大切に育てているゼラニウムの花が咲かないと、心配になりますよね。葉っぱばかりが茂ってしまったり、せっかくついた蕾が開かないまま枯れてしまったり。実は、ゼラニウムの育て方にはちょっとしたコツがあり、適切な切り戻し時期や、木質化して葉がない株のケア方法を知ることで、見違えるように元気を取り戻すことがあります。この記事では、ゼラニウムの花をたくさん咲かせるにはどうすれば良いのか、その原因と具体的な対策を詳しく解説します。
- ゼラニウムの花が咲かない原因
- 葉ばかり茂る株の肥料選びのポイント
- 木質化した古い株を剪定で再生させる方法
- 季節ごとの正しい管理と育て方のコツ
ゼラニウムの花が咲かない主な原因
- 葉っぱばかり茂るのは肥料が原因かも
- 蕾が開かないのは日照不足が問題
- 基本的な育て方を見直そう
- 根詰まりや病気の可能性
- 木質化して葉がない株の再生法
葉っぱばかり茂るのは肥料が原因かも
ゼラニウムの葉は青々と茂っているのに、なぜか花が咲く気配がない。このような場合、肥料の与え方に原因がある可能性が高いです。
植物の成長には「窒素(チッソ)・リン酸・カリ」という三大要素が必要不可欠ですが、それぞれ異なる役割を持っています。
- 窒素(N):葉や茎の成長を促す(葉肥え)
- リン酸(P):花や実の付きを良くする(花肥え・実肥え)
- カリ(K):根の成長を促し、植物全体を丈夫にする(根肥え)
もし、あなたが良かれと思って与えている肥料が、窒素成分の多いもの、例えば油粕などである場合、それが葉ばかりを茂らせ、花が咲かない原因になっているかもしれません。特にゼラニウムは窒素過多の影響が顕著に現れやすい植物です。花を咲かせるためには、窒素を控えめにし、花付きを促進するリン酸を多く含んだ肥料に切り替える必要があります。
ポイント
肥料のパッケージに記載されている「N-P-K」の比率を確認し、「P(リン酸)」の数値が高いものを選びましょう。
蕾が開かないのは日照不足が問題
ゼラニウムは日光をこよなく愛する植物です。花を咲かせるためには、光合成によって十分なエネルギーを蓄える必要があります。もし、ゼラニウムを日当たりの悪い場所に置いているなら、それが蕾が開かない、あるいは花数が少ない根本的な原因かもしれません。
一般的に、ゼラニウムが元気に花を咲かせるためには、1日に最低でも6時間以上の直射日光が必要とされています。日照時間が不足すると、株がひょろひょろと間延び(徒長)し、弱々しい印象になるだけでなく、花の生産に必要なエネルギーを作り出せなくなってしまいます。

ただし、日本の真夏の強すぎる日差しは葉焼けの原因になることも。特に西日は植物にとって大きな負担となるため、夏場は午前中の光が当たる場所や、レースのカーテン越しに光が入るような場所で管理するのが理想的です。
基本的な育て方を見直そう
肥料や日照に問題がないのに花が咲かない場合、水やりや風通しといった基本的な育て方を見直す必要があります。ゼラニウムはもともと南アフリカの乾燥した地域が原産のため、日本の高温多湿な環境、特に梅雨時期は苦手です。
水の与えすぎは根腐れのもと
ゼラニウム栽培で最も多い失敗の一つが、水の与えすぎによる「根腐れ」です。土が常にジメジメと湿った状態にあると、根が呼吸できなくなり、腐ってしまいます。根が傷むと、水分や養分を正常に吸収できなくなり、株全体が弱って花を咲かせるどころではなくなってしまいます。
水やりの基本は、「土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと与える」ことです。そして、受け皿に溜まった水は必ず捨ててください。これを徹底するだけで、根腐れのリスクを大幅に減らすことができます。
風通しの良い環境を確保する
過湿を防ぐもう一つのポイントは、風通しです。葉が密集して風通しが悪くなると、株元が蒸れて病気の原因になります。特に、灰カビ病などは多湿な環境で発生しやすいため、定期的に枯れた下葉を取り除いたり、枝が込み合っている部分を剪定したりして、株全体の風通しを良くしてあげましょう。
根詰まりや病気の可能性
長年同じ鉢で育てているゼラニウムの花付きが悪くなってきたら、「根詰まり」を疑ってみましょう。鉢の中で根がいっぱいになると、新しい根を伸ばすスペースがなくなり、水分や肥料の吸収能力が低下します。鉢底の穴から根が見えていたり、水の染み込みが悪くなったりしたら、根詰まりのサインです。
植え替えは、株の生育が旺盛になる春(3~4月)か秋(9月)が適期です。一回り大きな鉢に新しい土で植え替えることで、根がのびのびと成長できる環境を整えてあげましょう。
病害虫にも注意!
ヨトウムシやアブラムシなどの害虫や、うどんこ病、茎腐病などの病気も、株を弱らせて花が咲かなくなる原因となります。日頃から葉の裏などをよく観察し、異常を見つけたら早めに対処することが大切です。
木質化して葉がない株の再生法
ゼラニウムを何年も育てていると、株元の茎が茶色くゴツゴツとした、まるで木のように硬くなる「木質化(もくしつか)」という現象が起こります。これは植物が老化している証拠で、自然な現象ではありますが、木質化した部分からは新しい芽や葉が出にくくなり、結果として花数も減ってしまいます。
「もう寿命かな…」と諦めてしまうのはまだ早いです。この木質化した株は、思い切った「強剪定」を行うことで若返らせ、再び元気に花を咲かせることが可能です。
強剪定は、株の体力が消耗しにくい春か秋に行います。全体の草丈を半分から3分の1程度の高さまで大胆に切り戻し、新しい芽の発生を促します。詳しい剪定方法は、次の章で解説します。
ゼラニウムの花が咲かない時の対策
- 適切な切り戻し時期と方法
- 植え替えで根の状態をリセット
- 肥料はリン酸が多いものを選ぶ
- 夏越しと冬越しの管理方法
- ゼラニウムの花をたくさん咲かせるには
- まとめ:ゼラニウムの花が咲かない悩みを解決
適切な切り戻し時期と方法
ゼラニウムの花を長く楽しむためには、剪定(切り戻し)が欠かせません。剪定には、株の形を整えるだけでなく、風通しを良くして病気を予防したり、新しい芽の成長を促して花付きを良くしたりする大切な役割があります。
剪定のベストタイミング
ゼラニウムの剪定に最も適した時期は、生育期にあたる初夏(6月~7月)と秋(9月~10月)です。この時期は剪定してもすぐに新しい芽が伸びてくるため、株への負担が少なく、樹形も整いやすくなります。
避けるべき剪定時期
株が弱りやすい真夏(8月)や、成長が停滞する真冬(12月~2月)の剪定は避けましょう。株に大きなダメージを与えてしまう可能性があります。
目的別の剪定方法
ゼラニウムの剪定には、主に3つの方法があります。
- 摘芯(てきしん):小さな苗の先端の芽を摘み取ることで、脇芽の成長を促し、こんもりとバランスの良い株に育てます。本葉が4~5枚に増えた頃がタイミングです。
- 花がら摘み:咲き終わった花(花がら)を、花茎の付け根からこまめに摘み取ります。見た目を良くするだけでなく、種を作るのに使われるエネルギーを次の花を咲かせるために回すことができます。病気の予防にも繋がる重要な作業です。
- 切り戻し:茎が伸びすぎたり、株の形が乱れたりした場合に行います。株元から3分の1程度の高さまで思い切って切り戻しましょう。節の少し上で切ると、そこから新しい芽が出やすくなります。



植え替えで根の状態をリセット
鉢植えでゼラニウムを育てている場合、1~2年に1回は植え替えを行いましょう。鉢の中で根がぎゅうぎゅうに詰まった「根詰まり」状態になると、生育不良に陥り、花が咲かなくなってしまいます。植え替えは、根が活動を始める前の春(3~4月)か、夏の暑さが和らぐ秋(9月)に行うのが最適です。
植え替えの手順
- 元の鉢から株を優しく引き抜きます。
- 根鉢の周りの古い土を手で3分の1ほど、やさしくほぐし落とします。黒ずんで傷んだ根があれば、清潔なハサミで切り取ります。
- 一回り大きな鉢に、鉢底石と新しい培養土を入れ、株を植え付けます。
- 植え付け後は、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと水を与え、その後は明るい日陰で1週間ほど休ませてから、通常の日当たりの良い場所に戻します。
用土のポイント
ゼラニウムは水はけの良い土を好みます。市販の草花用培養土で問題ありませんが、自分で配合する場合は、赤玉土(小粒)6:腐葉土3:パーライト1くらいの割合がおすすめです。
肥料はリン酸が多いものを選ぶ
前述の通り、ゼラニウムの花を咲かせるには、花付きを促進する「リン酸(P)」を適切に与えることが重要です。葉ばかりが茂ってしまう場合は、窒素(N)過多の可能性があります。
生育期である春から秋にかけては、肥料を切らさないように管理しましょう。肥料には大きく分けて2つのタイプがあります。
- 緩効性化成肥料:効果がゆっくり長く続く固形タイプの肥料。植え付け時に元肥として土に混ぜ込んだり、月に1回程度、株元に置肥として与えます。
- 液体肥料:水で薄めて使う即効性のある肥料。開花期間中、10日に1回程度のペースで水やり代わりに与えると、花付きが良くなります。
特に開花中はエネルギーをたくさん消費するため、液体肥料でこまめに栄養を補給してあげるのが効果的です。ただし、肥料の与えすぎは根を傷める原因になるため、製品に記載された規定量を必ず守るようにしてください。
夏越しと冬越しの管理方法
ゼラニウムは極端な暑さと寒さが苦手です。日本の気候で元気に育て続けるためには、季節に応じた管理が欠かせません。
夏越しのポイント
気温が30℃を超えるような猛暑が続くと、ゼラニウムは生育が鈍り、株が弱ってしまいます。高温多湿の夏を乗り切るためには、以下の点に注意しましょう。
- 置き場所:直射日光、特に西日を避けた、風通しの良い半日陰に移動させます。
- 水やり:水のやりすぎによる根腐れに最も注意が必要な時期です。土の表面がしっかりと乾いてから水を与えましょう。日中の暑い時間帯の水やりは、鉢の中が蒸し風呂状態になるため避けてください。
- 剪定:梅雨に入る前に一度切り戻しを行い、株の風通しを良くしておくと、蒸れによる病気を防ぐことができます。
冬越しのポイント
ゼラニウムは耐寒性がやや弱く、霜に当たると枯れてしまうことがあります。気温が5℃を下回るようになったら、冬越しの準備を始めましょう。
- 置き場所:鉢植えの場合は、霜の当たらない軒下や、室内の日当たりの良い窓辺に取り込みます。暖房の風が直接当たる場所は乾燥しすぎるので避けてください。
- 水やり:冬は生育が緩やかになるため、水やりの回数を減らし、乾燥気味に管理します。土の表面が乾いてから2~3日後に与えるくらいで十分です。
ゼラニウムの花をたくさん咲かせるには
これまで解説してきたポイントをまとめると、ゼラニウムの花をたくさん咲かせる秘訣は、植物の基本的な欲求を満たしてあげることに尽きます。
十分な日光、適切な水やり、バランスの取れた肥料、そして定期的な剪定と植え替え。これらの一つでも欠けてしまうと、ゼラニウムはストレスを感じ、花を咲かせるためのエネルギーを失ってしまいます。



葉の色はどうか、土の乾き具合はどうか、新しい蕾はついているか、病害虫の気配はないか。毎日少し気にかけてあげるだけで、ゼラニウムが発する小さなサインに気づくことができます。そのサインに応じて適切な手入れをしてあげることが、たくさんの美しい花を楽しむ一番の近道と言えるでしょう。
まとめ:ゼラニウムの花が咲かない悩みを解決
この記事では、ゼラニウムの花が咲かない原因と、その対策について詳しく解説しました。最後に、重要なポイントをリストで振り返ってみましょう。
- ゼラニウムの花が咲かない主な原因は、窒素過多の肥料、日照不足、水のやりすぎによる根腐れ
- 葉ばかり茂る場合は、リン酸成分の多い肥料に切り替える
- 花を咲かせるには1日6時間以上の日光が必要
- 水やりは土の表面が乾いてからたっぷりと与え、過湿を避ける
- 1~2年に一度は植え替えを行い、根詰まりを防ぐ
- 古い株が木質化したら、強剪定で若返りを図る
- 剪定の適期は、生育期の初夏(6~7月)と秋(9~10月)
- 真夏と真冬の剪定は株を弱らせるため避ける
- 咲き終わった花はこまめに花がら摘みをする
- 高温多湿の夏は、風通しの良い半日陰で管理する
- 霜が降りる冬は、室内に取り込んで冬越しさせる
- 開花中は液体肥料を定期的に与え、肥料切れを防ぐ
- 植え替えの際は、水はけの良い新しい土を使う
- 病害虫は早期発見・早期対処が重要
- 日々の観察を怠らず、ゼラニウムの状態に合わせた手入れを心がける