種をまいたのに、なかなか芽が出ない。せっかく芽が出たのに、すぐにひょろりと倒れて枯れてしまった…。そんな苦い経験はありませんか? 園芸のスタートである「種まき」がうまくいかない原因は、「用土」にあるかもしれません。この記事では、なぜ市販の培養土が種まきに向かないのか、発芽率を劇的に上げる「無菌」で「肥料なし」の土がなぜ必要なのかを徹底解説します。基本の配合である「黄金比率」から、特定の植物に合わせた上級者向けの配合、さらには古い土を安全に再利用するための熱湯や電子レンジを使った殺菌方法まで、完璧な「種まき用土の作り方」を専門家の視点で詳しくお伝えします。
- 種まき用土に肥料が不要な理由
- 病気を防ぐ「無菌」の土が必須なワケ
- 基本用土の役割と「黄金比率」の配合例
- 古い土の再利用に必須な熱湯・電子レンジ殺菌法
完璧な種まき用土の作り方と黄金比率
- なぜ市販の培養土ではダメなのか?
- 種まき用土に「肥料」が不要な理由
- 種まき用土に「無菌」が必須な理由
- 基本の配合「黄金比率」と資材の役割
- [上級編] 酸性を好む植物の用土配合
なぜ市販の培養土ではダメなのか?

園芸店の店頭には、多種多様な「培養土」が並んでいます。「野菜用」「花用」「観葉植物用」など、用途別に配合された便利な土です。ここで多くの方が疑問に思うのが、「余っている花用の培養土を、種まきに使っても良いのか?」という点です。
結論から申し上げますと、市販の「種まき・さし木用」と明記された土であれば、問題なく使用できます。これらは種まきに最適化されており、非常に優秀です。
しかし、問題となるのは「普通の培養土」や「花用の培養土」を種まきに流用する場合です。これらの一般的な培養土は、多くの場合、種まきには適していません。理由は大きく二つあります。
一つ目は、「肥料(元肥)」が含まれていることです。これらの培養土は、植物が「植え付けられた直後から」元気に育つように、あらかじめ肥料が配合されています。しかし、この肥料成分が、発芽したばかりのデリケートな幼根にとっては強すぎるのです。結果として、根が傷んだり、最悪の場合は発芽しなかったりします。
二つ目は、「粒度」と「清潔さ」の問題です。一般的な培養土には、水はけを良くするために比較的大きな粒の軽石や、分解途中の有機物(バーク堆肥など)が含まれていることがあります。小さな種をまく場合、これらの粗い粒子が邪魔になって種が均一に覆われなかったり、発芽の妨げになったりします。また、必ずしも「無菌」状態ではないため、後述する病気の原因菌が潜んでいる可能性もゼロではありません。
自作する最大のメリット
種まき用土を自作する最大のメリットは、発芽にとって最も重要な「肥料(なし)」と「清潔さ(無菌)」という二大要素を、自分で100%コントロールできる点にあります。これにより、市販の培養土を流用する際のリスクを完全に排除し、植物のスタートラインを最も安全な状態に整えることができるのです。
わざわざ土を作るのは面倒に思えるかもしれませんが、この一手間が、その後の生育を大きく左右する重要なポイントとなります。
種まき用土に「肥料」が不要な理由

「植物を育てるには肥料が必要」というのは園芸の常識です。それなのに、なぜ「種まき用土」には肥料が不要、むしろ有害なのでしょうか。その答えは、種子そのものの仕組みと、発芽直後の根の状態に隠されています。
まず、種子は、それ自体が発芽して最初の葉(子葉)を開き、小さな根を伸ばすために必要な栄養分を内部に蓄えています。これを「胚乳(はいにゅう)」や「子葉(しよう)」と呼びます。インゲンマメの実験で、水だけでも発芽して葉を広げることができるように、植物は自前の栄養(お弁当のようなもの)で初期段階を乗り切ることができるのです。
ELでは、なぜ肥料があると有害なのでしょうか。それは「肥料焼け(ひりょうやけ)」と呼ばれる現象を引き起こすからです。
肥料、特に化学肥料は「塩類(えんるい)」の一種です。土の中にこの塩類が高濃度で存在すると、浸透圧(しんとうあつ)の原理が働きます。浸透圧とは、濃度の低い方から高い方へ水分が移動する力のことです。つまり、土の肥料濃度(塩分濃度)が、発芽したてのデリケートな幼根の内部よりも濃くなってしまうのです。
その結果、本来なら根が土から水分を吸い上げるはずが、逆に根から土へと水分が奪われてしまいます。これが肥料焼けの正体であり、一種の脱水症状です。大人の植物なら耐えられる濃度でも、生まれたての赤ちゃんの肌のような幼根はひとたまりもなく、しおれて枯れてしまいます。
肥料焼けのサイン
肥料焼けが起こると、「種が発芽しない」「種から出た根が枯れる」「葉が黄色や茶色に変色する」といった症状が現れます。もし種まき後にこのような状態になったら、肥料濃度が高すぎる土を使った可能性を疑ってみましょう。
肥料は、本葉が2~3枚展開し、根がしっかり張ってきたことを確認してから、薄い液体肥料を与える(追肥)か、肥料入りの土に植え替える(鉢上げ)のが正しいタイミングです。
種まき用土に「無菌」が必須な理由


種まき用土に求められる第二の絶対条件、それは「無菌(むきん)」であることです。無菌とは、病原菌や雑草の種などが含まれていない、清潔な状態を指します。
なぜ無菌でなければならないのでしょうか。それは、種まき後の苗を襲う最も恐ろしい病気、「立枯病(たちかれびょう)」を防ぐためです。
立枯病は、多くの園芸家が経験する悪夢のような病気です。昨日まで元気に双葉を開いていた苗が、今日見ると地際(土と接する部分)がキュッと細くくびれ、そこからバッタリと倒れて枯れてしまいます。一度発症すると、そのセルトレイやポットの苗は全滅することも珍しくありません。
この病気の原因は、土の中に潜むカビ(糸状菌)です。代表的なものに「フザリウム菌」や「リゾクトニア菌」などがあります。これらの菌は、特に珍しいものではなく、庭の土や、一度使った古い土の中にはごく普通に存在しています。



大人の植物であれば、これらの菌に対してある程度の抵抗力を持っています。しかし、発芽したばかりの幼苗は、人間でいえば生まれたての赤ちゃんと同じです。抵抗力がまったくないため、病原菌が繁殖しやすい高温多湿の環境下では、ひとたまりもなく侵されてしまいます。
立枯病の唯一の予防策
立枯病には、発症してからの有効な治療薬はほとんどありません。唯一にして最大の予防策は、「そもそも病原菌がいない清潔な土で種をまくこと」です。これが、種まき用土に「無菌」が絶対条件である理由です。
では、どうやって無菌の土を用意するのでしょうか。心配はご無用です。私たちが種まき用土の「基本用土」として使う「赤玉土」や「バーミキュライト」、「パーライト」といった資材は、その製造過程で高温処理が施されているため、ほぼ無菌、あるいは完全に無菌の状態です。これらを適切に配合することが、安全なスタートの第一歩となります。
基本の配合「黄金比率」と資材の役割


「無肥料」で「無菌」の重要性がわかったところで、いよいよ具体的な「種まき用土の作り方」です。目指すのは、(1)無菌・無肥料であり、かつ(2)適度な保水性(乾きすぎない)と(3)優れた排水性・通気性(蒸れない・根腐れしない)を兼ね備えた土です。
さまざまな配合が考えられますが、長年の経験から最も信頼性が高く、失敗が少ない基本的な配合、いわば「黄金比率」をご紹介します。
種まき用土の黄金比率(基本)
赤玉土(小粒) 6 : バーミキュライト 4
排水性を高めたい場合(蒸れに弱い植物向け)
赤玉土(小粒) 5 : パーライト 3 : バーミキュライト 2
なぜこの配合なのでしょうか。それぞれの資材が持つ役割を理解することが重要です。ここでは、種まき用土に使われる主要な3つの資材について、その特性を比較してみましょう。



| 資材 | 主な役割 | 滅菌性 | 保水性 | 排水性 | 肥料分 |
|---|---|---|---|---|---|
| 赤玉土(あかだまつち) | 基本用土(ベース) 土の骨格となり、保水性と排水性のバランスを取る。 |
ほぼ無菌 (高温乾燥処理) |
◎ 高い | ◯ 良い | 無 |
| バーミキュライト | 保水・保温・保肥 非常に軽く、水をたっぷり保持する。断熱性もある。 |
完全無菌 (高温焼成処理) |
◎ 高い | △ やや劣る | 無 |
| パーライト | 排水・通気・軽量化 非常に軽く、土に隙間を作る。根腐れ防止。 |
完全無菌 (高温焼成処理) |
✕ 低い | ◎ 高い | 無 |
「赤玉土 6:バーミキュライト 4」の配合は、赤玉土が持つバランスの良い保水・排水性に、バーミキュライトの「無菌性」と「高い保水性」を加え、発芽に必要な水分を安定的にキープすることを狙ったものです。これが最も標準的で失敗のない配合と言えます。
種まきに「腐葉土」は使わない
腐葉土(ふようど)は、落ち葉を発酵させて作った土壌改良材で、土をふかふかにし、有用な微生物を増やす素晴らしい資材です。しかし、種まきにおいてはその「微生物の多さ」がデメリットになります。
腐葉土は「無菌」ではないため、立枯病の原因菌が混入している可能性を排除できません。種まき用土は、あえて有機物や微生物を含まない「無機質(むきしつ)」な土だけで構成するのがセオリーです。
[上級編] 酸性を好む植物の用土配合


世の中の植物すべてが、中性~弱酸性の土壌を好むわけではありません。中には、日本の一般的な土壌よりもずっと酸性の強い環境(pH3.0~5.0程度)でなければ元気に育たない植物たちがいます。
その代表格が、ブルーベリー、ツツジ、サツキ、シャクナゲ、エリカ、カルーナといった植物です。もしこれらの植物の種まき(あるいは挿し木)に挑戦する場合は、これまで説明してきた「赤玉土ベース」の配合ではうまくいきません。酸性専用の配合に切り替える必要があります。
酸性用土を作るためのキーアイテムは、「鹿沼土(かぬまつち)」と「酸度未調整ピートモス」の二つです。
- 鹿沼土(かぬまつち)
- 栃木県鹿沼地方で産出される火山灰土で、それ自体がpH4.0~5.0の酸性という特徴を持っています。赤玉土と同様に無菌で保水性・排水性に優れ、酸性土壌の基本用土として使われます。
- 酸度未調整ピートモス
- 酸度未調整ピートモスは、石灰で中和されていない状態で、pH 3.0~4.5程度の強酸性(製品によっては最大5.5程度)の特徴を持っています。酸性用土を作る際は、この『未調整』タイプを選ぶ必要があります。
これらの資材を使った、代表的な酸性用土の配合例をご紹介します。
酸性植物向け用土の配合例
ツツジ・サツキの基本配合
鹿沼土(小粒) 6 : (酸度未調整)ピートモス 4
ブルーベリーの専門家向け配合
(酸度未調整)ピートモス 7 : 鹿沼土(小粒) 3
サツキ愛好家向け配合(バランス型)
赤玉土(小粒) 5 : 鹿沼土(小粒) 3 : (酸度未調整)ピートモス 2
特にブルーベリーは強酸性を好むため、ピートモスが主役となります。このように、育てる植物の「ふるさと」の環境(生態)に合わせて土のpHをコントロールすることも、園芸の専門的なテクニックの一つです。
プロの豆知識:ピートモスの使い方
乾燥した状態のピートモスは、非常に水を弾きやすく、一度乾くと吸水しにくいという厄介な性質を持っています。袋から出してそのまま他の土と混ぜても、ピートモスだけがパサパサのまま均一に混ざりません。
使う前日までに、バケツやトロ箱にピートモスを入れ、ひたひたになるまで水を注ぎ、手で揉み込むようにしてしっかりと吸水させておくこと。これがピートモスを使いこなす最大のコツです。
自作用土で失敗しない種まきと管理のコツ
- 初めてでも簡単!用土の作り方3ステップ
- 自作・再利用に必須!土壌の殺菌方法
- 作った種まき用土の正しい保存方法
- [注意] 種苗法と自家増殖のルール
初めてでも簡単!用土の作り方3ステップ


理論を学んだら、次はいよいよ実践です。難しく考える必要はありません。正しい手順さえ守れば、誰でも簡単に最高品質の種まき用土を作ることができます。ここでは、最も基本的な「赤玉土6:バーミキュライト4」の配合を例に、3つのステップで解説します。
ステップ1:準備
まず、材料と道具を揃えます。
- 材料:赤玉土(小粒)、バーミキュライト
- 道具:ブルーシート(またはトロ箱、大きなポリ袋)、計量カップ(コップやスコップ、空のペットボトルなどで代用可)
このとき、計量カップは「同じもの」を使うことが重要です。
ステップ2:配合・混合
ここが最も重要な工程です。まず、ブルーシートの上に赤玉土を「6杯」あけます。次に、同じカップでバーミキュライトを「4杯」あけます。
園芸用土の配合における最大のルールは、「重量(重さ)」ではなく「体積比(かさ)」で測ることです。資材によって重さがまったく異なるため、重さで測ると比率が大きく狂ってしまいます。必ず「コップ6杯:コップ4杯」のように、体積で合わせましょう。
材料をすべて入れたら、両手でシートの端を持ち上げるようにして、土をひっくり返しながら均一になるまでよく混ぜ合わせます。バーミキュライトやパーライトのような軽い資材は、乾燥していると風で飛んだり、粉塵が舞ったりすることがあります。軽く霧吹きで湿らせながら混ぜると、作業がしやすくなります。
ステップ3:充填(じゅうてん)
完成した用土を、セルトレイやポリポットに入れていきます。この作業を「充填」と呼びます。
ポットの9分目を目安に、用土をふんわりと入れます。このとき、手でギュウギュウと押さえつけないでください。土が固く締まりすぎると、通気性が悪くなり、発芽した根が伸びにくくなります。ポットの底をトントンと軽く地面に打ち付けて、土を落ち着かせる程度で十分です。
種まきを成功させるプロのコツ
用土をポットに充填したら、種をまく前に、まず用土全体に水やりをします。ジョウロで優しく、底から水が流れ出るまでたっぷりと与え、土全体に水分をなじませます。
この「先吸水」を行うことで、種まき後に水やりをしても、軽いバーミキュライトや種が水と一緒に浮き上がったり、流れてしまったりするのを防ぐことができます。非常に重要なテクニックです。
自作・再利用に必須!土壌の殺菌方法


自作の種まき用土で立枯病を防ぐには、「無菌の新品資材を使う」のが大原則です。しかし、中には「庭の土をベースに使いたい」「去年使ったプランターの土を再利用したい」と考える方もいらっしゃるでしょう。
こうした土は、そのままでは立枯病の病原菌、害虫の卵、雑草の種などが潜んでいる可能性が非常に高く、種まきに使うのは危険です。そこで必須となるのが「土壌殺菌」の作業です。
薬剤を使う方法もありますが、家庭で手軽にできる「熱」を使った殺菌方法を3つご紹介します。
1. 熱湯消毒(最も手軽)
一番簡単で、少量から対応できる方法です。
- 手順:耐熱性の高いポリ袋(黒いゴミ袋など)やプランターに土を入れます。そこに、沸騰した熱湯を土全体が浸るまでたっぷりとかけます。
- ポイント:すぐに袋の口を縛るか、プランターに蓋をして、熱い蒸気が土全体に行き渡るように「蒸らし」ます。目標は土の温度を60度以上に上げることです。完全に冷めるまで待ち、土が乾いてから使用します。
2. 電子レンジ殺菌(少量・迅速)
すぐに使いたい少量の土を殺菌するのに便利です。
- 手順:土を耐熱性のポリ袋(ジップロックなど)や耐熱容器に入れます。このとき、土を適度に湿らせておくことが重要です。水分がマイクロ波で加熱され、蒸気で殺菌されます。
- 時間:土の量によりますが、1kgあたり2~3分程度が目安です。
- 注意:加熱中、袋は膨張するので口は完全に密封しないでください。また、加熱直後は土が非常に高温になります。火傷に十分注意し、完全に冷ましてから使用してください。
3. 日光消毒(大量・夏場向け)
コストがかからず、大量の土を一度に処理できる方法です。
- 手順:透明または黒色のポリ袋に「湿らせた」土を入れ、口をしっかり縛って密封します。
- 時間:これを真夏の直射日光が最も強く当たる場所に数日間(できれば1週間以上)放置します。袋の中が高温(理想は60度以上で72時間)になることで、病原菌や雑草の種を死滅させます。
殺菌後の土の扱いについて
熱処理で殺菌した土は、病原菌だけでなく有益な菌もすべて死滅した「まっさら」な状態です。種まき用土として使う場合は、無菌のまま使用して問題ありません。
もし、これを「再利用の培養土」として野菜などを育てるために使う場合は、殺菌後に「腐葉土」や「堆肥」「土壌リサイクル材」などを混ぜ込み、肥料分と有益な微生物を補給してあげる必要があります。
作った種まき用土の正しい保存方法
種まき用土は、必要な分だけ作るのが理想ですが、実際には多めに作って余ってしまうことも多いでしょう。この自作した用土、どのように保存すればよいのでしょうか。
培養土や肥料の品質を劣化させる最大の敵は、「雨(水分)」と「直射日光」です。
せっかく「無菌」で「適切な水分量」に調整した用土も、雨ざらしにしてしまっては、袋の中に水が溜まり、せっかくの無菌状態が台無しになります。雑菌やカビが繁殖し、次に使うときには立枯病の原因になってしまいます。[24]
また、直射日光が当たる場所に放置するのもよくありません。高温になりすぎたり、袋が紫外線で劣化して破れたりする原因になります。
正しい保存方法は、「雨や日光の当たらない所」で保管することです。
自作用土の具体的な保存方法
- 使ったポリ袋の口を輪ゴムや紐で固く縛り、水分や虫が入らないようにします。
- 蓋がしっかりと閉まるプラスチック製のコンテナや収納ボックスに入れるのが最も理想的です。
- 物置、ガレージ、または雨が吹き込まない軒下などの「涼しい暗所」に置きます。
市販の培養土や肥料には、基本的に「有効期限」は記載されていません。これは、無機質の土や肥料成分がすぐに腐敗・変質するものではないためです。
しかし、それはあくまで「適切に保管された場合」の話です。一度開封したり、自作したりした土は、やはり品質が落ちる前に使い切るのがベストです。できるだけワンシーズン(その年のうち)に使い切ることをお勧めします。



[注意] 種苗法と自家増殖のルール


さて、これで完璧な種まき用土が完成しました。あなたは、この土でどんな植物を育てますか? 種をまきますか? それとも、お気に入りのアジサイを挿し木しますか?
ここで、現代の園芸家として必ず知っておかなければならない、非常に重要な法律の話をします。それが「種苗法(しゅびょうほう)」です。
種苗法は、植物の新品種を開発した「育種家(ブリーダー)」の権利を守るための法律です。この法律が令和4年(2022年)4月1日に改正・施行され、私たち趣味の園芸家にも大きく関わるルール変更がありました。
最も重要なポイントは、「登録品種」の「自家増殖」が、原則として禁止されたことです。
- 登録品種とは?
- 国(農林水産省)に品種登録され、権利が保護されている植物のことです。購入した苗のラベルに「登録品種」や「PVPマーク」、「品種登録第〇〇号」といった記載があるものが該当します。
- 自家増殖とは?
- 育てている植物から、種や苗を「増やす」行為全般を指します。例えば…
- 買ったイチゴから伸びた「ランナー(子株)」を育てて苗を増やすこと。
- 買ったジャガイモ(登録品種)を「種イモ」として植え付けること。
- 買ったアジサイやペチュニアの枝を切って「挿し木(さしき)」をすること。
- 収穫したトマト(登録品種)から「種を採って」翌年まくこと。
これらすべてが「自家増殖」に当たります。
法律改正のポイント
改正前は、農家ではない「趣味の園芸」の範囲であれば、登録品種を増殖させることは例外的に認められていました。
しかし、改正後は、趣味の園芸であっても、登録品種を権利者の許可なく増殖させることは法律違反となります。これは、たとえ増やした苗を販売せず、自宅で楽しむだけだとしても同様です。
私たちが「種まき用土」や「挿し木用土」を自作する行為は、まさにこの「増殖」の第一歩です。
もし、あなたが育てたい植物が「登録品種」である場合は、この用土を使って増殖させることはできません。毎年、正規の種苗店から新しい種や苗を購入する必要があります。



総括: 完璧な種まき用土の作り方は「無菌」と「無肥料」が鍵
この記事のまとめです。
- 種まき用土の自作は、発芽率を上げる最良の方法である
- 一般的な培養土は肥料が強すぎ、種まきには不向きだ
- 種は発芽に必要な養分を内蔵している
- 肥料は根を「肥料焼け」させ、枯らす原因となる]
- 「立枯病」を防ぐため、用土は「無菌」が絶対条件だ
- 基本用土の配合は「体積比」で行う
- 赤玉土は基本となる無菌の土である
- バーミキュライトは保水性と無菌性に優れる
- パーライトは排水性と通気性を高める
- 黄金比率は「赤玉土6:バーミキュライト4」が基本だ
- 酸性を好む植物には鹿沼土とピートモスを使う
- 古土の再利用には殺菌が必須である
- 熱湯消毒は手軽で効果的な殺菌方法だ
- 自作した土は雨や日光を避けて保管する
- 登録品種の自家増殖は種苗法で制限される









