いちごの植え替え時期は秋か春?甘く育てる最適なタイミングと手順

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家庭菜園の王道である「いちご」ですが、実は苗を植え付ける「タイミング」こそが、春に収穫できる実の量と甘さを決定づける最重要ファクターであることをご存知でしょうか。

いちごの植え替えには、冬を越すために根を充実させる「秋植え」と、手軽にスタートできる「春植え」という2つの大きなチャンスがあります。しかし、それぞれの時期には明確なメリットと、絶対に守るべき注意点が存在し、間違った時期や方法で作業を行うと、最悪の場合、株が枯死してしまうリスクさえあります。

この記事では、いちご栽培のプロが実践する最適な植え替え時期の見極め方から、絶対に失敗しないための「クラウン」の扱い方、そして甘い実を鈴なりにさせるための土作りの極意まで、園芸初心者の方にも分かりやすく、かつ専門的な視点を交えて徹底解説します。

この記事のポイント

  • いちごの植え替えベストシーズンは根が定着しやすい10月中旬から11月中旬
  • 寒冷地や植え付け時期を逃した場合は2月下旬以降の春植えでリカバリーが可能
  • 植え替え時は成長点である「クラウン」を絶対に土に埋めない浅植えが鉄則
  • 新しい用土を使い、ナス科などの古土を避けることで連作障害と病気を防ぐ
目次

いちごの植え替え時期はいつがベスト?根付かせる極意

  • 秋植え(10月中旬〜11月中旬)が最強の理由
  • 春植え(2月下旬〜3月)のメリットと注意点
  • 地域別・気候別に見る適期判断の目安
  • 時期を逃した!12月以降の対処法と管理
  • 植え替えが必要なサインと株の更新時期

秋植え(10月中旬〜11月中旬)が最強の理由

いちご栽培において、プロ・アマ問わず最も推奨される植え替えのゴールデンタイムは、10月中旬から11月中旬にかけての秋です。なぜこの時期が「最強」とされるのか、それにはいちご特有の生理生態メカニズムが深く関係しています。いちごは、冬の寒さに一定期間遭遇することで「花芽(将来実になる部分)」が形成される性質(花芽分化)を持っていますが、その寒さを迎える前に、土台となる根を十分に張らせておく必要があるのです。

秋に植え替える最大のメリットは、本格的な厳冬期が到来する前に、地温がまだ残っている状態で根を土壌に定着(活着)させられる点にあります。10月から11月の土壌温度は、根の伸長にとって理想的な環境です。

この時期に定植を済ませることで、株は冬の寒さに耐えうる強固な体力を備えて休眠期に入ることができます。そして、厳しい寒さを経験して休眠から目覚めた株は、春の訪れとともに爆発的なエネルギーで葉を茂らせ、充実した大きな花を咲かせるのです。

逆に、この適期を逃して気温が下がってから植え付けると、根が伸び悩みます。すると、冬の乾燥で根が干からびたり、霜柱によって土が持ち上げられ株が浮き上がってしまう「霜柱害」のリスクが格段に高まります。プロの農家が秋植えを基本とするのは、この「冬越しのための体力貯金」を最優先しているからです。「甘くて大きないちご」という結果を求めるのであれば、まずはこの秋のタイミングを逃さないことが、成功への確実な第一歩となります。

秋植えのメリットまとめ

  • 根が十分に張り、冬の寒さや乾燥に強くなる
  • 株が充実するため、春の収穫量が多くなりやすい
  • 収穫期間が長く、実のサイズも大きくなる傾向がある

春植え(2月下旬〜3月)のメリットと注意点

万が一、秋の植え付けタイミングを逃してしまっても、栽培を諦める必要は全くありません。2月下旬から3月にかけて行われる「春植え」も、いちご栽培における有効な選択肢の一つです。

春植えの最大のメリットは、栽培期間が短縮できるため、病害虫のリスクにさらされる期間が物理的に減り、初心者の方でも管理のハードルが下がるという点です。また、この時期のホームセンターや園芸店には、すでに花芽がついている状態の大きな苗が並ぶため、植え付けてから収穫までの「待ち時間」が短いのも大きな魅力でしょう。

しかし、春植えには秋植えとは異なる注意点があります。最大の懸念点は、根を張る期間が秋植えに比べて圧倒的に短いことです。そのため、株自体の体力が秋植え株に比べてやや劣る傾向にあり、結果として収穫できる実の数が少なくなったり、実のサイズが小ぶりになったりすることがあります。

また、春に販売されている苗は、温室育ちですでに開花調整されているものが多いため、購入していきなり寒風吹きすさぶ屋外に植え付けると、環境変化のショックで生育が停滞してしまうこともあります。

春植えを行う際の鉄則は、根鉢(根と土の塊)を絶対に崩さずに植え付けることです。根へのダメージを最小限に抑えることで、短い準備期間でもスムーズに成長軌道に乗せることが可能になります。まずは手軽に収穫を楽しみたいという場合は春植えが最適ですが、「ジャムが作れるくらい大量に収穫したい」という場合は、やはり秋からの入念な準備が勝ると言えるでしょう。ご自身の目的やライフスタイルに合わせて時期を選定してください。

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特徴 秋植え(10月中旬〜11月) 春植え(2月下旬〜3月)
収穫量 多い(株が大きく育つ) やや少ない〜普通
実の大きさ 大粒になりやすい 中粒〜小粒傾向
栽培期間 長い(冬越しが必要) 短い(手軽)
病害虫リスク 長期管理のため注意が必要 期間が短いため比較的低い

地域別・気候別に見る適期判断の目安

園芸の教科書には「10月植え」や「3月植え」と記載されていますが、日本列島は南北に長く、お住まいの地域によって実際の適期には1ヶ月以上のズレが生じます。カレンダーの日付だけを頼りにするのではなく、その土地の「気温」と「霜」の状況を基準に行動することが失敗を防ぐ最大の鍵です。

例えば、北海道や東北地方、高冷地などの寒冷地では、冬の訪れが極めて早いため、関東以西の基準よりも早めに行動する必要があります。具体的には、9月下旬から10月上旬には秋植えを完了させておくのが理想です。

さらに、土壌が完全に凍結してしまうような豪雪地帯では、あえて秋植えを避け、雪解けを待ってからの春植えを選択する方が安全かつ確実な場合も多々あります。無理に秋に植えても、根付く前に寒波が到来し、枯死してしまっては元も子もありません。

一方で、九州や四国、太平洋側の温暖地では、11月下旬まで秋植えが可能なケースもあります。適期判断の具体的な目安としては、「最低気温が5度を下回る日が続くようになる前」、あるいは「初霜が降りる約1ヶ月前」までには植え替えを完了させるイメージを持ってください。植物は人間以上に気温の変化に敏感です。「人間が肌寒いと感じて上着を羽織る季節」には、すでに根の活動は鈍り始めています。「少し早いかな?」と感じるくらいのタイミングで準備を進めるのが、地域を問わず共通する成功のコツです。

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お住まいの地域の「桜の開花時期」や「初雪の時期」を思い出してみてください。それらが早い地域なら植え付けも早めに、遅い地域なら少しゆっくりでも大丈夫です。

地元の種苗店の方に「今植えても大丈夫?」と聞くのが一番確実な方法ですよ!

時期を逃した!12月以降の対処法と管理

この記事を読んでいるのが12月や1月で、「苗を買ってきたけれど、もう植え替え時期を過ぎてしまった」と焦っている方もいるかもしれません。結論から申し上げますと、12月〜1月の厳寒期に、露地やプランターへの「定植(本植え)」を行うのは避けるべきです。この時期、いちごは深い休眠状態にあり、根の活動能力がほぼ停止しています。この状態で根を動かす植え替えを行うと、ダメージを回復することができず、吸水力が落ちてそのまま枯れてしまうリスクが非常に高いからです。

では、手元にある苗はどうすればよいでしょうか。最善の策は、無理に大きなプランターや庭に植え替えず、購入したポットのまま、あるいは一回りだけ大きな鉢に優しく「鉢増し」をして、春まで管理することです。

日中は日当たりの良い南向きの軒下などで日光に当て、夜間は玄関内や不織布の下など、霜が直接当たらない場所に移動させて根を寒さから守ってください。

この時期の水やりは、土の表面が白く乾いてからさらに数日待って行う程度で十分です。「乾燥気味」に管理することで、耐寒性を高めることができます。注意点として、過保護にしすぎて暖房の効いた室内(20度以上)で管理し続けるのはNGです。

いちごは冬を感じないと花芽を作らないため、ずっと暖かい場所に置くと「春が来た」と勘違いして、実をつけずに葉茎だけがひょろひょろと伸びる「徒長」を起こします。「凍らせない程度の寒さ」に当てながら、じっと春を待つのが正解です。

そして、気温が緩み始める2月下旬頃になったら、晴天の日を選んで定植を行いましょう。

植え替えが必要なサインと株の更新時期

いちごは多年草であり、一度植えれば数年は生き続ける植物ですが、美味しく大きな実を安定して収穫し続けるためには、定期的な植え替えや「株の更新」が不可欠です。基本的に、いちごは「親株」からランナーと呼ばれるつるを伸ばし、その先にできる「子株」を育てて翌年の苗にします。

同じ親株で何年も収穫を続けると、年々実が小さくなり、ウイルス病などの病気にかかりやすくなるため、プロの農家では毎年すべての株を新しい苗に更新します。

家庭菜園の場合でも、一つの株で収穫を楽しむのは長くても2年程度を目安にしましょう。もし、現在育てている株が以下のサインを出していたら、それは「植え替え」や「更新」が必要な合図です。

  1. 葉が極端に小さい:株の老化により、養分を吸い上げる力が弱まっています。
  2. 茎(クラウン)が木質化して硬い:若々しさがなくなり、新しい根が出にくくなっています。
  3. 根詰まり:鉢底から根がはみ出していたり、水やりをしても水が染み込まない状態。土の中で根が飽和しています。

また、同じプランターや土に何年も植えっぱなしにしていると、土壌中の特定の養分が欠乏し、微生物バランスが崩れて「嫌地(いやち)」と呼ばれる連作障害が発生します。ランナー取りをして新しい苗を作るのが理想的ですが、スペースや手間の問題で難しい場合は、思い切ってホームセンターなどで新しい苗を購入し、土をリフレッシュすることが、翌シーズンの大収穫への近道となります。

古い株に固執せず、定期的にフレッシュな株へ世代交代させることが、家庭菜園を長く楽しむ秘訣です。

失敗しないいちごの植え替え手順とコツ

  • 成功の鍵は「クラウン」の浅植え
  • プランターと地植えの土作り違い
  • 古い株の植え替え・ランナー取りの手順
  • 植え替え直後の水やりと管理場所
  • 冬越しのためのマルチングと防寒
  • 肥料のタイミング(元肥と追肥)

成功の鍵は「クラウン」の浅植え

いちごの植え替えにおいて、最も重要であり、かつ初心者が最も失敗しやすいポイントが「植え付けの深さ」です。ここで絶対に覚えておいていただきたい専門用語が「クラウン」です。クラウンとは、葉の付け根にある王冠のような形をした短い茎の部分で、ここはいちごの心臓部とも言える「成長点」です。ここから新しい葉や花芽が次々と生成されるため、この部分の扱いは外科手術のように慎重に行わなければなりません。

植え付けの絶対的な鉄則は「浅植え」です。
もし、クラウンが完全に土に埋まってしまう「深植え」にしてしまうと、成長点が土中の湿気で蒸れて腐敗し、株全体があっという間に枯れてしまいます。逆に、根の白い部分が地上に見えてしまうほどの「極端な浅植え」では、根が乾燥して活着しにくくなり、風で株がぐらついてしまいます。
理想的な深さは、「クラウンが土の表面から完全に出ていて、かつ根の付け根部分はしっかりと土に隠れている状態」です。

植え付ける際は、まず苗の土の表面(ポットの土の高さ)と、プランターの土の表面が同じ高さになるように調整します。手で土を寄せるときに、勢い余ってクラウンに土を被せてしまわないように細心の注意を払ってください。

植え付け後にたっぷりと水をやると、土が沈んでクラウンが露出すぎることがあるため、最初は気持ち深めに設定しがちですが、沈む分を計算に入れても「クラウンは必ず空気中に触れさせておく」ことが、いちご栽培成功の絶対条件です。

植え付け深さのNG例

  • 深植え: クラウンに土がかかっている → 成長点が腐って枯れる(最悪のケース)
  • 浅植えすぎ: 根の一部が露出している → 根が乾いて活着しない

プランターと地植えの土作り違い

いちごは、「水はけが良い」ことと「保水性がある」こと、そして「有機質に富んでいる」という、やや贅沢な土壌環境を好みます。プランター栽培の場合、最も手軽で確実なのは、市販されている「いちご専用の培養土」を使用することです。これらはpH(酸度)がいちごに適した弱酸性(pH6.0〜6.5程度)に精密に調整されており、初期成育に必要な肥料分もバランスよく配合されているため、失敗が激減します。もし一般的な「野菜用培養土」を使う場合は、水はけを強化するために赤玉土(小粒)を2割程度混ぜ込むと、よりいちご好みの土になります。

一方、地植え(庭植え)の場合は、事前の入念な土壌改良が必須です。日本の土壌は雨の影響で酸性に傾きがちですが、いちごは強酸性を嫌います。

  1. 植え付け2週間前: 1平方メートルあたり100g程度の「苦土石灰」を撒いて耕し、酸度を調整します。
  2. 植え付け1週間前: 完熟堆肥(牛ふん堆肥など)や腐葉土をたっぷりと混ぜ込み、土をふかふかの状態にします。いちごの根は浅く広く広がる性質があるため、深さ20〜30cm程度を重点的に耕すことが重要です。

また、プランターでも地植えでも共通して絶対に避けるべきなのが「連作」です。過去にいちごを植えた土はもちろん、トマト、ナス、ピーマン、ジャガイモなどの「ナス科」野菜を育てた土をそのまま使うと、共通の病害虫(そうか病や萎凋病など)が発生しやすくなります。可能な限り新しい土を使うか、やむを得ない場合はリサイクル材や太陽熱消毒で徹底的に土壌消毒を行ってから使用してください。土の状態が良いことは、高価な肥料を与えること以上に、いちごの甘さに直結します。

古い株の植え替え・ランナー取りの手順

春から育てていたいちごの株がある場合、そこから伸びた「ランナー(つる)」を使って、来年用の新しい苗を自作することができます。これを「ランナー取り」と言い、通常は6月から7月頃に行う作業ですが、秋にこの子株を定植(植え替え)する際の手順とコツについて解説します。

まず、苗の選定です。親株から一番最初に出た子株(太郎株)は、親株の病気や老化を受け継いでいる可能性があるため、基本的には苗として採用しません。その先にできた二番目の株(次郎株)、あるいは三番目の株(三郎株)が、若くて勢いのある良い苗になります。秋の植え替え時には、これらの子株がポットの中で十分に根を回しているはずです。定植前には、黄色くなった枯れ葉や病気の斑点がある葉を根元からきれいに取り除いておきましょう。これを「葉欠き」といい、風通しを良くして病気を防ぐ重要な作業です。

そして、定植の際に最も意識してほしいのが「植える向き」です。いちごの苗をよく見ると、ランナーが繋がっていた跡(ランナーの切り口)があります。実は、いちごの花房(実がなる茎)は、このランナーとは反対側に出てくるという面白い性質があります。
つまり、ランナーの跡をプランターの内側(あるいは畝の内側)に向けて植えると、実は外側に垂れ下がるように実ります。こうすることで、実が土に触れて汚れるのを防ぎ、収穫作業も格段にしやすくなります。ほんの些細なことですが、この向きを揃えるだけで、春の管理のしやすさと実の美しさが劇的に変わります。

植え替え直後の水やりと管理場所

植え替え作業が終わったら、間髪入れずにたっぷりと水を与えます。この時の水やりには、単に水分を補給するだけでなく、苗の根と新しい土の間の隙間を埋め、密着させるという重要な役割があります。

プランターの底から水が勢いよく流れ出るまでたっぷりと与え、土の中の空洞をなくすイメージで行ってください。ただし、勢いよく水をかけすぎて、せっかく露出させたクラウンが土や泥で埋まってしまわないよう、ハス口の細かいジョウロで優しく株元に注ぐのがコツです。

植え替え直後の約1週間は、根がまだ土に馴染んでいない、いわば「手術直後」のようなデリケートな時期です。この期間に直射日光がガンガン当たる場所や、強い風が吹き抜ける場所に置くと、葉からの水分蒸散に根の吸水が追いつかず、株がしおれてしまうことがあります。最初の1週間は、明るい日陰や風当たりの弱い場所で静かに養生させてください。特に秋植えの場合、10月でも夏日が来ることがあるので油断は禁物です。

1週間ほど経って、中心から新しい葉がピンと立ってきたら、それが「活着(根付いた)」のサインです。そうしたら、速やかに日当たりの良い一等地へ移動させます。いちごは日光が大好きですので、冬の間も含めて、可能な限り長時間日光に当てることが、甘い実を作るためのエネルギー源となります。

ただし、コンクリートの上に直接プランターを置くと、冬は底冷えし、夏は照り返しで高温になるため、レンガやスノコの上に置いて通気性と断熱性を確保することをお勧めします。

冬越しのためのマルチングと防寒

秋に植え替えた後、厳しい冬を越すための対策も重要です。いちご自体は寒さに強い植物ですが、土が凍結して根が傷むのを防ぐため、また春になって実が土に触れて腐るのを防ぐために「マルチング」を行います。

一般的には黒色のビニールマルチや、敷き藁(わら)、ウッドチップ、バーク堆肥などが使われます。

マルチングを行うタイミングには、大きく分けて2つの流儀があります。

  1. 寒さ対策優先(12月頃): 寒冷地など、霜柱による被害を防ぎたい場合は、本格的な冬が来る前に株元を藁や腐葉土で覆います。
  2. 地温上昇・泥はね防止優先(2月下旬頃): 暖地では、冬の間は寒さに当てて、春の成長開始直前に黒マルチを張ることも一般的です。あまり早く黒マルチをすると、地温が上がりすぎて冬なのに株が成長しようとしてしまったり、虫の温床になったりすることがあるためです。

家庭菜園であれば、株元に腐葉土や藁を敷いてあげるだけでも十分な防寒効果と泥はね防止効果があります。特に寒冷地では、寒風による「乾燥害(寒風害)」を防ぐことが生死を分けます。

雪の下になれば逆に温度は安定しますが、雪が少なく風が強い地域では、不織布をべたがけ(植物の上に直接ふわっとかける)にしてあげると、極端な低温と風から守ることができます。

ただし、先述の通りいちごには「低温要求量」があり、一定期間(品種によりますが500時間程度)5度以下の低温に遭遇しないと花芽ができにくい性質があります。過保護にして室内に取り込み、ずっとポカポカの部屋に置くのはNGです。

「しっかりと寒さに当てつつ、土まで凍らせない」という絶妙なバランス管理が、春の豊作を約束します。

肥料のタイミング(元肥と追肥)

いちごは「肥料食い」と呼ばれるほど肥料を好む植物ですが、与えるタイミングを間違えると、肥料濃度が高すぎて根が焼ける「肥料焼け」を起こしたり、葉ばかりが茂って実がつかない「つるボケ」になったりします。まず、植え替え時に土に混ぜておく肥料を「元肥(もとごえ)」と言います。市販のいちご専用培養土なら元肥が入っているので追加は不要ですが、自分でブレンドする場合は、緩効性(ゆっくり長く効く)の化成肥料や、発酵鶏糞などを規定量混ぜ込みます。ここで重要なのは、植え付け直後の根に直接肥料が触れないようにすることです。

次に重要なのが「追肥(ついひ)」です。

  1. 活着後の追肥(11月頃): 秋植えの場合、植え付けから約1ヶ月後に一度、根の張りを助けるための軽い追肥を行います。
  2. 冬の休眠期(12月〜1月): 肥料は不要です。 いちごは休眠しており肥料を吸収しません。ここで肥料を与えすぎると、土の中に肥料分が残りすぎ、春先の根を痛める原因になります。
  3. 目覚めの追肥(2月下旬〜3月): ここが勝負所です。新芽が動き出すこのタイミングで、即効性のある化成肥料や液体肥料を与えると、一気に株が充実し、花を咲かせる準備が整います。

その後は、花が咲き始めた頃や実が膨らみ始めた頃に、葉の色などの様子を見ながら少量の追肥を行います。いちご専用の肥料には、実を甘くするための「リン酸」成分が多く含まれているため、初心者の方は専用肥料のパッケージ裏面の指示通りに与えるのが最も失敗が少ない方法です。

総括:適期を見極めクラウンを守る、いちご植え替え成功の鉄則

この記事のまとめです。

  • いちごの植え替え最適期は根の活着が良い10月中旬から11月中旬である
  • 秋植えをすることで冬の間にしっかりとした根が張り、春の収穫量と実の大きさが向上する
  • 寒冷地やタイミングを逃した場合は、無理をせず2月下旬からの春植えで対応する
  • 12月や1月の厳寒期の植え替えは、根が傷み枯死するリスクが高いため絶対に避ける
  • 植え替え時は成長点である「クラウン」を土に埋めない浅植えを徹底する
  • クラウンが埋まると腐敗の原因になり、露出過多は乾燥の原因になるため微調整が必須
  • プランター栽培ではpH調整済みの「いちご専用培養土」を使うのが最も安全で確実
  • 地植えの場合は植え付け2週間前までに苦土石灰で酸度調整を行い、堆肥でふかふかにする
  • 連作障害を避けるため、過去にバラ科やナス科を育てた土は再利用しない(または消毒する)
  • ランナーから取った苗を植える際は、ランナー跡を内側に向けると実が外側に垂れて収穫しやすい
  • 植え付け直後はたっぷりと水を与え、1週間程度は風の弱い日陰で養生させる
  • 冬の間は過保護にせず、適度な寒さに当てて花芽分化を促進させる(室内管理は避ける)
  • 防寒と泥はね防止のために、冬入り前か春先に藁やマルチで株元を覆うと良い
  • 追肥は「植え付け1ヶ月後」と「春の休眠明け」のタイミングが最重要である
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この記事を書いた人

植物を愛するガーデニングブロガー。
植物と暮らす楽しさを、みんなにわかりやすくお届けします。

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