「オルレアに似た花」をお探しですか?
オルレア(オルラヤ・グランディフローラ)は、その繊細なレースのような白い花で、春のガーデンを優雅に彩る人気の植物です。しかし、高温多湿に弱く、夏越しが難しいという大きな弱点も持っています。
また、庭や芝生で「オルレアの苗かな?」と思っていた葉が、実は「メリケントキンソウ」という素足で歩くと痛いトゲを持つ危険な雑草だった、というケースも少なくありません。
この記事では、園芸エキスパートの視点から、オルレアと危険な雑草との決定的な見分け方、そしてオルレアが枯れてしまう夏以降も庭を彩ってくれる、夏に強いおすすめの代替植物たちを栽培方法とともに詳しく解説します。定番のレースフラワー(Ammi)との違いから、最新のユーフォルビアまで、あなたの庭づくりに役立つ情報が満載です。
- オルレアの葉に似た危険な雑草「メリケントキンソウ」との見分け方
- オルレアが高温多湿に弱く、夏越しが難しい理由
- 夏に強くオルレアの代役を務められる「ユーフォルビア」や「ガウラ」の紹介
- 同じセリ科の宿根草「アストランティア」など、多年草で楽しむ選択肢
オルレアに似た花【雑草編】危険な見間違いに注意
- 最も危険な雑草「メリケントキンソウ」の見分け方
- オルレアとメリケントキンソウの決定的な違い
- ヤブジラミ(オヤブジラミ)との違い
- 侵略的外来種「セリ(ウォーターセロリ)」
最も危険な雑草「メリケントキンソウ」の見分け方
オルレアの葉にそっくりな植物として、ガーデナーが最も注意すべき雑草が「メリケントキンソウ(学名: *Soliva sessilis*)」です。春先に芝生や庭でオルレアのこぼれ種が発芽したように見えるため、非常に紛らわしいです。
メリケントキンソウは南米原産のキク科の一年草で、秋に発芽し、冬から春にかけて成長します。最大の特徴は、オルレアと似たパセリやシダのようにも見える細かく切れ込んだ葉です。この葉がロゼット状に地面を這うように広がるため、オルレアの幼苗と見間違えてしまうのです。
しかし、花が咲けば違いは一目瞭然です。オルレアのような白いレース状の花は咲かせず、非常に小さく目立たない、黄色の筒状花と無花弁の雌性花で構成された頭花を葉の付け根につけます。
そして最大の問題は、花が咲き終わった後(春から初夏)にできる「実」です。この実には固く鋭いトゲがあり、これがメリケントキンソウが「ステッカーウィード(くっつく草)」と呼ばれる所以です。
危険!メリケントキンソウのトゲ
メリケントキンソウのトゲは非常に硬く、素足で芝生を歩くと突き刺さって激痛が走ります。子どもやペットが遊ぶ庭では特に危険です。オルレアの葉だと思って放置していると、春以降に大変なことになります。葉の形が似ていても、芝生や踏み固められた場所にロゼット状に広がっていたら、早急に特定外来生物として駆除の対象となる場合もあるメリケントキンソウを疑ってください。
オルレアは花壇で大切に育てられる園芸植物、メリケントキンソウは芝生に害をなす雑草であり、似て非なるものなのです。
オルレアとメリケントキンソウの決定的な違い

「じゃあ、どうやって見分ければいいの?」という方のために、オルレアとメリケントキンソウの決定的な違いをまとめます。特に、まだ花が咲いていない「葉」の段階での見極めが重要です。
オルレアの葉も羽状に細かく裂けますが、メリケントキンソウの葉はより細かく、柔らかい毛(pilose)で覆われているのが特徴です。また、オルレアは最終的に60cmから1m近くまで立ち上がりますが、メリケントキンソウは徹底して低く、地面を這うようにマット状に広がります。高草丈は通常5~10cm程度で、こぼれ種からの発芽や込み合った場所では若干高くなる場合があるものの、基本的には這い性の生育形を示します。
最も確実な見分け方は、やはり生育場所と全体の姿です。オルレアが花壇や切り花畑で上に向かって成長するのに対し、メリケントキンソウは芝生や踏み固められた道端で、放射状に茎を伸ばして広がります。
これらの違いを、以下の表にまとめました。スマートフォンの方は横にスクロールしてご確認ください。
| 比較項目 | オルレア (*Orlaya grandiflora*) |
メリケントキンソウ (*Soliva sessilis*) |
|---|---|---|
| 科 | セリ科 (Apiaceae) | キク科 (Asteraceae) |
| 草丈 | 60cm ~ 1m程度 | 5cm以下。地面を這う |
| 花の色 | 純白 | 黄緑色 |
| 花の特徴 | レース状の大きな傘形花序 | 葉の付け根に小さく目立たない花 |
| 実・種 | 平たく、縁にトゲがあるが柔らかい | 硬く鋭いトゲを持つ。踏むと痛い |
| 生育場所 | 花壇、コンテナ | 芝生、踏み固められた土、道端 |
| 生育型 | 一年草 | 冬型一年草(秋に発芽) |
ヤブジラミ(オヤブジラミ)との違い

もうひとつ、オルレアとよく間違えられる雑草に「ヤブジラミ(学名: *Torilis japonica*)」や「オヤブジラミ」があります。
こちらはメリケントキンソウとは違い、オルレアと同じセリ科の植物です。そのため、花が白い傘形(複散形花序)である点や、葉の形がオルレアに似ているため、非常に紛らわしいです。
ヤブジラミは二年生植物で、オルレアが60cm~1m程度なのに対し、ヤブジラミは30~80cm程度の高さになり、オルレアと比較すると同等またはやや低い傾向があります。ただし、茎は直立してよく枝分かれし、頑丈な構造を持ちます。
最大の違いは「花の時期」と「花の華やかさ」です。オルレアは春から初夏(3月~7月)に咲き、暑くなると枯れていきます。一方、ヤブジラミはオルレアが終わった後の夏(7月~8月)に開花のピークを迎えます。
また、オルレアの花は、外側の花弁が非対称に大きく発達し、非常に華やかで「レース」のように見えますが、ヤブジラミの花は全体的に小さく、地味な印象です。
ELヤブジラミの実は、カギ状のトゲ(剛毛)に覆われており、これが動物や人の服にくっついて種を広げます。「ソック・デストロイヤー(靴下破壊者)」という別名があるほどで、これもまた庭には招かれざる雑草と言えるでしょう。
侵略的外来種「セリ(ウォーターセロリ)」


最後に、これも同じセリ科で白い傘形の花を咲かせるため、オルレアと間違われる可能性がある植物として「セリ(学名: *Oenanthe javanica*)」を紹介します。
セリは、日本では春の七草として古くから食用にされますが、その一方で、ウォーターセロリ、ジャワウォータードロップワートなどと呼ばれ、海外の一部地域では侵略的な外来種として問題になっています。
オルレアが日当たりと水はけのよい土を好むのに対し、セリは湿った土壌や水中を好みます。見た目も、パセリやセロリに似た葉と、夏から秋(7月~9月)に咲く白い小さな花の集まり(傘形花序)が特徴です。
オルレアはこぼれ種で増えますが、セリは地面を這う茎(ストロン)を伸ばし、その節々から根を出して爆発的に増殖します。
安易に植えないで!
セリは「ウォーターガーデン」や「レインガーデン」用の植物として紹介されることもありますが、その侵略性の高さから、ミズーリ州などでは有害雑草に指定されています。オルレアに似た白い可憐な花だからといって安易に庭に植えると、密なコロニーを形成して手に負えなくなる可能性があります。特に湿地や水辺の近くでは、生態系への影響も懸念されるため、管理には最大限の注意が必要です。
オルレアに似た花【栽培品種】厳選おすすめ5選
- 定番「レースフラワー(Ammi)」との違いと選び方
- 夏に強い!ユーフォルビアとガウラ
- 宿根草で楽しむ「アストランティア」
- 純白のマット「イベリス・センペルヴィレンス」
- アキレアとカスミソウの注意点
定番「レースフラワー(Ammi)」との違いと選び方


オルレアに似た園芸植物として、まず筆頭に挙がるのが「レースフラワー」です。ただし、「レースフラワー」と呼ばれるものには、主に2つの異なる種類があり、性質が異なります。
ひとつは「ホワイトレースフラワー(学名: *Ammi majus*)」です。オルレアと同じセリ科の一年草で、見た目も非常に似ていますが、決定的な違いが2つあります。
1つ目は「花の構造」です。オルレアの花は、外側の花びらが非対称に大きく発達し、まるで白いハンカチを広げたように華やかです。一方、*Ammi majus*の花は、より均一で繊細なレース編みのような印象です。
2つ目は「草丈」です。オルレアが60cm~80cm程度と比較的コンパクトなのに対し、*Ammi majus*は非常に大きくなります。秋まきにすると、高さが1m~1.5m前後に達することがあります。倒れやすいため、支柱が必須です。
もうひとつは「ブルーレースフラワー(学名: *Didiscus caeruleus*)」です。こちらは名前の通り青やピンクの花色がありますが、性質がデリケートです。温多湿に一定の耐性を持ちながらも過湿に弱く、長雨に当たると根腐れしやすいため、風通しよく、過湿を避ける場所での管理が推奨されます。
選び方のポイント
・華やかでコンパクト(60-80cm)なのは → オルレア
・野生的で高身長(2m超)なダイナミックさを求めるなら → ホワイトレースフラワー (*Ammi majus*)
・青やピンクの繊細なレースを楽しみたい(ただし管理は難)→ ブルーレースフラワー (*Didiscus*)
このように、求める景観や管理の手間に合わせて選ぶのが正解です。
夏に強い!ユーフォルビアとガウラ


オルレアの最大の弱点は「夏の高温多湿に弱い」ことです。春にどれだけ美しく咲いても、梅雨を過ぎると一気に枯れてしまいます。
そこで、オルレアが枯れた後の夏花壇を「白い繊細な花」で埋めたい場合に、機能的な代役として強くおすすめしたいのが「ユーフォルビア・ダイヤモンドフロスト」と「ガウラ」です。
ユーフォルビア・ダイヤモンドフロスト(*Euphorbia hypericifolia*の園芸品種)は、まさにオルレアの弱点を完璧に補う植物です。耐暑性が非常に強く、開花期が4月~11月頃までと驚異的な長さを誇ります。オルレアのようなレース状ではありませんが、無数の純白の小花がカスミソウのように広がり、庭に涼しげな印象を与えてくれます。水はけの良い用土で、春から秋の成長期に追肥を与えるだけで、ほぼ途切れることなく咲き続けます。伸びすぎたら株の1/3ほどを切り戻すと、再びこんもりと茂ります。
ガウラ(*Gaura lindheimeri*)も、同じく耐暑性・耐寒性ともに強い宿根草です。「白蝶草(ハクチョウソウ)」の和名の通り、蝶が舞うような白い花(ピンクもあります)を、5月~11月まで咲かせ続けます。特別な夏越し対策は不要です。日当たりと水はけの良い場所を好み、伸びすぎて姿が乱れたら草丈の半分~1/3程度で切り戻すと、脇芽が伸びて再び開花します。



宿根草で楽しむ「アストランティア」


「オルレアと同じセリ科の仲間で、宿根草(多年草)はないの?」という方には、「アストランティア(*Astrantia major*)」がおすすめです。
アストランティアは、ヨーロッパ原産のセリ科の宿根草です。オルレアやレースフラワーとはまた違った、まるで針山(ピンクッション)のような個性的で美しい花を咲かせます。花色は白、ピンク、赤系と豊富です。
栽培におけるオルレアとの最大の違いは「日照条件」です。日当たりを好むオルレアに対し、アストランティアは夏の強い日差しを嫌います。午前中だけ日が当たるような半日陰や、落葉樹の下のような木漏れ日が差す場所が最適です。
ただし、オルレア同様、日本の夏の高温多湿は苦手です。夏場は肥料分が残っていると根腐れしやすいため、追肥は春と秋に行い、夏は肥料を控えます。水はけと水持ちのバランスが良い用土(例:鹿沼土4、軽石3、腐葉土3の配合土など)で、夏は涼しく管理することが長く楽しむコツです。
品種登録(PVP)に注意
アストランティアには「ローマ」や「ルビー・ウエディング」、「スターオブマジック」など、多くの美しい園芸品種があります。これらの品種の多くは、種苗法(PVP)によって登録・保護されている可能性があります。登録品種を育成者の許諾なく増殖(株分けや挿し木、タネまき)して譲渡・販売する行為は法律で禁じられています。株分けなどで増やす際は、その品種が登録品種でないか確認しましょう。
純白のマット「イベリス・センペルヴィレンス」


春に、オルレアと同じ純白の花を、異なる形で楽しみたい方には「イベリス・センペルヴィレンス」がぴったりです。アブラナ科の宿根草(多年草)で、和名を「トキワナズナ」と言います。
オルレアが立ち上がってレースのようになびくのに対し、イベリスは地面を這うように広がり、春(4月~6月)になると株を覆い尽くすほどびっしりと純白の小花を咲かせます。まるで雪が積もったかのような、見事な白いマット状になります。
日当たりと風通しの良い場所、そして水はけの良い土を好みます。栽培上の注意点は、オルレアやアストランティアと同様に「高温多湿に弱い」ことです。特に夏の強い直射日光や西日を嫌います。梅雨時期からは水をやりすぎず、乾燥気味に管理するのが株を蒸らさないコツです。
また、イベリスは「移植を嫌う」性質があります。一度植えたら、なるべく場所を動かさなくて済むように、植え場所は最初によく考えて決めましょう。ポット苗を植え付ける際も、根鉢を崩さないように細心の注意を払ってください。花が終わった後は、花がらを刈り込むと、株の風通しが良くなり、きれいな状態を保てます。
アキレアとカスミソウの注意点


オルレアの代わりとして、最後に「アキレア」と「カスミソウ」をご紹介します。ただし、これらはオルレアの「夏に弱い」という弱点を解決するものではなく、むしろ同じ弱点を持つため、栽培には注意が必要です。
「アキレア・パール」(*Achillea ptarmica* ‘The Pearl’)は、ノコギリソウの仲間で、真珠のような白い八重咲きの小花を咲かせる宿根草です。とても可愛らしいのですが、佐渡など涼しい地域では良いものの、平地では夏の暑さで蒸れやすい弱点があります。植える場合は、地下茎で広がることを考慮し、水はけが良く風通しの良い場所を選んでください。
「カスミソウ(ジプソフィラ)」も、繊細な小花がオルレアの「フィラー(脇役)」としての役割と似ています。しかし、カスミソウはオルレア以上に栽培が難しい上級者向けの植物かもしれません。高温多湿を極端に嫌い、夏の暑さも苦手です[45]。さらに、植え替えを非常に嫌う「直根性」のため、タネは直播きが基本です。
栽培の難易度を知ることが大切
オルレア、アキレア・パール、カスミソウは、いずれも「繊細な白い花」という共通点を持ちますが、同時に「高温多湿に弱い」という共通の弱点も持っています。オルレアがうまく育たない環境では、これらの植物も育ちにくい可能性が高いです。もし日本の夏でも元気に咲く白い花をお探しなら、H3-2.2で紹介した「ユーフォルビア・ダイヤモンドフロスト」や「ガウラ」を選ぶのが、最も確実で賢明な選択と言えるでしょう。
総括:オルレアに似た花を見極め、夏に強い庭づくりへ
この記事のまとめです。
- オルレアの葉に似た雑草に「メリケントキンソウ」がある
- メリケントキンソウはキク科で、オルレアと異なり黄緑色の目立たない花をつける
- メリケントキンソウの実は硬いトゲを持ち、素足で踏むと危険である
- オルレアはセリ科で、背丈が60cm以上になり、白いレース状の美しい花を咲かせる
- メリケントキンソウは背丈が5cm以下で、地面を這うように広がる
- 同じセリ科の雑草「ヤブジラミ」もオルレアに似るが、花が地味で夏に咲く
- 湿地に生える「セリ(*Oenanthe javanica*)」は侵略性が高く、庭植えには注意が必要である
- オルレアの最大の弱点は、高温多湿に弱く、夏越しができないことである
- オルレアに似た園芸種「ホワイトレースフラワー(*Ammi majus*)」は、草丈が2m以上に達することがある
- オルレアの花は外側の花弁が大きく、*Ammi majus*より華やかに見える
- オルレアの「夏に弱い」弱点を補う代替植物として「ユーフォルビア・ダイヤモンドフロスト」がある
- ダイヤモンドフロストは耐暑性が強く、春から晩秋まで白い小花を咲かせ続ける
- 同じく「ガウラ」も耐暑性・耐寒性が強く、開花期が非常に長い
- 宿根草の「アストランティア」はオルレアと同じセリ科だが、夏の直射日光を嫌い半日陰を好む
- 「イベリス・センペルヴィレンス」は春に白いマット状の花を咲かせるが、移植と高温多湿を嫌う











