日水をやりすぎることで、根が常に湿った状態になり、根腐れを引き起こしてしまう失敗が非常に多いのです。
ただし、植え付け直後から根が完全に定着するまでの間は例外です。植え付けてから最初の1ヶ月から2ヶ月程度は、まだ根が周囲の土になじんでおらず、自力で水分を吸い上げる力が弱いです。
この期間は、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えてください。水を与える際は、株元にじっくりと染み込ませるように行い、根と新しい土が密着するのを助けるイメージで行います。
根が定着した後の水やりの目安は、「極端に雨が降らず乾燥した日が続く時」のみです。例えば、夏場に2週間以上雨が降らず、土がカチカチに乾ききって新芽に元気がなくなってきたような場合には、早朝か夕方の涼しい時間帯にたっぷりと水を与えてください。
夏の水やりに関する注意点
- 日中の猛暑の中で水を与えると、地中の温度が急上昇し、お湯のようになった水が根を茹でるように傷めてしまうため厳禁です。
- 冬の間はさらに控えめに管理し、土が湿っている状態での凍結を避けるようにしましょう。
成長を促す肥料の与え方
ウエストリンギアはもともと痩せた土地でもたくましく育つ植物であり、多肥を好むタイプではありません。肥料を与えすぎると、枝葉ばかりが旺盛に茂りすぎて樹形が乱れたり、逆に根を傷めて(肥料焼け)しまったりすることがあります。
地植えの場合、土壌改良の際に元肥を混ぜ込んでいれば、その後の肥料は最低限の「お助け」程度で構いません。
具体的な施肥のタイミングは、一年に2回が理想的です。1回目は「追肥」として、植物が活動を本格化させる春(3月から4月頃)に与えます。この時期に肥料を与えることで、新芽の展開を促し、充実した株を作ることができます。
使用する肥料は、ゆっくりと効果が持続する「緩効性化成肥料」が適しています。株元から少し離れた場所の土の上にパラパラと撒き、軽く土と混ぜ合わせるようにします。
2回目は、夏の暑さが和らいだ秋(9月から10月頃)に与えます。これは、夏越しで消耗した体力を回復させ、冬に向けた耐性を高めるための「お礼肥」としての役割があります。
ここでも緩効性の肥料を少量与えるのが基本です。

| 肥料の種類 | 施肥の時期 | 役割と効果 |
|---|---|---|
| 元肥 | 植え付け時 | 初期成長を支える基礎作り。マグァンプKなどが定番。 |
| 春の追肥 | 3月〜4月 | 新芽の展開と開花促進。株のボリュームアップに寄与。 |
| 秋の追肥 | 9月〜10月 | 夏の疲れの回復と、組織を引き締めて防寒準備。 |
| 冬の肥料 | 不要 | 休眠中のため根を休ませる。過剰な窒素は耐寒性を下げる。 |
ELウエストリンギア地植えの剪定と管理
- 美しい樹形を保つ剪定の時期
- 冬越しの対策と耐寒性の確認
- 注意すべき病害虫と防除方法
- 庭木としての活用法と相性
美しい樹形を保つ剪定の時期
ウエストリンギアは成長が比較的早く、放っておくと枝が四方八方に広がり、不規則な樹形になりやすいという特徴があります。地植えで美しく保つためには、定期的な剪定が欠かせません。
ウエストリンギアの魅力であるシルバーがかった葉の密度を高め、整った形を維持するためには、適切なタイミングでハサミを入れることが成功の秘訣です。
剪定の最も適した時期は、春の開花が終わった直後(5月から6月頃)です。この時期に全体を形整えるように切り戻すと、夏に向けた新芽の成長が促進され、秋には再び美しい姿を見せてくれます。ウエストリンギアは強い剪定にも比較的耐えるため、大きくなりすぎた場合は思い切って全体の3分の1程度をカットしても大丈夫です。
また、日常的な管理として「透かし剪定」も非常に有効です。枝が混み合いすぎると、内部の風通しが悪くなり、蒸れて葉が茶色く枯れ上がってしまうことがあります。重なり合っている古い枝や、内側に向かって伸びている細い枝を根元から間引くことで、株の内部まで光と風が届くようになり、結果として病害虫の予防にもつながります。
剪定のコツ
- 常に緑の葉が残る位置で切る(枯れ枝以外、完全に葉がない場所まで切り戻すと芽が出にくい)。
- 生垣にする場合は、年に2〜3回、表面を整える程度の軽い刈り込みを繰り返すと密度が上がります。
冬越しの対策と耐寒性の確認
ウエストリンギアを地植えにする際、多くのガーデナーが懸念するのが「冬の寒さ」です。一般的にウエストリンギアの耐寒温度はマイナス5℃前後とされており、関東地方以南の平地であれば地植えでの冬越しは十分に可能です。
しかし、これはあくまで目安であり、植えられている場所の条件や、数年に一度の猛烈な寒波によっては深刻なダメージを受けることがあります。
冬越しのポイントとしてまず挙げられるのが「マルチング」です。株元に腐葉土やバークチップ、あるいはワラなどを厚めに敷き詰めることで、地中の温度低下を防ぎ、根が凍結するのを防ぐことができます。
これは乾燥防止にも役立つため、非常に効果的な対策です。また、冬の北風が直接当たる場所では、不織布や寒冷紗で株全体を優しく包んであげると、葉の乾燥や凍結による傷みを大幅に軽減できます。
雪が降った時の対応
ウエストリンギアの枝は柔軟性がありますが、湿った重い雪が大量に乗ると根元から裂けてしまうことがあります。積雪があった際は、こまめに枝を揺らして雪を払い落としてください。折れてしまった場合は、切り口を綺麗に整えて癒合剤を塗っておきましょう。
冬の間に葉が少し茶色く変色したり、内側の葉が落ちたりすることがありますが、これは寒さに対する防御反応であることが多いです。春になって気温が上がれば、再び鮮やかな緑色の新芽が吹いてくるため、慌てて掘り起こしたりせず、暖かくなるのをじっと待ちましょう。


注意すべき病害虫と防除方法
ウエストリンギアは比較的病害虫に強い植物ですが、全くトラブルがないわけではありません。地植えで健康に育て続けるためには、日頃の観察と、異変を感じた時の早めの対処が重要になります。
最も発生しやすいのが、乾燥する時期の「ハダニ」です。ハダニは非常に小さく、葉の裏側に寄生して汁を吸います。被害を受けると、葉の表面に白い斑点が出て、全体的に色が抜けたような、くすんだ印象になります。
ハダニは乾燥を好むため、予防策として有効なのが「葉水(はみず)」です。水やりの際、ジョウロやホースで葉の裏表にしっかり水をかけてあげることで、ハダニの繁殖を物理的に抑えることができます。
次に注意したいのが「カイガラムシ」です。枝や葉の付け根に白い粉のようなものや、茶色い殻のようなものが付着しているのが特徴です。放っておくと株が弱り、排泄物から「すす病」を誘発することもあります。
カイガラムシを見つけた場合は、数が少なければ使い古しの歯ブラシなどでこすり落とすのが最も確実で環境負荷の少ない方法です。
根腐れ病への警戒
土壌の水はけが悪いと、地中の菌によって「根腐れ病」が発生します。突然株全体がしおれてきたり、葉がパラパラと大量に落ちたりする場合はこの病気を疑ってください。発症すると回復が難しいため、やはり植え付け時の排水対策が何よりも重要です。
庭木としての活用法と相性
ウエストリンギアは、その上品で繊細な姿から、和洋問わずどんなお庭にも馴染みやすい万能な植物です。地植えで活用する際の代表的な方法は「生垣」や「ボーダーガーデン」の背景としての利用です。
ウエストリンギアを数本並べて植えることで、柔らかい雰囲気の目隠しを作ることができます。ローズマリーに似た葉姿ですが、香りが強すぎず、枝も比較的制御しやすいため、通路沿いに植えても快適です。
また、シルバーリーフの品種(‘モーニングライト’や‘スモーキー’など)を選べば、お庭の雰囲気をパッと明るくするカラーリーフとしても重宝します。緑の濃い常緑樹とのコントラストを楽しんだり、イングリッシュガーデンのような色彩豊かなコーナーを作ったりするのも素敵です。
相性の良い植物としては、同じく乾燥気味の環境を好む植物が挙げられます。
- オリーブ:高さの出るオリーブの足元にウエストリンギアを配置すると、銀葉同士の統一感が出ます。
- ラベンダー・ローズマリー:生育環境がほぼ同じため、管理が非常に楽になります。
- アメリカンブルー:ウエストリンギアの足元を這うように広がり、青い花がシルバーリーフに映えます。


地植えのウエストリンギアは、年月を経て大きな株に育つと、お庭に「落ち着き」と「構造」をもたらしてくれます。シンボルツリーを引き立てるサブの低木としても、あるいは単体でトピアリーのように丸く仕立てても絵になります。
その丈夫さと美しさを活かし、理想の庭作りを楽しんでください。
総括:ウエストリンギアを地植えで健康に保ちお庭を彩るための完全ガイド


この記事のまとめです。
- 植え付け場所は日当たりと風通しの良さを最優先に確保する
- 土作りは軽石やパーライトを3割以上混ぜ、排水性を徹底的に高める
- 粘土質の場合は「高植え」にして根の呼吸を助ける
- 水やりは定着後は原則不要。極度な乾燥時のみ早朝か夕方に与える
- 肥料は春と秋の2回、緩効性肥料を少量与えるだけで十分
- 剪定の適期は開花後の5〜6月。蒸れを防ぐための透かし剪定も並行する
- 耐寒性はマイナス5℃。冬はマルチングや北風対策を施す
- 病害虫対策として、乾燥時の「葉水」でハダニを予防する
- 庭木として、オリーブやラベンダーと組み合わせると洗練された空間になる
- 適切な管理を行えば、ウエストリンギアは長くお庭の主役として輝き続ける












