庭をおしゃれに彩るシェードガーデンや寄せ植えのアクセントとして人気のラミウムですが、一部では「ラミウムを植えてはいけない」という声も聞かれます。その主な理由は、美しい見た目とは裏腹に、地下茎で旺盛に繁殖するその生命力の強さにあります。この記事では、ラミウムを植えてはいけないと言われる理由を深掘りしつつ、人気のスターリングシルバーなどラミウムの種類ごとの特徴、上手な育て方のコツ、そして気になる毒性はありますか?という疑問や、ラミウムを植える場所はどこがいいのか、といった具体的な管理方法まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
- ラミウムを植えてはいけないと言われる具体的な理由
- ラミウムを上手に管理するための育て方のコツ
- 人気の品種スターリングシルバーなどの特徴と選び方
- 増えすぎた場合の対処法と寄せ植えでの活用術
ラミウムを植えてはいけないと言われる理由
- 旺盛に広がる地下茎の性質
- 他の植物の生育を阻害する可能性
- 高温多湿に弱く夏越しが難しい
- ラミウムに毒性はありますか?
旺盛に広がる地下茎の性質
ラミウムを植えてはいけないと言われる最大の理由は、その驚異的な繁殖力にあります。ラミウムは地下に茎を伸ばす「地下茎」や、地面を這うように伸びる「ほふく枝」によって、次々と新しい株を増やしていく性質を持っています。
このため、安易に地植えしてしまうと、あっという間に想定外の場所まで広がり、庭全体を覆い尽くしてしまう可能性があります。一度広がってしまうと、まるで雑草のように管理が大変になり、完全に除去するのは非常に困難です。地中に少しでも地下茎が残っていると、そこから再び芽を出して再生するため、根絶するには根気強い作業が必要となります。
グランドカバー目的での地植えは要注意
雑草対策としてグランドカバーに利用しようと考えてラミウムを植えた結果、逆にその管理に追われることになり後悔するケースは少なくありません。その繁殖力を理解し、コントロールできる環境でなければ、地植えは避けるのが賢明です。
他の植物の生育を阻害する可能性
ラミウムの旺盛な生育は、他の植物にとって脅威となることがあります。繁殖して密生したラミウムは、地面を覆い尽くし、周辺にある他の植物の生育に必要な光や土の中の水分、栄養分を奪ってしまいます。
特に、ラミウムよりも背の低い植物や、成長がゆっくりな種類の植物は、ラミウムに覆われてしまうことで光合成ができなくなり、弱ってしまったり、最悪の場合枯れてしまったりすることもあります。寄せ植えに利用する際も、ラミウムだけが大きく育ちすぎて、他の花の居場所をなくしてしまうなど、全体のバランスを崩す原因になりがちです。
このように、他の植物との共存が難しい場合があることも、「植えてはいけない」と言われる理由の一つです。
高温多湿に弱く夏越しが難しい
ラミウムは元々、ヨーロッパなどの冷涼な気候の地域が原産です。そのため、日本の夏特有の高温多湿な環境が非常に苦手です。特に梅雨の時期から夏にかけて、気温と湿度が上がると株が蒸れてしまい、葉が溶けるように枯れたり、根腐れを起こしやすくなります。
せっかく春に美しい姿を楽しめても、夏を越せずに枯れてしまうことが多いため、一年草のような扱いになってしまうことも少なくありません。日当たりが良すぎる場所や、西日が強く当たる場所、風通しの悪いジメジメした場所では、夏越しの難易度はさらに上がります。
この耐暑性の弱さも、特に暖地での栽培において「植えてはいけない」と見なされる要因となっています。
ラミウムに毒性はありますか?
ラミウムの見た目から、毒性があるのではないかと心配される方もいらっしゃるかもしれません。しかし、結論から言うと、ラミウムに毒性はありません。人や犬、猫などのペットが誤って口にしてしまっても、害を及ぼすことはないとされています。
この誤解は、ラミウムがシソ科の植物であり、同じシソ科の中には毒性を持つ植物が存在することや、見た目が一部の有毒植物と似ていることから生じることがあるようです。例えば、毒性を持つムラサキケマンと間違われることがありますが、これらは全く別の植物です。
そのため、毒性を心配してラミウムの栽培をためらう必要はありません。安心してガーデニングに取り入れることができます。
安全に楽しめる植物
ラミウムは毒性がないため、お子様やペットがいるご家庭の庭でも安心して育てることができます。ただし、植物アレルギーなどがある場合は注意が必要です。
ラミウムを植えてはいけない場合の育て方
- ラミウムの種類と特徴
- 人気のスターリングシルバーとは
- ラミウムを植える場所はどこがいい?
- 上手なラミウムの育て方
- 寄せ植えでの管理ポイント
- 増えすぎた場合の対処法
- まとめ:ラミウムを植えてはいけない理由を知ろう
ラミウムの種類と特徴
ラミウムにはいくつかの種類(種)があり、園芸店でよく見かけるのは主に「ラミウム・マクラツム」と「ラミウム・ガレオブドロン」の園芸品種です。それぞれの特徴を知ることで、ご自身の庭に合った品種を選ぶことができます。

ラミウム・マクラツム (Lamium maculatum)
一般的に「ラミウム」として流通しているものの多くがこのマクラツム種です。葉の中央に銀白色の斑が入るのが特徴で、カラーリーフとして非常に人気があります。草丈は20cm程度と低く、横に這うように広がります。春から初夏にかけて、ピンクや白、紫色の花を咲かせます。比較的、高温多湿には弱い傾向があります。
- 代表的な品種: ‘ビーコン・シルバー’、‘ホワイト・ナンシー’、‘ピンク・ピューター’、‘スターリングシルバー’など
ラミウム・ガレオブドロン (Lamium galeobdolon)
マクラツム種よりも強健で、耐暑性もやや強いとされる種類です。草丈は40cmほどと少し高くなり、黄色い花を咲かせるのが大きな特徴です。葉には銀白色の斑が入る品種が多く、こちらも美しいです。繁殖力はマクラツム種同様に旺盛なので、管理には注意が必要です。
- 代表的な品種: ‘ハーマンズ・プライド’、‘バリエガタ’など
種類 | 主な特徴 | 花の色 | 草丈 | 性質 |
---|---|---|---|---|
ラミウム・マクラツム | 葉の中央に銀白色の斑が入る品種が多い。横に広がる。 | ピンク、白、紫 | 約15~20cm | 高温多湿にやや弱い。 |
ラミウム・ガレオブドロン | 黄色い花を咲かせる。マクラツムより強健。 | 黄 | 約30~40cm | 比較的、耐暑性がある。 |
人気のスターリングシルバーとは
数あるラミウムの品種の中でも、特に人気が高いのが「スターリングシルバー (Sterling Silver)」です。この品種はラミウム・マクラツムに属し、その名の通り、まるでスターリングシルバー(純銀)のような輝きを放つ、ほぼ全面が銀白色の葉を持っています。
葉の縁にわずかに緑色が残るだけで、そのほとんどが美しいシルバーリーフで覆われているため、日陰の庭をぱっと明るく見せてくれる効果は絶大です。春には優しいピンク色の花を咲かせ、銀色の葉とのコントラストが非常に美しいと評判です。
性質としては、他のラミウム・マクラツムの品種と同様に、高温多湿を苦手としますが、その美しさからシェードガーデンや寄せ植えの材料として絶大な人気を誇ります。他の植物との組み合わせもしやすく、特に濃い葉色の植物と合わせると、お互いを引き立て合い、洗練された雰囲気の植栽を作り出すことができます。
スターリングシルバーの魅力
- ほぼ全面が銀白色に輝く美しい葉
- 日陰の庭を明るくする効果が高い
- 優しいピンク色の花とのコントラストが美しい
- 寄せ植えや他の植物との相性も抜群
ラミウムを植える場所はどこがいい?
ラミウムを上手に育てるためには、植える場所の選定が最も重要です。ラミウムの性質を考慮すると、以下の条件を満たす場所が最適と言えます。
最適な場所:明るい日陰~半日陰
ラミウムは強い直射日光を嫌います。特に夏の強い日差しに当たると葉焼けを起こしてチリチリに枯れてしまうため、一日中日が当たる場所は避けましょう。木漏れ日が差すような落葉樹の下や、建物の東側で午前中の柔らかい光だけが当たる場所、あるいは一日を通して明るい日陰となるような場所が理想的です。
水はけの良い土壌
高温多湿を苦手とするラミウムにとって、水はけの良さは必須条件です。雨が降った後にいつまでも水が溜まっているような、ジメジメした粘土質の土壌は根腐れの原因になります。もし水はけが悪い場所に植える場合は、腐葉土やパーライトなどを混ぜ込んで土壌改良を行う必要があります。
避けるべき場所
- 西日が強く当たる場所: 夏の厳しい西日は葉焼けの最大の原因です。
- 一日中日が当たる南向きの場所: 乾燥と高温で弱ってしまいます。
- 風通しが悪く、湿気がこもりやすい場所: 蒸れて病気の原因になります。



上手なラミウムの育て方
「植えてはいけない」と言われる性質を理解した上で、その繁殖力をコントロールし、美しく育てるためのポイントを解説します。最も重要なのは、「植えっぱなしにしない」という意識です。
一番のおすすめは「鉢植え」管理
ラミウムの旺盛な繁殖力を最も安全にコントロールできるのが、鉢植えやプランターでの栽培です。鉢の中であれば地下茎が広がる心配がなく、管理が非常に楽になります。また、季節に応じて日当たりの良い場所から半日陰へ移動させるなど、環境の調整が容易な点も大きなメリットです。
鉢植えの注意点
鉢の底穴から伸びた茎や根が地面に接触すると、そこから根付いて繁殖を始めることがあります。鉢を地面に直接置かず、レンガやスタンドの上に置くなどの工夫をしましょう。
地植えにする場合の対策
どうしても地植えにしたい場合は、地下茎が広がらないように物理的な対策を施すことが不可欠です。園芸店などで販売されている「根止めシート」やプラスチックの板などを、ラミウムを植える範囲の周りに30cm程度の深さまで埋め込み、根の広がりをブロックします。
剪定(切り戻し)
ラミウムは生育旺盛なので、定期的な剪定が欠かせません。特に、梅雨に入る前の5月~6月頃、花が終わったタイミングで全体の半分~3分の1程度を切り戻し、風通しを良くしてあげましょう。これにより、夏の蒸れを防ぎ、病気の予防にも繋がります。また、伸びすぎた茎は適宜カットして、形を整えるようにします。
水やりと肥料
水やりは、土の表面が乾いたらたっぷりと与えるのが基本です。過湿を嫌うため、常に土が湿っている状態は避けましょう。地植えの場合は、根付いてしまえば降雨に任せる程度でほとんど水やりの必要はありません。肥料は多くを必要とせず、植え付け時に緩効性肥料を元肥として与える程度で十分です。鉢植えの場合は、春と秋に液体肥料を少量与えると生育が良くなります。
病害虫対策
風通しが悪いと、うどんこ病や斑点病などが発生することがあります。また、湿った環境を好むナメクジの食害にも注意が必要です。ナメクジは夜間に活動するため、見つけ次第駆除するか、専用の駆除剤を使用しましょう。剪定をして風通しを良くすることが、最大の病害虫対策になります。
寄せ植えでの管理ポイント
ラミウムは、その美しい葉色から寄せ植えのカラーリーフとして非常に重宝されます。しかし、その旺盛な性質を理解せずに使うと、他の植物を圧倒してしまい、失敗の原因となります。上手に寄せ植えで活用するための管理ポイントは以下の通りです。
生育旺盛な植物と組み合わせる
ラミウムの成長スピードに負けないような、同じく生育旺盛な植物と組み合わせるのが一つの方法です。ただし、コンテナという限られたスペースの中では、植物同士の競争が激しくなり、全体の管理が難しくなる可能性もあります。
ポットごと植え込む
一番手軽で効果的な管理方法は、ラミウムをビニールポットに入れたまま、寄せ植えの鉢に植え込むというテクニックです。ポットが物理的なバリアとなり、ラミウムの根が鉢全体に広がるのを防いでくれます。これにより、他の植物の生育領域を侵すことなく、寄せ植えのアクセントとしてラミウムの葉色だけを楽しむことができます。
ポット植えのメリット
- 根の広がりを簡単に制限できる。
- 他の植物への影響を最小限に抑えられる。
- 寄せ植えの解体や植え替えが楽になる。
こまめな剪定を心がける
地上部も、伸びすぎたつるや茎が他の植物に覆いかぶさらないよう、こまめに剪定して大きさをコントロールすることが大切です。美しい寄せ植えを維持するためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。



増えすぎた場合の対処法
もし地植えのラミウムが管理の範囲を超えて増えすぎてしまった場合、対処は早ければ早いほど楽になります。放置すると根絶が非常に困難になるため、気づいた時点ですぐに行動しましょう。
手作業での除去
最も基本的な対処法は、手で引き抜いたり、スコップで掘り起こしたりする方法です。このとき、地下茎や根をできるだけ地中に残さないように、丁寧に取り除くことが重要です。中途半端に根が残っていると、そこからまた再生してしまいます。雨が降った後など、土が柔らかくなっている時に作業をすると、根が抜けやすくなります。
除草剤の使用
広範囲に広がってしまい、手作業での除去が困難な場合は、除草剤の使用も選択肢の一つとなります。地下茎まで枯らす効果のある「グリホサート系」の除草剤が有効とされています。ただし、除草剤はラミウムだけでなく、周辺にある他の植物も枯らしてしまう強力な薬剤です。使用する際は、以下の点に細心の注意を払ってください。
除草剤使用時の注意点
- 枯らしたくない植物にかからないよう、風のない日に作業する。
- 製品のラベルに記載されている使用方法、希釈倍率を厳守する。
- 子供やペットが近づかないよう配慮する。
- 環境への影響を考慮し、必要最小限の使用に留める。
他の大切な植物を植えていない場所であれば有効な手段ですが、基本的にはまず手作業での除去を試み、最終手段として検討するのが良いでしょう。
まとめ:ラミウムを植えてはいけない理由を知ろう
ラミウムはその美しい葉でガーデナーを魅了しますが、その裏には旺盛な性質が隠されています。この記事のポイントをまとめました。
- ラミウムを植えてはいけないと言われる最大の理由は地下茎による旺盛な繁殖力
- 地植えにすると管理が難しくなり、他の植物の生育を阻害することがある
- 日本の高温多湿な夏が苦手で、夏越しできずに枯れる場合も多い
- ラミウム自体に毒性はないため、ペットや子供がいる家庭でも安全
- 品種にはマクラツム種とガレオブドロン種があり、性質が少し異なる
- スターリングシルバーは銀葉が美しい人気のマクラツム種
- 植える場所は直射日光を避けた、水はけの良い明るい日陰が最適
- 最も安全な育て方は、根の広がりを制限できる鉢植えでの管理
- 地植えにする場合は根止めシートなどで物理的に範囲を区切ることが不可欠
- 梅雨前の剪定は、夏の蒸れを防ぎ病害虫対策に効果的
- 寄せ植えではポットごと植え込むと管理が楽になる
- ナメクジの食害に遭いやすいため、湿気対策が重要
- 増えすぎた場合は、根こそぎ手で取り除くのが基本
- 最終手段としてグリホサート系の除草剤が有効だが、使用には注意が必要
- 性質を理解し適切に管理すれば、庭を彩る素晴らしい植物になる