家庭菜園で人気のセロリですが、「植えっぱなしで楽に育てられないかな?」と考えたことはありませんか。セロリはまた生えますか?という疑問や、セロリが大きくならないのはなぜですか?といった悩みは、多くの方が抱える共通の課題です。実はセロリは多年草に分類される植物で、適切な育て方、特にわき芽の管理や栽培における冬越しの方法を実践すれば、長く収穫を楽しむことも夢ではありません。しかし、基本的な植え方を間違えたり、収穫時期を逃して花が咲いたら、株が硬くなってしまうことも。この記事では、植えっぱなし栽培を成功させるための知識から、手軽に始められる再生栽培のコツまで、あなたの疑問を解決する情報を詳しく解説していきます。
- セロリを植えっぱなしで育てるための基本条件
- 植えっぱなし栽培で起こりがちな問題とその対策
- わき芽管理や冬越しなど、長く収穫するための育て方のコツ
- 再生栽培で手軽にセロリを楽しむ方法
セロリの植えっぱなしは可能?基本知識
- セロリは本来多年草の植物
- セロリはまた生えますか?という疑問
- 基本となるセロリの植え方
- 手軽にできる再生栽培の方法
- 多年草栽培に必須の冬越しの方法
セロリは本来多年草の植物
「セロリは一年草じゃないの?」と思われている方も多いかもしれませんが、植物学的にはセリ科の多年草に分類されます。つまり、本来は一度植えれば数年にわたって生育し続ける性質を持っているのです。
しかし、日本の家庭菜園や商業栽培では、一年草として扱われるのが一般的です。その理由は、セロリが2年目を迎えると「とう立ち」という現象を起こし、花を咲かせるための生殖成長に移行してしまうためです。とう立ちすると、株の栄養が花や種を作るために使われ、私たちが食用にする茎や葉が硬くなり、食味が著しく低下してしまいます。
このため、品質の良い美味しいセロリを収穫することを目的とする場合、とう立ちする前の1年目で収穫し終える「一年草扱い」が主流となっているのです。とはいえ、適切な管理を行えば、多年草としての性質を活かして植えっぱなしで育てることも不可能ではありません。
- 植物学的には、一度植えると数年生きる多年草。
- ただし、2年目以降は「とう立ち」して味が落ちるため、通常は一年草として栽培される。
- 適切な管理をすれば、植えっぱなしで複数年収穫することも可能。
セロリはまた生えますか?という疑問
「収穫した後、セロリはまた生えてくるの?」という疑問は、家庭菜園を楽しむ方なら一度は持つはずです。結論から言うと、はい、適切な方法であればセロリはまた生えてきます。
セロリを長く楽しむための収穫方法には、主に2つのアプローチがあります。
1. 外葉かきとり収穫
最も一般的な方法が、株ごと収穫するのではなく、
2. 再生栽培
スーパーで購入したセロリの根元部分を使っても、セロリは再生します。これは「再生栽培」や「リボベジ(リボーンベジタブル)」と呼ばれ、手軽に始められるのが魅力です。詳しい方法は後述しますが、株元を水につけておくだけで新しい芽が伸びてきます。

このように、収穫方法を工夫したり、再生栽培を取り入れたりすることで、セロリは何度も私たちの食卓に彩りを加えてくれる頼もしい野菜なのです。
基本となるセロリの植え方
セロリを植えっぱなしで元気に育てるためには、最初の植え付けが非常に重要です。良いスタートを切ることが、後の成長を大きく左右します。ここでは、成功率を高めるための基本的な植え方をご紹介します。
土作り
セロリは肥沃で水はけと水持ちのバランスが良い土を好みます。酸性の土壌を嫌うため、植え付けの2週間前には苦土石灰をまいて耕し、pHを6.0〜6.5程度に調整しておきましょう。1週間前になったら、堆肥を1㎡あたり4kg〜5kg、化成肥料を150gほど施して、しっかりと土に混ぜ込みます。セロリは肥料を多く必要とする野菜なので、元肥をしっかり入れておくことが大切です。
植え付け時期
セロリは冷涼な気候を好むため、植え付けのタイミングが重要です。一般的には、春(3月〜4月)と秋(9月〜10月)が適期とされています。暑すぎたり寒すぎたりする時期を避けることで、苗がスムーズに根付き、元気に成長し始めます。
植え付けの手順
- 畝立て:水はけを良くするため、高さ10cm、幅60cm程度の畝を作ります。
- 株間の確保:セロリは大きく育つため、株間は30cm〜40cmほど十分に確保します。これにより、風通しが良くなり、病気の予防にも繋がります。
- 浅植え:苗を植える際は、ポットの土の高さと畑の土の高さが同じになるくらいの「浅植え」が基本です。深植えすると、成長点である芯の部分に土が入り、生育が悪くなる原因になります。
- 水やり:植え付け後は、根と土を密着させるために、たっぷりと水を与えます。根付くまでは土が乾燥しないように注意しましょう。
セロリは根が傷つくのを嫌う「直根性」の野菜です。ポットから苗を取り出す際や植え付ける際には、根鉢を崩さないように優しく扱いましょう。
これらの基本を守ることで、セロリは健全なスタートを切り、後の「植えっぱなし栽培」の成功へと繋がっていきます。
手軽にできる再生栽培の方法
「家庭菜園は場所がないし、種から育てるのは難しそう…」と感じる方におすすめなのが、キッチンで手軽に始められる「再生栽培」です。スーパーで購入したセロリの株元を使って、もう一度セロリを育てることができます。
手順はとても簡単です。
- 準備:スーパーなどで購入したセロリの根元を、5cmほどの高さで切り取ります。
- 水につける:切り取った根元を、浅いお皿や容器に入れ、切り口が1cmほど浸かるくらいの水を注ぎます。
- 管理:水を毎日取り替えながら、日当たりの良い窓辺などに置いておきます。水が汚れると根腐れの原因になるので、清潔に保つのがポイントです。
- 発芽:数日から1週間ほどで、中心部分から新しい葉がにょきにょきと生えてきます。
- 土への植え替え(任意):葉が10cmほどに伸び、根が出てきたら、プランターや畑の土に植え替えることで、さらに大きく育てることができます。
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再生栽培で育ったセロリは、市販されているものほど太く立派にはなりにくいですが、その風味はしっかりとしています。スープの香りづけや、ちょっとした炒め物の彩りとして使うには十分です。



食費の節約にもなり、エコで楽しい再生栽培。ぜひ一度、試してみてはいかがでしょうか。
多年草栽培に必須の冬越しの方法
セロリを植えっぱなしにして翌年も収穫を楽しむためには、「冬越し」が最大の関門となります。セロリは比較的寒さに強い野菜ですが、霜や氷点下の厳しい寒さに直接当たると株が傷み、枯れてしまうことがあります。適切な防寒対策で、大切なセロリを冬の寒さから守ってあげましょう。
地植えの場合の防寒対策
畑で育てている場合は、霜が直接株に当たらないようにすることが重要です。
- 不織布や寒冷紗:株全体を不織布や寒冷紗でトンネル状に覆うことで、冷たい風や霜から株を守ります。
- マルチング:株元に「敷きわら」や「腐葉土」「落ち葉」などを厚めに敷き詰めます。これにより、土の温度が急激に下がるのを防ぎ、根を凍結から保護する効果があります。
プランター・鉢植えの場合
プランター栽培の最大のメリットは、移動できることです。
- 場所の移動:寒波が来るときや夜間は、軒下や玄関先など、霜の当たらない場所へ移動させましょう。可能であれば、日当たりの良い室内に取り込むのが最も安全です。
- 暖房に注意:室内に取り込む際は、暖房の風が直接当たらないように注意してください。乾燥しすぎて株が弱る原因になります。
冬の間、セロリの成長は非常に緩やかになります。そのため、水のやりすぎは根腐れの原因になります。土の表面が乾いてから数日経って、少し控えめに水を与える程度で十分です。春になり暖かくなってきたら、徐々に水やりの回数を増やしていきましょう。
少しの手間をかけてあげるだけで、セロリは無事に冬を越し、春にはまた新しい芽を吹いてくれます。植えっぱなし栽培を成功させるために、ぜひ冬越しの準備をしてみてください。
セロリの植えっぱなしで起こる問題点
- セロリが大きくならないのはなぜですか?
- 正しい育て方とわき芽の管理
- 収穫時期を逃すとどうなる?
- 花が咲いたら茎や葉は硬くなる
- 結論:セロリの植えっぱなしは放置NG
セロリが大きくならないのはなぜですか?
「植えっぱなしにしているのに、セロリがお店で売っているみたいに大きくならない…」これは、セロリ栽培でよく聞かれる悩みです。その原因は、一つではなく、いくつかの要因が複合的に絡んでいることがほとんどです。
主な原因として、以下の5つが考えられます。
原因 | 詳細と対策 |
---|---|
① 肥料切れ | セロリは「肥料食い」と言われるほど、たくさんの栄養を必要とします。特に生育期間が長くなる植えっぱなし栽培では、途中で肥料が不足しがちです。元肥だけでは足りず、定期的な追肥が不可欠です。肥料が切れると、株は細くなり、味にもえぐみが出やすくなります。 |
② 水切れ | セロリは乾燥に非常に弱い野菜です。土が乾くとすぐに生育が止まってしまいます。特にプランター栽培では土が乾燥しやすいため、水やりは欠かせません。かといって過湿も根腐れの原因になるため、土の表面が乾いたらたっぷり与えるのが基本です。 |
③ わき芽の放置 | 株元から生えてくる「わき芽」をそのままにしておくと、栄養が分散してしまい、主茎が太く育ちません。大きく立派なセロリを育てるには、適切なタイミングでわき芽を取り除く作業が必要です。 |
④ 土壌環境 | 植え付けた土が固かったり、水はけが悪かったりすると、根が十分に張れず、栄養や水分をうまく吸収できません。植え付け前の土作りで、堆肥などをしっかり混ぜ込み、ふかふかの土壌を用意することが大切です。 |
⑤ 連作障害 | 同じ場所でセリ科の植物を連続して栽培すると、「連作障害」が起こり、生育が悪くなることがあります。植えっぱなしで数年育てる場合も、徐々に生育が衰えてくるのはこの影響も考えられます。 |



これらの原因を見直し、適切な管理を行うことで、セロリはもっと大きく、たくましく育ってくれるはずです。
正しい育て方とわき芽の管理
セロリを大きく、美味しく育てるためには、日々の管理が欠かせません。特に「植えっぱなし」で長く楽しむためには、放置するのではなく、ポイントを押さえた手入れが必要です。ここでは、特に重要な「わき芽の管理」を中心に、正しい育て方を解説します。
なぜ「わき芽かき」が必要なのか?
セロリが成長してくると、株元や茎の途中から、主茎とは別の小さな芽(わき芽)がたくさん出てきます。これを放置すると、株全体の栄養がわき芽に分散してしまい、最も太く育てたい主茎の成長が妨げられてしまいます。また、葉が込み合って風通しが悪くなり、病気や害虫が発生する原因にもなります。
そこで、立派なセロリを収穫するために「わき芽かき」という作業が必要になるのです。
- タイミング:植え付けから1ヶ月ほど経ち、草丈が30cm前後になった頃が目安です。株元が混み合ってきたと感じたら始めましょう。
- 方法:清潔なハサミを使うか、手で丁寧にわき芽の付け根から摘み取ります。同時に、黄色く変色した古い下葉も取り除くと、さらに風通しが良くなります。
- ポイント:一度にすべてのわき芽を取り除くと株が弱ることがあるため、数回に分けて、特に混み合っている部分を優先的に整理するのがコツです。
その他の重要な管理
- 追肥:前述の通り、セロリは肥料を好みます。植え付け2週間後から、2〜3週間に1回のペースで化成肥料や液体肥料を与え、肥料切れさせないようにしましょう。特に外葉から収穫を続ける場合は、収穫後に追肥するのが効果的です。
- 水やり:乾燥に弱いため、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。特に夏場は水切れしやすいので注意が必要です。マルチング(敷きわらなどで株元を覆うこと)をすると、乾燥防止と地温上昇の抑制に役立ちます。
わき芽や下葉を取り除いた後の切り口は、病原菌が侵入しやすくなっています。そのため、わき芽かきを行った直後の水やりは避け、切り口が乾くのを待つようにしましょう。
こうした丁寧な管理を続けることが、植えっぱなしでも毎年美味しいセロリを収穫するための鍵となります。
収穫時期を逃すとどうなる?
家庭菜園の醍醐味は、なんといっても採れたての野菜を味わうこと。セロリも例外ではなく、最も美味しいタイミングで収穫することが重要です。もし収穫時期を逃してしまうと、せっかく育てたセロリの品質が大きく落ちてしまいます。
収穫が遅れたセロリに起こる最も代表的な現象が、「すが入る」というものです。
「すが入る」とは?
「すが入る」とは、野菜の茎や根の内部に空洞ができて、スポンジのようにスカスカになってしまう生理現象のことです。大根などでよく見られますが、セロリも収穫が遅れると発生します。
- 原因:株が老化し、成長が止まることで、細胞から水分が失われて空洞ができます。特に、収穫適期を過ぎてからの高温や、霜にあたることが引き金になります。
- 影響:すが入ったセロリは、シャキシャキとした特有の食感が失われ、パサパサとした口当たりになります。風味も落ちてしまい、美味しさが半減してしまいます。
セロリの収穫は、草丈が30cm〜40cmになった頃が目安です。株ごと収穫する場合は、株元が十分に肥大したことを確認しましょう。外葉からかきとって収穫する場合は、外側の葉が十分な大きさになったら、いつでも収穫可能です。



植えっぱなしで長く楽しむ場合でも、大きくなった外葉はこまめに収穫し、株を常に若々しく保つことが、すが入るのを防ぎ、品質を維持するポイントになります。
花が咲いたら茎や葉は硬くなる
セロリを植えっぱなしにして2年目の春を迎えると、株の中心からにょきにょきと茎が伸びてきて、その先に小さな白い花を咲かせることがあります。この現象を「とう立ち(抽苔)」と呼びます。
一見、花が咲いてきれいだと感じるかもしれませんが、食用としてセロリを育てている場合、とう立ちは収穫終了のサインです。
とう立ちすると、なぜ硬くなるのか?
とう立ちとは、植物が子孫を残すために花を咲かせ、種子を作ろうとする「生殖成長」に切り替わることです。植物は、この生殖成長に全エネルギーを集中させます。
- 栄養の移動:これまで葉や茎に蓄えていた栄養分が、すべて花や種を作るために送られてしまいます。
- 繊維の発達:株全体が、花茎を支えるために硬い繊維質を発達させます。
その結果、私たちが普段食べている茎(葉柄)や葉は栄養が抜けてしまい、硬く筋っぽくなって食味が著しく悪化します。とう立ちしたセロリは、もはや美味しい野菜とは言えなくなってしまうのです。
とう立ちは、主に低温に一定期間さらされた後、気温が上昇し日が長くなることで誘発されます。これを防ぐには、以下の点が重要です。
- 植え付け時期を守る:早春に寒すぎる時期に植えたり、秋植えが遅すぎたりすると、苗が低温に感応しやすくなります。
- ストレスを与えない:水切れや肥料切れが続くと、植物は生命の危機を感じて早く子孫を残そうとし、とう立ちしやすくなります。日々の管理を怠らないことが大切です。
多年草として長く収穫を続けたい場合は、とう立ちさせないように管理するか、とう立ちする前に収穫を終える必要があります。もし花が咲いてしまったら、その株からの収穫は諦め、新しい苗を育てる準備を始めましょう。
結論:セロリの植えっぱなしは放置NG
ここまで見てきたように、セロリを「植えっぱなし」で育てることは、決して不可能ではありません。しかし、その言葉のイメージから連想される「一度植えたら何もしなくても育つ」という「放置栽培」とは全く異なるということを理解する必要があります。
結論として、セロリの植えっぱなし栽培を成功させる鍵は、「放置」ではなく「適切な継続管理」にあると言えます。
多年草としての性質を活かし、一つの株から長く収穫を楽しむためには、以下のような年間を通した手入れが不可欠です。
- 春〜秋(生育期):
- 定期的な追肥で肥料切れを防ぐ
- 土を乾燥させないための水やり
- 株を大きく育てるための「わき芽かき」
- 病害虫のチェックと対策
- 大きくなった外葉からこまめに収穫する
- 冬(休眠期):
- 霜や凍結から株を守るための「冬越し」対策
- 根腐れを防ぐための控えめな水やり
- 2年目以降:
- 味が落ちる原因となる「とう立ち」を防ぐための温度管理



もし、こうした継続的な管理が難しいと感じる場合は、無理に植えっぱなしにこだわらず、毎年新しい苗を植える「一年草」としての育て方を選ぶのが確実です。ご自身のライフスタイルや菜園にかけられる時間と相談しながら、最適な栽培方法を見つけてみてください。
セロリを植えっぱなしで育てるための総まとめ
- セロリは本来、数年にわたって生きる多年草の植物である
- しかし、2年目以降は「とう立ち」して味が落ちるため、通常は一年草として扱われる
- 植えっぱなしで育てることは可能だが、「放置」ではなく「適切な継続管理」が必須
- 大きくならない原因は、肥料切れ、水切れ、わき芽の放置などが考えられる
- セロリは肥料を多く必要とするため、定期的な追肥が欠かせない
- 乾燥に弱いため、土の表面が乾いたらたっぷりと水やりをすることが重要
- 主茎を太く育てるためには、株元の「わき芽かき」が不可欠な作業である
- 収穫時期を逃すと、茎に空洞ができる「すが入る」現象が起き、食感が悪くなる
- 収穫適期は草丈が30cm〜40cmになった頃で、若採りを心がけるのが良い
- 2年目以降に花が咲く「とう立ち」をすると、茎や葉が硬くなり食用に適さなくなる
- とう立ちを防ぐには、適切な時期に植え付け、水や肥料のストレスを与えないことが大切
- 多年草として育てるには、不織布やマルチングによる冬越し対策が重要になる
- 外側の葉から必要な分だけ収穫する方法なら、株を長持ちさせながら長く楽しめる
- スーパーで買ったセロリの根元を使った「再生栽培」なら、手軽に栽培を始められる
- 植えっぱなし栽培が難しい場合は、毎年新しい苗を植える一年草としての栽培が確実である