夏から秋にかけて、愛らしい花を次々と咲かせてくれたトレニア。「寒くなってきたけれど、このまま枯らしてしまうのはもったいない」「どうにかして冬を越させて、来年も花を楽しみたい」と悩んでいませんか?
実は、トレニアは日本では「一年草」として扱われていますが、適切な環境さえ整えれば冬越しが可能な植物です。しかし、ただ室内に取り込むだけでは失敗してしまうことも少なくありません。
この記事では、園芸初心者の方でも実践できる「トレニアを冬越しさせるための具体的な手順」を、親株を活かす方法と挿し木で更新する方法の2パターンで徹底解説します。お気に入りのトレニアを春に再び満開にするための秘訣を、余すことなくお伝えします。
- トレニアは本来「多年草」であり、10℃以上の室内であれば冬越しが可能
- 冬越しの方法は「親株を切り戻して取り込む」か「秋に挿し木苗を作る」の2択
- 冬の間は肥料を一切与えず、水やりを控えめにして「休眠」に近い状態で管理する
- 「サマーミスト」や「カタリーナ」などの栄養系品種の方が冬越し成功率が高い
トレニアは冬越しできる?成功率を上げるための必須知識と準備
- 本来は多年草だが「一年草扱い」される理由と耐寒性の限界
- 成功の分かれ道!冬越しに適した品種と株の選び方
- 「親株管理」と「挿し芽更新」どちらを選ぶべき?メリット比較
- 室内管理が絶対条件!必要な温度・光・湿度の黄金ルール
- 準備は10月中に!寒波が来る前に行うべき鉢上げと剪定
本来は多年草だが「一年草扱い」される理由と耐寒性の限界

園芸店やホームセンターのラベルには「一年草」と書かれていることが多いトレニアですが、植物学的には熱帯・亜熱帯地方原産の「非耐寒性多年草」に分類されます。原産地では気温が年間を通して高いため、枯れることなく何年も花を咲かせ続けます。
では、なぜ日本では一年草として扱われるのでしょうか。それは、トレニアが寒さに極端に弱いからです。多くのトレニアは気温が10℃を下回ると成長が止まり、5℃を切ると細胞が壊死して枯れてしまいます。日本の冬、特に霜が降りるような環境では、屋外での生存はほぼ不可能です。種(タネ)を残して株自体は枯れてしまうというサイクルを繰り返すため、実質的に一年草と同じ扱いを受けているのです。
しかし、これは裏を返せば「温度さえ確保できれば冬越しは可能」ということを意味します。実際に、温室設備のある植物園や、日当たりの良い暖かいリビングルームなどでは、冬を越して翌春にさらに大きな株へと成長する姿が見られます。まずは「日本の冬の寒さから物理的に隔離してあげること」が、トレニア冬越しの第一歩となります。
成功の分かれ道!冬越しに適した品種と株の選び方

すべてのトレニアが冬越しに向いているわけではありません。トレニアには大きく分けて、種から育てる「実生(みしょう)系」と、挿し木で増やされた「栄養系」の2種類が存在します。冬越しに挑戦するなら、圧倒的に「栄養系トレニア」がおすすめです。
「サマーミスト」「カタリーナ」「ムーン」シリーズなどに代表される栄養系品種は、品種改良によって暑さだけでなく、環境変化への適応能力が高められています。株自体の生命力が強く、根の張りも良いため、冬の過酷な環境にも耐えうる体力を持っています。
見分け方のポイント
購入時のラベルに「栄養系」や具体的なブランド名(PWなど)が記載されていることが多いです。また、実生系に比べて葉が厚く、株全体ががっしりとして這うように広がる性質を持っているものが栄養系の特徴です。
一方で、安価で流通している実生系の小輪タイプは、株の寿命自体が短い傾向にあり、無理に冬越しさせるよりも、春に新しい苗を購入したり、こぼれ種から発芽したものを育てたりする方が効率的で、花付きも良い場合が多いです。ご自宅のトレニアがどちらのタイプかを確認してから、冬越しの計画を立てましょう。
「親株管理」と「挿し芽更新」どちらを選ぶべき?メリット比較

トレニアを冬越しさせる方法は、大きく分けて2つあります。今ある株(親株)をそのまま生かす方法と、秋に枝の一部を切って挿し木(挿し芽)をし、小さな苗を作って冬越しさせる方法です。それぞれの特徴を理解し、ご自身の環境に合った方法を選びましょう。
| 比較項目 | 方法1:親株をそのまま冬越し | 方法2:挿し芽(挿し木)苗で冬越し |
|---|---|---|
| 手軽さ | 剪定して取り込むだけで簡単 | 土やポットの準備、発根管理の手間がある |
| 必要なスペース | 大きな鉢を置く場所が必要 | 小さなポット一つで済み、省スペース |
| 成功率 | 根が回っていると弱りやすい(中) | 若い苗なので環境適応力が高い(高) |
| 春のスタート | 最初から大株で豪華に咲く | 小苗からスタートし、徐々に大きくなる |
| おすすめの人 | 室内に十分なスペースがある人 | 窓辺のスペースが限られている人 |
一般家庭、特にマンションのベランダガーデナーの方には、省スペースで管理でき、株の若返りも図れる「挿し芽更新」を強くおすすめします。しかし、立派に育った親株への愛着が強い場合は、思い切って切り戻して親株の冬越しに挑戦するのも素晴らしい園芸の楽しみ方です。
室内管理が絶対条件!必要な温度・光・湿度の黄金ルール

トレニアを冬越しさせるための「サンクチュアリ(聖域)」を室内に作る必要があります。以下の3つの条件が揃わないと、徐々に弱って枯れてしまうため注意が必要です。
トレニア冬越しの3大条件
- 温度:最低10℃以上をキープ
夜間の窓辺は冷え込むため、夜は部屋の中央や高い位置に移動させましょう。5℃程度でも耐えることはありますが、葉が黄色くなり落葉します。 - 光:ガラス越しの日光を十分に
冬の日照不足は徒長(ひょろひょろと伸びる)の原因になります。レースのカーテン越しの、できるだけ明るい南側の窓辺がベストポジションです。 - 湿度:乾燥させすぎない
暖房の風が直接当たる場所は厳禁です。エアコンの風は植物の水分を急激に奪い、ドライフラワーのように枯らせてしまいます。
特に注意したいのが「夜間の温度低下」です。昼間はポカポカしていても、明け方の窓際は外気と同じくらい冷え込みます。厚手のカーテンを閉める、断熱シートを使う、あるいは夜だけダンボールを被せるなどの防寒対策が、生死を分けることになります。
準備は10月中に!寒波が来る前に行うべき鉢上げと剪定

冬越しの準備は、人間が「肌寒い」と感じ始めたらすぐに取り掛かる必要があります。具体的には10月中旬から11月上旬がタイムリミットです。霜が一度でも降りて株がダメージを受けてからでは、手遅れになるケースがほとんどだからです。
この時期に行うべき最重要作業が「強剪定(きょうせんてい)」と「鉢上げ」です。地植えにしている場合は、根を傷めないように大きく掘り上げて鉢に移します。すでに鉢植えの場合も、地上部が茂ったままだと根とのバランスが悪く、室内の乾燥にも耐えられません。
株全体の3分の1から半分程度の高さまでバッサリと切り戻し、葉からの蒸散量を減らしてあげましょう。「まだ花が咲いているのにもったいない」と感じるかもしれませんが、ここで心を鬼にしてハサミを入れることが、植物の体力を温存し、冬を乗り切るためのエネルギーを根に蓄えさせることにつながります。蕾や花はすべて摘み取り、株を休ませるモードに切り替えてあげてください。
【実践手順】トレニアを翌春まで生かす具体的な冬越し管理テクニック
- 方法① 親株を冬越しさせる場合の剪定・植え替えステップ
- 方法② 秋の挿し芽(挿し木)でコンパクトに冬越しさせる手順
- 枯らさないための冬の水やり頻度と肥料の完全ストップ
- 葉が落ちた・元気がない時のトラブルシューティングと病害虫対策
- 春の復活ロードマップ!屋外への出し方と切り戻しのタイミング
方法① 親株を冬越しさせる場合の剪定・植え替えステップ

愛着のある親株をそのまま室内に入れる場合の手順を詳しく解説します。この方法は、春先のスタートダッシュが早く、最初からボリュームのある株を楽しめるのが最大のメリットです。
まず、作業は晴れた日の午前中に行います。清潔な園芸用ハサミを用意し、株の高さの半分程度を目安に切り戻します。この時、枯れた葉や黄色くなった下葉は丁寧に取り除いてください。これらは病気やカビの原因になります。もし鉢の中の土が古くなっている、あるいは根詰まりを起こしているようであれば、一回り大きな鉢に植え替えるか、根鉢(根と土の塊)を少し崩して新しい「観葉植物用の土」や「培養土」を足してあげましょう。
EL剪定後はたっぷりと水を与え、数日間は直射日光の当たらない明るい日陰(屋外)で養生させてから、徐々に室内の環境に慣らしていきます。いきなり暖房の効いた部屋に入れるとショックを受けるので、玄関先など温度変化の緩やかな場所を経由させるのがコツです。
方法② 秋の挿し芽(挿し木)でコンパクトに冬越しさせる手順


スペースを有効活用し、株の更新もできる「挿し芽」での冬越しは、最も推奨される方法です。9月下旬から10月中旬、最高気温が20℃〜25℃くらいの時期に行うのがベストです。
挿し芽の手順
- 挿し穂(さしほ)を作る
元気の良い枝の先端を5〜7cmほどカットします。切り口は鋭利なナイフやハサミで斜めにスパッと切ります。 - 葉を整理する
先端の葉を2〜3枚残し、下の方の葉はすべて取り除きます。蕾や花が付いている場合は、エネルギーを使わせないために必ず摘み取ります。 - 水揚げ
作った挿し穂を1時間ほど水に挿して吸水させます。 - 挿す
湿らせた「挿し木用の土」や「バーミキュライト」に割り箸で穴を開け、挿し穂を優しく挿し込みます。 - 管理
発根するまで(約2〜3週間)は、土を乾かさないように明るい日陰で管理します。
新芽が動き出し、十分に発根したことが確認できたら、3号(直径9cm)程度のポリポットに「草花用培養土」で植え替えます。この小さなポット苗の状態で、室内の窓辺で冬を越させます。場所も取らず、管理も楽に行えます。
枯らさないための冬の水やり頻度と肥料の完全ストップ


冬のトレニア管理で最も多い失敗原因は「水のやりすぎによる根腐れ」です。冬の間、トレニアは成長をほぼ止めて休眠に近い状態になります。根が水を吸い上げる力も弱まっているため、夏場と同じ感覚で水やりをすると、鉢の中が常に湿った状態になり、根が窒息して腐ってしまいます。
水やりは「土の表面が完全に乾いてから、さらに2〜3日待ってから」行うくらいが丁度良いです。指で土を触ってみて、湿り気を全く感じなくなってから、暖かい日の午前中に、鉢底から流れ出るまでたっぷりと与えます。受け皿に溜まった水は、冷え込みの原因になるため必ず捨ててください。
また、肥料は一切不要です。成長が止まっている時期に肥料を与えると、土の中の肥料濃度が高くなりすぎて根が水分を奪われる「肥料焼け」を起こして枯れてしまいます。活力剤(リキダスやメネデールなど)であれば、規定よりも薄めに希釈して月に1〜2回与える程度なら効果的ですが、固形肥料や液体肥料は春に新芽が動き出すまで封印してください。
葉が落ちた・元気がない時のトラブルシューティングと病害虫対策


室内で管理していると、葉がパラパラと落ちたり、色が薄くなったりすることがあります。これは主に「日照不足」か「寒さ」が原因です。葉が落ちても、茎が緑色をしていて張りがあれば、株は生きています。諦めずに、より日当たりの良い場所に移動させたり、夜間の保温対策を強化したりして様子を見てください。
また、乾燥した暖かい室内は、実は害虫の天国でもあります。特に注意すべきは「ハダニ」です。葉の裏に寄生し、養分を吸い取って葉を白っぽく変色させます。ハダニは水に弱いため、暖かい日の昼間に、霧吹きで葉の裏表に水をかける「葉水(はみず)」を行うことが有効な予防策になります。
カイガラムシにも注意!
茎に白い綿のようなものや、茶色い殻のようなものが付いていたらカイガラムシの可能性があります。見つけ次第、歯ブラシなどでこすり落とすか、専用の殺虫剤で駆除してください。
春の復活ロードマップ!屋外への出し方と切り戻しのタイミング


3月に入り、日差しが暖かくなってきても、すぐに屋外に出すのは危険です。「戻り寒波」や「遅霜」で一晩にして枯れてしまうリスクがあるからです。桜が散り、八重桜が咲く頃(関東以西では4月中旬〜下旬)を目安に、最低気温が安定して10℃を超えるようになってから屋外管理に切り替えます。
屋外に出す際は、いきなり直射日光に当てると「葉焼け」を起こします。最初の1週間は明るい日陰に置き、徐々に日向へと移動させて慣らしていきます(ハードニング)。
株が成長を再開し、新しい葉が展開してきたら、春の植え替えのタイミングです。挿し木苗の場合は大きな鉢やプランター、花壇へ定植します。親株の場合は、根詰まりを解消するために一回り大きな鉢に植え替えるか、伸びすぎた枝を再度切り戻して形を整えます。ここで初めて、緩効性肥料(置き肥)を与えて、シーズンのスタートを後押ししてあげましょう。
総括:トレニア冬越しの鍵は「室内の温度管理」と「乾燥気味の水やり」にあり
この記事のまとめです。
トレニアの冬越しは、日本の気候では少しハードルの高い作業ですが、ポイントさえ押さえれば決して不可能ではありません。「寒さから守る」「水をやりすぎない」「光を当てる」の3点を徹底することで、春にはまた愛らしい花と再会できるでしょう。手をかけた分だけ、翌春に咲く花の美しさは格別なものになるはずです。
- トレニアは本来多年草だが、日本の冬には耐えられないため室内管理が必須である
- 冬越しの成功には最低でも10℃以上、理想的には15℃程度の室温が望ましい
- 実生系よりも「サマーミスト」などの栄養系品種の方が冬越し成功率が高い
- 方法は「親株を取り込む」か「秋に挿し木苗を作る」の2通りがある
- 挿し木苗での冬越しは、省スペースで株の更新もできるためおすすめである
- 冬越しの準備(剪定・挿し木)は寒くなる前の10月〜11月上旬に完了させる
- 親株を取り込む際は、高さの半分程度まで切り戻して蒸散を抑える
- 室内では日当たりの良い窓辺に置くが、夜間の冷気対策を忘れないようにする
- 冬の水やりは土が完全に乾いてから数日待って行う「乾かし気味」を徹底する
- 冬の間は肥料を完全にストップし、株を休ませる
- 暖房の風が直接当たる場所は、極度の乾燥を招くため避ける
- 乾燥するとハダニが発生しやすくなるため、定期的に霧吹きで葉水を与える
- 春、屋外に出すタイミングは八重桜が咲く頃(4月中旬以降)が安全である
- 屋外に出す際はいきなり直射日光に当てず、徐々に環境に慣らす
- 冬越しに成功した株は春からの成長が早く、大株になりやすい











